「味わいベースレコメンド」で、おすすめワイン枠からの購入率2倍!
ソムリエの接客を目指すエノテカ・オンラインのRtoaster活用事例
エノテカ株式会社が運営する日本最大級のワイン通販サイト「エノテカ・オンライン」は、ブレインパッドのレコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster」を導入しました。2,000種類を超えるワインの味わい要素を機械学習で関連付けした「味わいベースレコメンド」を構築し、お客様一人ひとりに適したワインを提案することで、おすすめワイン枠からの購入率が2倍へと向上しています。Rtoaster導入の経緯と効果について、同社通販事業部の宇佐様にお話をうかがいました。
施策・導入のイメージ
導入後の成果・ポイント
- トップページバナーを手動で更新していた運用をRtoasterで自動化して効率化
- 従来のレコメンドに比べ、おすすめワイン枠からの購入率が2倍に向上
- 2,000種を超えるワインの「味わいデータベース」を更に精緻化することで、“ソムリエの接客”をWebで再現し、お客様のさらなる満足度向上を目指していく
1.事業内容
全国50以上の店舗と、ワイン通販お客様満足度No.1*サイト
「エノテカ・オンライン」を通じて高品質なワインを提供
エノテカ株式会社様の事業内容を教えてください。
1988年の設立以来、全国50店舗以上のワインショップと卸売を通じて日本全国の皆様にワインをお届けしています。また、2000年に開設したエノテカ・オンライン(https://www.enoteca.co.jp/)は、おかげさまでワイン通販お客様満足度No.1※の評価をいただき、日本最大級のワイン通販ECサイトとしてワインラヴァーの皆様にご利用いただいております。
エノテカ・オンラインの特徴を教えてください。
エノテカ・オンラインは常時2,000種以上のワインを取り扱っており、そのほとんどが世界各国のワイナリーと直接取引をして輸入しています。買い付け時の品質チェックはもちろん、温度・湿度管理にこだわることで本当に美味しいワインを本当に美味しい状態でお届けしています。
総勢約40名のスタッフが商品情報の質と量にこだわり運営していることも特長です。新たな企画や特集が毎日リリースされ、ワインラヴァーの皆様の熱心な口コミが集まるのも他のECサイトにはない当社の強みです。「FOR ALL WINE LOVERS すべてのワイン愛好家のために奉仕する」の理念に基づき、実店舗以上の顧客体験を提供することを心がけて運営しています。
ワイン通販お客様満足度No.1※エノテカ・オンライン(https://www.enoteca.co.jp/)
※調査会社:株式会社東京商工リサーチ。調査実施期間:平成29年1月11日~1月17日
2.導入前の課題
効果測定が追いつかない程の、
大量のトップページバナーの手動運用。
Rtoaster導入前の状況について教えてください。
トップページの使い方にすごく悩んでいました。トップページはアクセス数も一番多く、ワイン購入の多くを占めるページなので非常に重要なのですが、ここをどのお客様に向けた情報で構成するのが課題だったのです。
例えばリピーターの方向けには、新しい発見があるように新着のワイン情報とか、ワインに詳しい人向けの特集などをどんどんご案内したいのですが、新規のお客様には定番のワイン情報やワイン初心者用の情報など、お客様ごとに適した情報が異なります。
トップページのバナーは数秒ごとに切り替わるスライド式にしているので複数種類のバナーを表示できます。ただ、枠には限りがあるのでどうしても購入額が大きいリピーターの方向けの情報に寄せてしまいがちでした。そうなると、新規の方向けの情報量が少なくなってしまったりするので、平日の限られた時間帯だけ別のバナーを表示するなど、手動で情報の出し分けを細かく調整しながら試行錯誤の毎日でした。
また、エノテカ・オンラインの規模が大きくなるにつれて、ワイン特集などの企画量も増えていき、毎日のように新しい特集が作られていく中で、手動運用の体制に限界を感じるようになりました。
手動での運用にはどのような課題がありましたか?
まずは運用にかかる作業負荷が課題でした。スライド式バナーの枠は8つあるのですが、そこに何を掲載するかの意思決定と、手動でのバナー更新作業に毎日多くの時間を費やしていました。
さらに課題だったのが効果測定です。本来ならCTRやCV数に応じて掲載バナーの調整を行うべきなのですが、運営スタッフは新しいコンテンツの企画や制作に注力しており、バナーの効果測定にまでリソースを割けませんでした。
そのため、掲載バナーを決定する会議では、企画担当者の意向や、長年の勘によって掲載するバナーが決められていました。こうした運営のため、表示コンテンツの出し分けに手間暇かけているものの、その効果がはっきりとわからず、手応えのないまま日々運営するという状況が続いていました。
ブレインパッドとの取り組みはどのようにスタートしましたか。
この体制をどうにか改善できないかと模索している時、他社様での成功事例を拝見してブレインパッドさんにお声掛けすることにしました。まずは当社の課題を相談させていただき、課題解決に向けたヒントやご提案をいくつかいただきました。
提案いただいた課題解決の方向性は2つありました。1つは、トップページのバナー更新を自動化ツールで効率化し、効果測定をしながらPDCAを回すことで継続的に成果を高める仕組みを作りましょうというお話。もう1つは、お客様の購買履歴やWebサイトの行動データをきちんと活用して、お客様一人ひとりにあったワインをオススメするWeb接客を実現しましょうというお話でした。
ツールの提案だけでなく、コンサルタントの方がしっかりとついて二人三脚で進めていく体制での提案でしたので、データ分析や運用自動化が私たちにも実現できるイメージが湧き、Rtoasterの導入を決定しました。
3.運用改善
トップページのバナー運用が効率化され、
お客様に応じたコンテンツの出し分けを実現。
具体的にどのような施策から実施されましたか。
Rtoasterを導入し、トップページのスライド式バナーをお客様ごとに自動で出し分ける施策からスタートしました。サイト訪問回数に応じてお客様を[リピーターのお客様/新規のお客様]として分類させていただき、新規のお客様には購入しやすい価格帯のワインや、お買い得セットのバナーを多く表示するという施策を実施しています。
「エノテカ・オンライン」トップページのパーソナライズ例
運用改善の効果を教えてください。
Rtoasterがお客様の状態に応じてバナーを自動で切り替えてくれるので、それまで毎日行っていた手動でのバナー更新作業の負荷が軽減されました。
バナーごとのCTRやCV数など効果測定が簡単に行えるようになったので、毎日の会議でも前日のデータ集計をみんなでチェックするようになりました。以前の会議ではどのバナーを掲載するか、各企画担当者の勘や思い入れを調整するのが非常に大変だったのですが、今は「この特集バナーはCTRが低いので止めますね」と言えばみんなそうですね、と賛同しますし、データに基づいた素早く納得感のある意思決定ができています。ロジカルに物事を考える習慣がスタッフに定着してきたようにも思います。
また、バナー掲載を手動で行っていた頃は、バナーのローテーションの中で気がつくとセット価格5万円や10万円といった高額ワインの特集ばかり並んでいたりすることがあり、初めてのお客様に「エノテカ・オンラインは高いワインばかりなのだろうか?」のような誤解を与えかねない失敗もありました。Rtoaster導入後は、お客様の購買状況に合わせて、好みに応じた価格帯のワインがバランスよく表示されるようになったので、そういった誤解もなくすことができていると思います。
4.接客強化
“ソムリエの接客”を再現するための「味わいベースレコメンド」を構築。
おすすめワイン枠からの購入率が2倍に。
その他にはどんな施策を実施されていますか。
各商品ページには「あなたへのおすすめ商品」という情報枠があるのですが、ここに掲載する商品をRtoasterの自動レコメンド機能で出力しています。
ワインはとても奥深い商材なので、関連商品のレコメンドにはとても苦労していました。
Rtoaster導入以前は別のレコメンドツールを使って「この商品を買った人は、こんな商品も閲覧しています」という単純なレコメンドを行っていました。このレコメンドでは、商品購入の有無に関わらず一番閲覧された商品が表示されるので、1500円のワインに、たまたま閲覧しただけの40万円の高級ワインがレコメンドされてしまうこともありました。
また、ワインの[産地]で関連商品をピックアップしても、赤ワイン・白ワインといった[タイプ]がバラけたり、[価格帯]がかけ離れることがあります。ワインは同じ[産地][品種]でも[価格帯]が異なると味わいが変わる難しい商材なので、単純なレコメンドでは違和感のある結果となってしまっていたのです。
これを解決するためブレインパッドさんと取り組んだのは、よりソムリエの接客に近いおすすめワイン提案を行うための「味わい」をベースにしたレコメンドロジックの調整でした。
具体的にどのような手順で進めたのでしょうか。
基本的には、ワインの味わいは[タイプ][産地][品種][価格帯][醸造方法]の5要素によって決まると言われています。これを元に味わいを分類し、おすすめワインをピックアップするのですが、どの軸をどれぐらい優先するかの細かなチューニング作業をブレインパッドさんと共同で進めていきました。
例えば、マッチングの際に[価格帯]を重視したら[産地]や[品種]にばらつきが生まれたとします。そのような場合、次は[品種]の優先度を強めて再チェック、違和感があれば別の軸の優先度を調整して再チェック、という作業を繰り返します。機械学習によるチューニングはブレインパッドさん、それが実際に近い味わいになっているかを私たちがチェックするという作業分担で、妥当なレコメンド結果が得られるまで数回これを繰り返しました。
ワインの場合、高価格帯の商品になると「ボルドーが好き」「ブルゴーニュが好き」というように人によって産地の好みが色濃く出てきます。そこで高価格ワインに限っては[産地]を特に重み付けする、などの特別な調整もいくつか行っています。Rtoasterはこのような複雑な調整にも対応できるので、私たちは意見や感覚を伝え、それをどうチューニングに反映するかをブレインパッドさんに担当してもらいました。
施策の効果を教えてください。
「あなたへのおすすめ商品」からのワイン購入率はともに以前の2倍へと向上しました。
以前のように全く価格帯の違うワインが表示されたりなどのノイズが排除され、ワインという特殊な商材の特性を踏まえたレコメンドが行えるようになりました。このあたりが購入率2倍という成果に繋がっているのだと思います。
ワインとの出会いは一期一会なので、精度の高いレコメンドでお客様にその機会を少しでも多く提供できることは私たちにとってとても嬉しいことです。「もっと早くRtoasterを導入すればよかった!」と思いました。
5.今後の展望
高精度な「味わいベースレコメンド」のために、
2,000種を超えるワインの更なる解析に挑戦
今後のエノテカ・オンラインでのデータ活用について教えてください。
通販事業部 兼 商品部広報室 係長
(社)日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
宇佐 彩子様
ソムリエは、お客様の好みに応じて最適なワインを提案することができます。この職人技とも言えるレコメンドを、エノテカ・オンライン上で実現したいと考えています。
そのためにどうしても必要となるのがワインの「味わい」のデータベース作りです。
エノテカ・オンラインには2,000種以上のワインがありますが、「フルボディ」「爽やか」「フルーティ」「すっきり」などの味わいカテゴリの属性付けがされている商品はまだごく一部しかありません。ソムリエのような接客実現に向けて、ワインの味わいデータベース作りをブレインパッドさんと進めています。
ブレインパッドさんの“定量的なアプローチ”と私たちの“定性的なアプローチ”を組み合わせていけば、精度の高い「味わいデータベース」を効率的に作っていけるのではないかと考えています。
「味わいデータベース」が完成すると、お客様にどのような価値を提供できるようになりますか。
「味わいデータベース」が完成すれば「味わいベースレコメンド」が更に高精度になり、そこに過去の購買履歴やお客様情報を加味すれば、ワインの奥深さや広がりを感じていただけるような、バリエーション豊かな提案ができると思います。
例えば、ブルゴーニュワインがお気に入りのお客様に「いつものワインにとてもよく似た味わいのチリワインがあります。お試しになりませんか?」という新しい発見のあるご提案や、「今日はお客様の誕生日ですから、いつものワインとよく似た味わいのプレミアムなワインをお試しになりませんか?」という特別なご提案ができるようになると思います。
このようにお客様一人ひとりにパーソナライズされたご提案を、トップページやメールマガジンを通じてお届けできれば素晴らしいですね。エノテカ・オンラインには常時2000種を超えるワインの品揃えがあるので、レコメンドの精度を高めていけば、まるで人間のソムリエのような深いワイン知識とおもてなしマインドを兼ね備えた接客をオンラインでもご提供できるのではないかと思います。
6.ワインの特殊性、難しさにも、興味を持って共に取り組んでくれたのがブレインパッドの素晴らしさ
最後に、ブレインパッドの対応をご評価ください。
ワインはとても特殊な商材なので、一般的な商材を売る時の成功法則やセオリーが通用しないことが多々あります。これまでお付き合いしたいろいろなパートナー様もやはりそこに苦労されていましたが、ブレインパッドさんはその特殊性や難しさにむしろ興味を持って取り組んでくれるところが素晴らしいと思います。
今回、担当コンサルタントの方が当社の実店舗で買い物をしてどのような接客がされているのかを体験したり、プライベートでワイン講習会にも参加して勉強されたと聞いています。ここまで真剣にワインに向き合うパートナー様はブレインパッドさんが初めてでした。
担当コンサルタントの方からは、お客様目線のアイデアもたくさんいただきました。味わいベースレコメンドもまさにそうです。お客様に最高のワインをお届けするための取り組みに、今後もぜひ力を貸していただければと思います。
エノテカ株式会社 宇佐様とエノテカ様を支援する当社コンサルタントの八木