現代社会では店頭やインターネット上にモノがあふれており、さまざまなものが簡単に手に入るのが当たり前になりつつあります。そのため、モノを買ってもらうには「体験」による差別化も重要となってきています。この記事では、UXとCXを理解し、競合他社との差別化を図りたい人に向けに、UXとCXの違いについて解説します。
UXとCXの意味とは
UXとCXは、いずれも商品・サービスに関わる顧客の「体験」に関する言葉ですが、対象となる体験はそれぞれ異なります。ここでは2つの違いについて解説します。
UX( ユーザーエクスペリエンス)の意味
UXとは、商品・サービスそのものに関するユーザー(利用者)の体験を指します。カタログに記載されているような、商品の利便性・機能性とは異なるので気をつけてください。
例えば、ユーザーがコードレスクリーナーを購入したとします。「コードの差し替えを気にせず、のびのび掃除できて嬉しかった」「広範囲の掃除でもバッテリーが持つのでストレスなく掃除できた」など、実際に商品やサービスを使ったことで得られた体験や気持ちがUXです。なお、UXは、ユーザーが商品やサービスをより使いやすく改良するための指針にもなります。
UXについての詳細はこちらをご覧ください。
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?ユーザーの理解を深めよう
CX(カスタマーエクスペリエンス)の意味
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、商品やサービスを購入する前の対応から購入後のサポートまで、顧客が自社商品に関して体験したすべてを指します。「商品購入後のサポートや保証などのアフターケアが充実していて満足だ」「商品購入後も定期的にお得な情報を送ってくれて嬉しい」といった体験や気持ちがCXです。UXと比べると、CXに該当する「体験」の方が広範囲であると捉えておくとわかりやすいでしょう。
ちなみに、「ユーザー」と「カスタマー」は似ているようで異なります。ユーザーとは商品やサービスの利用者、カスタマー(顧客)とは商品・サービスの購入者を指します。つまり、ユーザーとカスタマーが異なる場合も少なくありません。
CXについての詳細はこちらをご覧ください。
関連:カスタマーエクスペリエンス(CX)とは何か?成功事例や向上のポイントも解説
UXとCXの4つの違い
UXとCXは境界線が曖昧で意識しないと区別が難しいとされています。ここではUXとCXの4つの違いについて解説します。
【その1】対象となる種類が違う
UXは、商材そのものとユーザー間で発生する体験です。商材には、スマホなどのデバイスのような有形の商品もあれば、アプリやWebサイトのように無形のサービスもあります。また、エステサロンでの施術や、スクールなどで開催される講義もサービスの一例に挙げられます。
一方CXには、商品・サービスそのもの以外に、物流・販売・アフターフォローなどさまざまな工程が含まれ、多くの人やモノが関係します。それぞれの会社によってモノの売り方は異なるため、自社の仕組みを把握し、CXの対象となる体験をみつけてください。
【その2】対象となる部門の数が違う
UXに関わる対象は限られます。製品の機能向上や品質保持については開発部門が、サロンなどのスキル向上については施術者が対象となるなど、明確に対象となる部門が絞られています。一方、CXに関しては製品・サービス以外にも物流・販売・アフターフォローなどさまざまな部門が関わります。
UXは、リサーチ・改善について限られた部門でも対応可能です。一方、CXの対象は複数部門が関わっているため、CXを向上させるには複数の部門の協力が必要です。
【その3】それぞれの管理方法が違う
UXの訴求は、商材を提供する部門のみでもおこなえます。関わる人や検討すべき内容が絞られるため、スピーディーに対応できる場合が多いです。一方CXには、流通や販売店、フォローアップを行うカスタマーセンターなどさまざまな部門や協力会社が関係しています。広い視野をもち管理して、ときにはデータ分析する必要があります。
CXを高めるには、すべての部門の認識をそろえ、一貫性のあるデータ管理・分析や改善を行う必要があります。UXと比べると、CXを改善する方が時間も手間もかかり、難易度も高いと言えるでしょう。
【その4】UXとCXは扱う分野が違う
UXとCXは、改善に必要な専門分野がそれぞれ異なります。UXの訴求には、エンジニアやデザイナーなどの技術者や、心理学をバックグラウンドにもっている人が向いています。エンジニアやデザイナーには、専門知識やスキルを開発に反映してもらいましょう。また、心理学はユーザーの潜在意識を読みとるなどの目的で求められます。
CXには流通や販売店、フォローアップを行うカスタマーセンターなどさまざまな部門が関わります。ビジネス全体を見通す力が必要なため、高度な分析力やマネジメント力が求められるでしょう。CXは顧客戦略・経営戦略にも大きく関わりますので、ときには外部コンサルティング会社のサポートなどを受けることも一つの手段と言えるでしょう。
UXとCXの具体的事例
UXとCXはいずれも商材にまつわる体験であるため、2つの区別を難しく感じる人もいるかもしれません。飲食予約アプリサービスの利用と家電購入を例に挙げ、UXとCXについて具体的に解説します。
具体例1【ホテル予約アプリのUXとCX】
ホテル予約アプリを使ったユーザーの体験を例に紹介します。
1)ホテル予約アプリを利用しホテルを探した
2)様々な条件から検索でき、自分にピッタリで評判の良さそうなホテルが簡単に探し出し予約できた
3)サイトで見た評判どおりのホテルで素晴らしい宿泊体験をできた
この場合、ホテル予約アプリのUXに該当するのは1と2のみです。3はホテルアプリそのものではなく紹介されたお店に紐づく体験(UX)であり、飲食予約アプリについてのUXではありません。一方、CXという観点ですと、3もサイトに評判が掲載されていたことによって得られた体験と言えますので。1~3すべてホテル予約アプリのCXに該当すると言えます。
こうしてみると、UXの評価を向上させても、必ずしもCXの評価も向上するとは限らないことがわかります。今回の例でいうと、飲食店側のサービスについては、アプリ側から介入できないためです。
具体例2【家電購入シーンにおけるUXとCX】
以下に、ECサイトで家電Xを購入したユーザーの体験を紹介します。
1)SNSの広告で見かけた家電Xに興味をもったため、とあるECサイトで家電Xについて調べた
2)家電Xを購入し、使ってみてさまざまな点に満足したが、不具合があったのでカスタマーセンターに相談して対処方法を教えてもらった
この場合、家電Xに対するUXは2の「さまざまな点に満足した」という部分のみで、ほかはCXと言えます。家電メーカーが家電の機能を向上させたとしても、SNSの広告やECサイトの仕様や説明が不十分な場合、CXは低くなるでしょう。また、カスタマーセンターの対応が悪い場合などもCXに大きく影響します。
CXが重要視される理由
現代社会では、CXを重要視する会社が増えています。もはや、商品・サービスの品質にこだわるのみでは、会社が成長できるだけの利益を得られにくくなりました。ここでは、CXが重要視される理由を解説します。
競合との差別化ができるため
技術の進歩により、商品・サービス本体のレベルに差がつきにくくなりました。そのため、顧客にアピールする付加価値として、CXを高め、顧客満足度を引き上げる重要性が増しています。
ECサイトで家具を購入する場合を例に挙げます。同じようなデザイン・機能・値段の家具があり、一方が配送日時指定可能且つアフターケアも充実している、もう一方が日時指定不可且つアフターケアも無しであれば、前者の家具を購入する人が多いと考えられます。顧客目線でCXを向上させ、差別化を狙いましょう。
「体験」を提供することの重要度が増しているため
コンピューター社会となり、一人ひとりがスマホやパソコンで商品やサービスを購入できるようになりました。SNSやWebサイトを見るといろいろな情報を得られるため、モノを選ぶのも簡単です。利便性が増すにつれ、モノ自体の価値だけでなく、モノを手に入れるまでの「体験」や手に入れたあとの「体験」も重要視されるようになっています。
こうした背景から、「体験の価値」の指標であるCXが重要視されています。名の通ったブランドで購入した、口コミがよい会社の商品を購入した、店舗にアクセスしやすかったなど、これらはすべてCXに結びつきます。
また、一度は商品・サービスを利用してもらえても、CXに不満を覚えると次回は別の商品にしようと考えるかもしれません。リピーターを増やすという観点においても、CXは重要と言えるでしょう。
会社の売上成長に影響するため
CXが向上することで会社の売上成長に結びつきやすいという調査結果があります。フォレスターリサーチ社.の調査によると、CXがよい場合に、顧客は平均よりも4.5倍の金額を支払うとの結果が得られています。
また、CXのよい会社は、CXに対して何も考えていない会社と比べると、成長が5倍速いという調査結果もあります。会社の成長には安定して利益を出し続ける必要がありますが、そればリピーターの獲得が安定した利益に結びつくためと考えられます。商品だけでなくCXまでを気に入ってもらえると、SNS上などで良い口コミを拡散してもらえる場合もあります。
このように、CXは会社の売上成長に強く影響を及ぼします。商材と顧客との接点を注意深くチェックし、CX向上に努めましょう。
まとめ
UXは商材を利用するユーザーの体験、CXは商品やサービスを購入する前の対応から購入後のサポートまで、顧客が自社商品に関して体験したすべてを指します。商品やサービスそのものにこだわるだけでは、競合との差別化は困難です。UXだけでなくCXを向上させ業績を上げ、会社の成長につなげましょう。
「Rtoaster」は、あらゆる顧客データを統合・分析し、精度の高いパーソナライズ・Web接客を実現するCDP/プライベートDMPです。データの収集から分析・可視化、あらゆるツールへの連携までワンストップで提供しています。連携先も豊富なため、現在活用されているツールやシステムとの組み合わせも可能です。ぜひお気軽にお問合せください。
関連記事
・CDPとは?初心者でも分かる仕組みや特徴
・CDPとDMPの特徴や違いを理解し、マーケティング施策に活用しよう
・CDP導入を検討しているなら必ず確認しておくべきこととは?
・プライベートDMPとは?パブリックDMPとの違いや導入ポイントを解説
・カスタマーエクスペリエンス(CX)とは何か?成功事例や向上のポイントも解説
・データドリブンとは?データドリブンマーケティングを行う方法や支援ツールも解説
「すべてのお客様への個別接客」を
効率的に自動化する。