レコメンドエンジンとは、一定のルールや行動データに基づき、ユーザーに適したおすすめの商品やコンテンツを表示し、顧客の購買行動を促進するシステム・ツールです。レコメンドエンジンを導入し、活用することで顧客体験(CX)や売上向上が期待できます。
この記事では、レコメンドエンジンの一般的な仕様・機能やメリットをご紹介。レコメンドエンジンを導入・実装する際の注意点や選び方のポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
まずレコメンドとは?について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
レコメンドとは?マーケティングで活用できるレコメンドシステムを徹底解説
レコメンドエンジンとは?
先述したとおり、レコメンドエンジンとは、WebサイトやECサイトにおいて一定のルールやユーザーの行動に合わせて、それぞれのユーザーに適した商品・コンテンツなどの情報を表示するシステム・ツールです。そもそもレコメンド(recommend)には、「おすすめする」「推薦する」という意味があります。
たとえば、ECサイトでユーザーがスニーカーカテゴリー商品を複数閲覧しているなかで、カテゴリー内の新着商品やよく買われている商品などを表示させるといった、購入の働きかけができます。Amazonをはじめとする大型ECサイトの利用が一般的になったため、レコメンド辞退は非常に馴染みのあるものとなりました。
レコメンドエンジンは、運営側にメリットがあるだけでなく、ユーザー側からしても自分が気にいる可能性が高い商品やコンテンツが見つかりやすくなる、思いがけない商品との出会いといった利便性の向上も期待できます。下記は、ECサイトにおける『レコメンド×パーソナライズ』の実装イメージの一例です。
上記の画像のとおり
・あなたにおすすめの商品
・閲覧履歴
・この商品を見た人はこんな商品を見ています
・閲覧履歴からのおすすめ商品
・この商品を買ったひとはこんな商品も買っています
など、ECサイトなどでよく目にするおすすめ表示の多くは、レコメンドエンジンの機能によって表示されています。
また、はじめてサイトに訪問したときと、会員になってから訪問したときで、TOPページに表示されるアイテムやお知らせが違うといった経験はありませんか?これも会員情報の有無やログインの有無などのデータとルールを掛けわせて表示する情報をユーザーによって出し分けているのです。
レコメンドエンジンの仕組みとは?
レコメンドエンジンにおける重要な仕組みがロジックです。ロジックとは条件設定のようなものであり、ロジックが変わると表示されるものも変わります。ロジックは大きく分けて4種類あります。以下でそれぞれの内容を紹介しましょう。
ルールベース
ルールベースレコメンドとは、流入元や累積スコアごとのセグメントによってルールを決めてコンテンツ出し分けるレコメンド施策です。たとえば、母の日ギフトの広告から流入した人には、母の日ギフトのコンテンツや特集を選んで、レコメンドするケースなどです。。
ルールベースレコメンドは、売り手側がこのセグメントにはこの商品が売れる・売りたいという場合などに有効です。ただし、レコメンドの内容と顧客の嗜好にズレがあると、効果が出にくいというデメリットがあります。そのため、決め打ちではなくセグメントごとのABテストなどをおこないながら効果的なコンテンツ表示をするのが一般的です。
協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、サイト上での行動が似ているユーザーの特性をデータ分析して、興味を持ちそうな商品をおすすめ紹介するロジックです。
具体的には、ユーザーAが購入した商品をユーザーBも購入しようとする場合、ユーザーAが購入した他の商品を紹介します。ユーザーにとっては思いがけない好みの商品が紹介されることも少なくありません。
協調フィルタリングには、次に紹介するアイテムベースとユーザーベースがあります。
アイテムベース
アイテムベースとは、ある商品に対して一緒に買われていることの多い商品を紹介することです。たとえば、英語の参考書を購入した人が、同じ出版社の問題集も購入していることが多い傾向があるとします。そこで、参考書を購入したユーザーに対して問題集を紹介し、購入につなげるのが狙いです。
他にも、高精度なレコメンドエンジンであれば、自然言語処理を使用して類似アイテムをマッチングさせてレコメンドするといったこともできます。
ユーザーベース
ユーザーベースとは、購入パターンが似ている複数のユーザーの購入履歴を分析し、まだ買っていない商品をおすすめすることです。たとえば、購入履歴がよく似ているユーザーAとユーザーBがいる場合、ユーザーAは購入しているがユーザーBは購入していないものを紹介します。それぞれの趣味や嗜好が似ていれば、購入につながる可能性があります。
コンテンツベース・フィルタリング
コンテンツベース・フィルタリングとは、商品の属性に注目して、類似する属性の商品を紹介することです。
たとえば、あるブランドのカバンを購入するユーザーに対して、同じブランドが出す別の商品を紹介します。注目する属性は商品の色やデザイン、種類などさまざまです。コンテンツの属性とユーザーの好みなどが一致すると、高い購入率が期待できます。
ただし、属性ごとにコンテンツを分類するのは時間がかかります。また、ユーザー側からすると商品に目新しさを感じにくいというケースもあるでしょう。
ハイブリッド・タイプ
先に紹介したロジックを組み合わせた方法のことをハイブリッド・タイプと呼びます。特定の組み合わせを指すものではありません。それぞれのロジックのデメリットを解消することを目的に使用されます。
たとえば、お皿を購入する人は、マグカップも購入する傾向があるとしましょう。あるユーザーが過去に青色の商品をよく購入しているのであれば、お皿の購入時に青いマグカップをレコメンドします。このように、2つのロジックを組み合わせることで、顧客の購買意欲を高めることが可能です。
レコメンドエンジンの機能
多くのレコメンドエンジンには、豊富な機能が備えられています。ここでは、一般的なレコメンドエンジンに、どのような機能があるのか見ていきましょう。
関連する商品を薦める「レコメンド機能」
「レコメンド機能」は、レコメンドエンジンの基本ともいえる機能です。たとえば、閲覧履歴データをもとに、その人がサイト内で過去に検索した商品を表示します。
また、会員情報をもとに属性が似ているユーザーの閲覧履歴データを掛けわせて、おすすめ商品を表示させることも可能です。属性が似ているユーザーのデータを使うことで、その人にとって魅力的な商品をすすめられる可能性が高まります。この機能を活用すれば、商品の購入をより促しやすくなります。
顧客の行動履歴データを蓄積・分析する「データベース機能」
レコメンドエンジンを活用するためには、「データベース機能」が重要です。たとえば、レコメンド機能を使うためには、顧客データの蓄積や分析が必要不可欠といえます。
顧客データとしては、デモグラフィックデータをはじめサイト内で顧客がどのように行動したかを示す「行動履歴データ」や、どの商品をチェックしたのかを表す「閲覧履歴データ」などがあります。これらのデータを総合的に分析することで、顧客の嗜好や興味を把握し、さまざまなマーケティングに活用することも可能です。
ランキング・最近チェックした商品などを表示する「ランキング機能」「リマインド機能」
レコメンドエンジンには、「ランキング機能」や「リマインド機能」もあります。ランキング機能は、閲覧数が多い商品やたくさん売れている商品を表示する機能です。人気のある商品を示すことで、顧客の購入意欲を刺激します。
それに対してリマインド機能は、顧客が閲覧したことのある商品や、ショッピングカートに入れたまま購入されていない商品を紹介する機能(カゴ落ち対策機能)です。これにより、買い忘れた商品を思い出してもらうことができます。
顧客の嗜好を分析しメールや通知を配信する「メッセージング機能」
顧客の興味に合う商品の情報を提供する「メッセージング機能」もレコメンドエンジンの重要な機能と言えるでしょう。配信できる内容は、その人の行動履歴にもとづくおすすめ商品や、売れている商品のランキングなどさまざまです。
当然、すべての顧客に一律で同じ内容を配信するメールマガジンやプッシュ通知とは異なります。レコメンドエンジンのメッセージング配信機能を使うことで、個人のニーズに合ったOne to One なコミュニケーションが可能です。
レコメンドした結果を集計する「レポート機能」
商品をおすすめした結果どうなったかを集計する「レポート機能」がついているものもあります。レポート機能を活用すれば、レコメンドエンジンの機能により購入に至ったケースと、それ以外のケースを比較することが可能です。購入単価やコンバージョン率など、さまざまな視点から分析できます。ただし、種類によっては、レポート機能がないこともあります。
ABテストでレコメンドする商品を分けられる「ABテスト機能」
「ABテスト機能」がついているものもあります。ABテスト機能とは、おすすめする商品のパターンを分けて配信することで、より高い効果の出るほうを表示する機能です。表示内容を変えるだけで、どちらが効果的なのか判断することができます。関心の高いユーザーデータを効率的に集めるのに有効です。
レコメンドエンジンはどのような場面で活用される?
実際にどのような場面でレコメンドエンジンは活用されているのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
ECサイト
レコメンドエンジンは、近年多くのECサイトに導入されています。Amazonなどの大型ECサイトが代表例です。会員情報、閲覧データ、購買データ、商品データなど様々なデータを掛けわせることで、それぞれの顧客に適したおすすめ商品を自動で表示することが可能です。
これにより、顧客は自分の好みに合う商品をスムーズに見つけ、購入できます。ユーザーの顧客体験が向上し、ECサイト側の収益アップも狙えるでしょう。ECサイトを効率的に運営するのに役立ちます。
その他のサイト
レコメンドエンジンを導入しているサイトは、ECサイト以外にも多くあります。具体的には、以下のようなサイトが挙げられます。
ニュースサイト
ニュースサイトに導入すれば、ユーザーが閲覧した記事のデータを基に関連記事やおすすめ記事を表示できます。嗜好に近い記事をレコメンドすることで、記事の閲覧数を伸ばしたり、滞在時間を増やしたりすることが可能です。
情報ポータルサイト
求人情報や不動産情報などの情報ポータルサイトに導入すれば、ユーザーが見ている案件に似た案件を表示できます。レコメンドエンジン側で会員情報や閲覧データなどを基に求める条件に合致した案件をおすすめできるため、マッチングの精度が高まります。それにより、成約アップの可能性も期待できます。
動画閲覧サイト
動画閲覧サイトでもよく導入されています。たとえば、閲覧中の動画の下部に出てくる「おすすめの動画」は、会員情報・閲覧データ・動画情報を掛けわせてレコメンドエンジンがユーザーごとにパーソナライズして表示しています。ユーザーは次に見たいと思う動画を簡単に見つけることが可能となります。
レコメンドエンジンの活用事例
ブレインパッドが提供するレコメンドエンジン(基盤)Rtoasterは、さまざまな業界のサイトに導入されています。
「味わいベースレコメンド」で、おすすめワイン枠からの購入率2倍!ソムリエの接客を目指すエノテカ・オンラインのRtoaster活用事例
エノテカ株式会社が運営する日本最大級のワイン通販サイト「エノテカ・オンライン」は、ブレインパッドのレコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster」を導入しました。2,000種類を超えるワインの味わい要素を機械学習で関連付けした「味わいベースレコメンド」を構築し、お客様一人ひとりに適したワインを提案することで、おすすめワイン枠からの購入率が2倍へと向上しています。
詳細:エノテカ株式会社様 レコメンドエンジンRtoaster活用事例
実店舗と変わらない「体験価値」を、Webサイトでも。顧客ロイヤリティ維持・向上SABON ECサイトでのRtoaster活用事例
イスラエル発祥のバス&ボディケアコスメブランドであるSABON様は、自社のフィロソフィーでもある店舗での「体験価値」をWebサイトでも提供するため、ブレインパッドの「Rtoaster」を導入しました。
詳細:株式会社SABON Japan様 レコメンドエンジンRtoaster活用事例
レコメンド以外にも幅広い活用。PEACH JOHN公式ECサイトでのRtoaster活用事例
“Life is Beautiful”をコンセプトに、女性の魅力を最大限に引き出す商品を数多く展開する株式会社ピーチ・ジョンは、カタログ通販からWeb販売へのシフトを強化する際にブレインパッドのレコメンドエンジン「Rtoaster」を導入しました。お客様の行動に合わせた商品のレコメンドをはじめ、A/Bテストやバリアブル印刷などRtoasterに蓄積されたデータを用いて多彩な施策を実践しています。
詳細:株式会社ピーチ・ジョン様 レコメンドエンジンRtoaster活用事例
レコメンドエンジンを導入するメリットは?
レコメンドエンジンの活用により、どのようなメリットが見込めるのでしょうか。以下で解説します。
商品の購買率のアップ
レコメンドエンジンを活用すれば、顧客の興味・関心をもつ可能性の高い商品・コンテンツをおすすめしやすくなります。サイトを訪れた顧客は自分がほしい商品を見つけやすくなり、商品購入に結びつきやすくなります
また、ECサイトにとって実店舗のような接客体験の創出が課題として挙げられやすいですが、レコメンドエンジンを活用することで実店舗に勝るとも劣らない接客体験を演出することも可能です。
うまく活用することでクロスセルやアップセル施策もでき、顧客単価の向上なども期待することができます。
顧客体験の向上、顧客のサイトへのロイヤルティ向上への期待
顧客のサイトへのロイヤルティを高めるのにも効果的です。個々の顧客に合う商品を紹介すれば、自分が求めている情報を得られるため、サイトに対する顧客の信頼度が増していきます。その結果、顧客の定着化・リピーター化が期待できます。
レコメンドエンジンを導入する際に注意すること
レコメンドエンジンを導入する場合、注意することもあります。ここでは、導入時の注意点を解説します。
レコメンドエンジンを導入する目的を明確にする
レコメンドエンジンを導入するなら、必ず目的を明確にしてからにしましょう。よく耳にするのが、レコメンドエンジンを実装したもののどう活用していいかわからない、レコメンドすることが目的になるといったケースです。そうならないためには、何をするためにレコメンドエンジンを導入するのか、どのような数字を改善するのか定性・定量の両面でKPIを具体的に設定する必要があります。また、解決したい課題をしっかりピックアップしておくことも重要です。導入する目的や課題が明確になると、より効果的に活用できます。
レコメンドエンジンはスモールスタートで
レコメンドエンジン実装後にありがちなのが、「あれもやりたい、これもやりたい」とサイト全体でレコメンドの情報設計し計画することばかりに時間がとられ、レコメンドエンジンを導入してから、レコメンドが実装されるまでに時間がかかってしまうというケースです。もちろん、この進め方も間違いではありませんが、スモールスタートをしてアジャイル式に適用範囲を拡大することをおすすめします。
部分的で良いのでスモールスタートすることで、実際に顧客の反応をデータとして蓄積できます。また、そのデータが運用側のナレッジにもなります。そのデータやノウハウがあることでより効率的に適用範囲をひろげることや、より効果的なレコメンド施策をうつことができます。結果的に、よりはやく、より大きな成果を得られると考えられます。
レコメンドエンジンを導入・運用するにあたり人員配置は適切か
レコメンドエンジンを導入して運用するためには、さまざまな作業が発生します。たとえば、商品の情報を登録したり、レコメンドの表示方法を決めたりするなどです。それぞれの作業を誰が担当するのか明確にしつつ、人員配置が適切かどうか考慮しましょう。
導入直後は最適なレコメンドが表示されにくい
レコメンドエンジンを導入した直後は、データが十分ではないので、最適なレコメンドが表示されにくいものです。最初はレコメンドの質が高くないという点を理解しておく必要があります。データが蓄積されていくにつれ、精度も向上していくでしょう。
少力バー率問題がある
商品の性質はそれぞれ異なり、なかには一部の顧客のみから熱烈に支持される商品もあります。しかし、閲覧数や購入数が少ない商品はレコメンドされにくいため、その商品を求める人に対してうまく表示できないことも多いのです。このような課題は、「少カバー率問題」と呼ばれています。
レコメンドエンジンを選ぶときのポイント
レコメンドエンジンはどのように選べばいいのでしょうか。ここでは、選ぶときのポイントを挙げていきます。
自社に必要な機能が揃っているかチェックする
事前に自社にとって必要な機能を確認したうえで選びましょう。先述した通り、レコメンドエンジンを導入する目的を明確にしておくと、どんな機能が必要なのかも判断しやすくなるでしょう。
機能によっては、あとからオプションとして追加できるケースもあります。そのことも考慮し、自社に本当に必要な機能を選ぶようにすることが大切です。
利用料金を事前にシミュレーションする
事前に利用料金のシミュレーションをしましょう。利用料金は、従量課金制となっている場合が多いです。ただし、サイトのアクセス数によって月額利用料金が大きく変化することもあります。
他のサービス・ツールと連携が可能か確認する
レコメンドエンジンは、他のサービスやツールと組み合わせて使用することも多いです。そのため、MA(マーケティング・オートメーションツール)やDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)など、すでに使っているツールや導入予定のあるツールと連携できるかどうかを確認したうえで選んだほうがよいでしょう。
まとめ
レコメンドエンジンは、ECサイトを効率的に運営するのに役立ちます。より効果的に活用するためには、データを管理するための顧客データ基盤(CDP/プライベートDMP)などとの連携も検討しましょう。
「Rtoaster」は、ルールベースレコメンド×自動レコメンドによって顧客体験向上に貢献するレコメンドエンジン搭載のパーソナライズ基盤です。Web全体を最適化するための多様なレコメンド機能だけでなく、高度な分析機能もあり、効果的なマーケティング施策ができるようになります。
最終更新日:2022年12月2日
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