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データサイエンティストが「21世紀で最もセクシーな職業」という言葉が生まれてから10年あまりの月日が経ちました。生成AIの台頭やビジネスでの機械学習実装が普及し、データサイエンティストに求められる役割やスキルもこの10年で大きく変化しました。これからの時代、データサイエンティストはどんなキャリアを目指し、どんなスキルを身につけるべきなのでしょうか。Xやnoteなどで日々、データサイエンティストのキャリアに関する発言・発信を行い、キャリアについて真剣に考えるデータサイエンティストに強い影響力を持っているぬるったん氏に話を聞きました。
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株式会社ブレインパッド・高田 洋平(DOORS Media編集長/以下、高田) 本日はよろしくお願いします。ぬるったんさんはXなどで活発に発信を続けておられます。その理由や経緯、思いなどを聞かせていただけますか。
・X https://twitter.com/Nurruttan
・ブログ https://digital-transformation-blog.com/
・note https://note.com/nurruttan/
・Youtube https://www.youtube.com/@Nurruttan
ぬるったん氏 データサイエンティストのキャリアに関する情報が全般的に少ないと感じていたのがきっかけです。私自身は5、6年前に未経験からデータサイエンティストに転身したので、データサイエンティストとして長い経験を積んでいるわけではありません。しかし働いているうちに、データサイエンティストとして実際に働いている人たちがさまざまな悩みを抱えているなと感じるようになりました。
そのうちマネジメントを経験させてもらえるようになり、世間一般の方と比べると、ここまで多くのデータサイエンティストと接している人間もなかなかいないと考えたので、発信活動を始めるようになったのです。
高田 媒体はどのように使い分けていますか。
ぬるったん氏 発信媒体で中心的なのはXとブログです。そのほかにはnoteと、最近になってYouTubeも使うようになりました。ブログから始めたのですが、ブログの集客はなかなか難しく、発信した情報が届いていないと感じました。いろいろと試行錯誤した結果、Xでのポストに共感してくださる方が多く、フォロワーが伸びてきたので、Xをベースにして、そこからブログやnote、YouTubeにリンクする形で今は構成しています。
高田 ではまず、「データサイエンティストの認知」について深堀りしていきたいと思います。昨年の9月に一般社団法人データサイエンティスト協会が、日米の一般ビジネスパーソンに対してデータサイエンティストの認知・理解を調査し、その結果を発表しています。https://www.datascientist.or.jp/common/docs/Research_20230912.pdf
それによると、日本の一般的なビジネスパーソンで、データサイエンティストという職種を知っている割合は25.1%なのだそうです(確かに知っている:8.7%、なんとなく知っている:15.5%)。
この数字について、ぬるったんさんはどのようなご意見を持っておられるのでしょうか。
ぬるったん氏 実感としても、データサイエンティストの認知度はまだまだ低いと感じます。私自身もプライベートで自分の仕事を聞かれたときに、「データサイエンティストです」と胸を張って言うことはあまりなく、「データ分析のコンサルタントのような仕事をしています」と若干濁した説明をすることが多いです。
ただ徐々に認知が広がっている実感もあります。AIが注目されているという背景もありますし、大学でもデータサイエンス学部の新設が増えていますので、一般の方が「データサイエンティスト」という言葉を目にする機会がかなり増えたように思います。大学生だと6割近くが知っているという統計(※)もありますし、私自身も採用に関わる中で実際に志望者が増えている印象があります。特に新卒募集では、大学で学べる環境が徐々に整備されてきたことにより、認知が広がってきていると感じています。
(※)Data of Data Scientist シリーズ vol.38『48%-大学1年生が入学前からデータサイエンティストを知っている割合』
高田 データサイエンティストの将来性を感じている割合は、日本でも認知者ベースで55.4%と比較的高い数字になっています。ただアメリカの83.1%に比べるとずいぶん低い印象があります。
ぬるったん氏 AIに関わる職種に関しては将来性を感じている方が多いと思うのですが、AIとデータサイエンティストが結びついていないのだと思われます。
高田 もう1つ気になっている数字がありまして。日本のデータサイエンティストの業務満足度は37.1%(満足している:10.0%、どちらかというと満足している:27.1%)。これは一般ビジネスパーソンの49.4%(満足している:15.3%、どちらかというと満足している:34.1%)と比べて低い数字になっています。なぜでしょうか。
ぬるったん氏 データサイエンティストという職種への期待値が高かったからではないでしょうか。「アルファ碁」が話題になったとき、人間のトッププロよりもAIのほうが強いというある意味ショッキングな世界観を見せつけられました。
しかし「いざデータサイエンティストという職業についてみたら、実際にやっていることは泥臭いデータ整備が中心だった」というのはよく聞く話です。データはあっても、あちこちに散在しているとか、集めてもそのままでは分析には使えないという状況で、データサイエンティストが一生懸命それを使えるようにするというのが、ここ3、4年のフェーズでした。現実とイメージにかなり大きなギャップがあって幻滅した方が多いのかもしれません。
高田 分析に至る前の作業が多いということですね。
ぬるったん氏 そうですね。そのあたりが、システムの改修やデータ基盤の整備に各企業が投資をして、今ようやく清流化してきたという感じです。職に就いたときにやりたかった機械学習やディープラーニングがこれまではできず、経験を積めない環境だったのが、ようやくできるようになってきました。それでまだ業務満足度が低いのだと思いますが、データサイエンティスト自体はやりがいのある職種であることをしっかりと伝えたいと思ったことも、発信活動を始めたひとつのきっかけだったのです。
高田 ぬるったんさんはベンダーの立場でクライアント企業の支援をされていますが、実際に関わっているクライアント企業側がデータサイエンティストを見る目は、この数年で変わってきているのでしょうか。
ぬるったん氏 私がご支援している企業に関して言えば、レベルアップを感じます。4、5年前までは、機械学習やAIあるいはデータサイエンスといった言葉が独り歩きしていました。データサイエンティストにデータを渡せば、何かすごいことをやってくれるのだろうという人が多かったように思います。しかし年月を積み重ねるうちに、できることとできないことが明確に意識されるようになってきました。
使う側のスキルも当然必要で、まだまだばらつきはあるようですが、昔から一緒にお仕事をさせていただいている方々とは、肌感覚で通じる関係性になってきていますね。
高田 生成AIの登場で変わった部分はありますか。
ぬるったん氏 実態としては、そこまで大きく変わっていないと思います。特に中堅以上の規模の企業ですとセキュリティーが厳しくて、限定的にしか広がっていません。実務で生成AIの普及を感じるまでに至っておらず、現実の普及は少し遅いかなという印象です。ただ興味を持つ方は増えたと思います。
高田 とある企業の担当採用者から、「単にデータ集計やデータ整備ができるだけでデータサイエンティストと名乗っている人が多いが、そのような人たちでも奪い合いになっている」という話を聞いたことがあります。ぬるったんさんはどう感じておられますか。
ぬるったん氏 個人的にはポジティブに受け止めていますね。いろいろな方がデータサイエンスに興味を持っていて、チャレンジできる環境が整ってきたからだと思うからです。ほんの数年前までは一般の人がデータサイエンスを学べる環境が整備されていない中、私も本を読みながら独学してきました。しかし、徐々にスクールが増えたり、YouTubeなどWeb上で教える方も増えてきたりして、データサイエンスが身近に学べる環境ができあがってきました。それゆえに起きている現象なのではないでしょうか。
私も実際に採用に携わる中、身近にいる人事部のスタッフから採用が大変だと聞いています。ですから、こういったデータサイエンティストの卵をしっかりと育てていくことが企業側に求められているのだろうと考えていますね。
高田 ちなみに、最近あまり意味がなくなってきていると思うのですが、文系・理系という分け方がありますよね。ぬるったんさんは元々どちら側なのですか。
ぬるったん氏 私は理系出身ですが、そこまで熱心なタイプでなかったのが、正直なところです(笑)。
高田 いわゆる「文系」の方でも、チャンスはあるとお考えですか。
ぬるったん氏 ありますね。そもそもデータを扱うという話なら、特に経済学や心理学ではかなりしっかり数学や統計学を習い、使いこなしている人も多くいます。実際に心理学専攻でデータサイエンティストとしてのキャリアを築いている方も知っています。
高田 逆にデータサイエンティストにビジネス的発想が求められるとしたら、「理系」のほうがどちらかというと弱い印象もあるのですが、そのあたりはどうでしょうか。
ぬるったん氏 コミュニケーションにおいて人当たりが大事だとすれば、それは文系のほうが得意だと感じます。そういった人的スキルは文系のほうが全般的に高いと感じてはいますね。データサイエンティストに求められているものはとても広いので、だからこそ自分の強みと弱みを認識して、強みで勝負していくことがキャリア構築においてとても重要ではないでしょうか。
高田 一見データサイエンスと関係なさそうな方でもデータサイエンティストへの転身は可能だと感じました。現職では採用にも関わっておられるとのことですが、どういう方なら可能性があると思いますか。
ぬるったん氏 プログラミングなどの技術的スキルに壁を感じる人が多いかもしれませんが、それは半年ないし1年も経験すればできるようになります。論理的に考えることができて、思考力が強い方であればデータサイエンティストとして活躍するポテンシャルは十分あると思います。
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高田 先ほど紹介した、データサイエンティスト協会の調査結果にも関係すると思うのですが、一般ビジネスパーソンにとって、データサイエンティストという職種は知っていても、どんな場面で活躍するかをイメージできているかをイメージできる方はまだまだ少ないように思います。
データサイエンティストが活躍できる場面、分野はどのようなところにあると考えていますか。
ぬるったん氏 データ分析の結果、売上が劇的に跳ね上がるとは正直考えていません。どちらかと言えば、企業にあるたくさんの無駄をデータから見つけ出して、効率化していくところに最も大きな活躍の場があるのではないでしょうか。見えていないコストを可視化するだけでも十分効果はあります。
高田 一般的に言う「ビジネスインパクト」というとどちらかと言えばたとえば売上を増やすことではないかと思っていたのですが、今のぬるったんさんのお話だと若干違うように感じました。
ぬるったん氏 最終的には同じことだと思います。どれだけの無駄を減らしたかという話も最終的には金額にしていくらという形に落とし込んで表現するわけですから、やはりビジネスインパクトを考えていることになります。
高田 直接売上が増えるという話でなくても、コスト削減で利益が増えますし、効率化によって単位時間あたりの生産性も上がるわけですから、最終的には売上に結びついていくということでしょうか。
ぬるったん氏 そうですね。ただ本質的にはコストの効率化だと思っています。効率化されて浮いたコストで次に何をやるべきかといったところまで最近では考え始めています。マクロな目線で見ると、データ分析により削減したコストをより投資対効果が高い領域に充てられるのであれば、結果的に売上を増やすということにつながります。
いずれにしても事業に対してしっかりとインパクトを出せないと、ただ面白いだけの分析結果になってしまいます。したがってビジネスインパクトを出すというのは、支援するという第三者的立場にあるデータサイエンティストだからこそ持ち合わせていなければならない観点だと思っています。
高田 世間の人はAIに対して、戦略を立案してくれたり、複雑な意思決定をしてくれたりといったバラ色のイメージを持っている印象もあります。しかし、実際には無駄を省くとか効率化・自動化するといった地道な活動を通じて最終的にビジネスインパクトにつながっていくということですね。
ぬるったん氏 そうですね。データ分析の結果がビジネスの意思決定につながることはありますが、それは意思決定する際に検討する数多くの情報の1つでしかないということです。AIがこうするのがいいとレコメンドしてくれると考えている人も多いのですが、今のところそのようなことはなく、基礎的な集計といったかなり地道な作業が大半を占めている案件もあります。そのあたりもデータサイエンティストに対する期待と現実のギャップなのかもしれませんね。
高田 これからの時代にアジャストするデータサイエンティストとはどんな人材なのでしょうか。
ぬるったん氏 データサイエンティストが活躍する領域が大きく2つに広がっていくのではないかと感じています。1つは、「領域への特化」。もう1つは「業務の推進」です。
領域への特化というのは、具体的には製造業、医療、製薬などといった事業ドメインに特化していくということです。そういうデータサイエンティストが求められ出していると実感しています。何の知識もないのに医療データの分析をしろと言われてもかなり難しいわけです。医療や製薬といったドメイン知識を持って、データサイエンスのスキルを持った人材のニーズが高まっていると思います。
また、業務の推進を担うデータサイエンティストのニーズも高まると思います。企業内データサイエンティストが増えてきて、この人たちが自らPoCを実施して成果が出そうだとなると、その成果を組織立って大きくしていこうという動きになっていきます。それと同時にデータ活用を組織にしっかり浸透させたいという話になり、人材育成の話が出てきたり、分析ツールを誰でも使えるようにしようという民主化の動きが出てきたりします。組織の中でデータ分析をどう使い、どう推進するか考えていく役割が、今後各企業で求められるようになっていくでしょう。
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高田 今までのデータサイエンティストのスキルやケイパビリティにこれらの要素がプラスアルファされていくイメージでしょうか。
ぬるったん氏 そうです。さらに、どちらの領域でもかなり高いコンサルティングスキルが求められるようになると思います。
データサイエンティストもインダストリーのことを理解していないと効果的な分析ができません。しかしコンサルタントに求められるような細かい知識、たとえば商習慣といったところまで知っている必要は現時点ではないと思っています。それよりもインダストリーに特化したデータの理解がデータサイエンティストには求められます。あるデータが何をもとにどうやってできあがってきたのかをしっかりと理解しないと、意味のある分析はできないということです。
高田 システムエンジニア(SE)にも業務知識が必要という話が昔からありましたが、大きな違いはコンサルタントは業務改善の提言をしますが、SEは基本的にその立場ではないということでした。もちろんシステムを作るにあたっては、最善の方法を提案しますが、業務そのものを変える役割ではないと。データサイエンティストとコンサルタントも同じような関係かと思うのですけれど、いかがでしょうか。
ぬるったん氏 コンサルタントとの境界がどうしてもあいまいになってしまうのが、データサイエンティストとSEの違うところだと思うのです。データサイエンティストはプログラミングもしますが、それはあくまで分析のためであり、モノを作る職種ではないからです。データサイエンティストの成果物は分析結果のレポートであり、ビジネスの情報とひも付けてしっかりと伝えなければ価値が出ないので、コンサルタントとスパッと分けられるような職業ではないのですね。
高田 インダストリーコンサルタントとは、どのようなすみ分けになるのでしょうか。
ぬるったん氏 データを理解しないと分析はできませんし、ビジネス的な提言もできなくなっていくでしょう。すみ分けというよりは、徐々にデータサイエンティストがインダストリーコンサルタント寄りの人材に近づいていくというのが私の考えです。
高田 なるほど。2番目の業務推進については、業務的な仕組み作りやデータ分析に関する発信などを得意とするデータサイエンティストというイメージを受けました。いわゆる企業内エバンジェリストとかインフルエンサーと言われる役割と思ったのですが、単純にそれだけではないニュアンスも感じます。
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ぬるったん氏 組織の中でデータ活用を推進していくときによくあるのが、分析人材がいない、あるいは分析の品質を担保できる人材がいないといったことです。そのような人材をどうやって育成していくのかという教育の仕組みを考えないといけませんし、そういった人材が組織に何人ぐらい必要かという組織設計も必要です。あるいはそのような人材に対してどのような業務を与えるべきかという業務設計も必要になります。こういったさまざまな観点からデータ活用の推進を提言できるデータサイエンティストも今後求められてくるのではないかと考えています。これもかなりコンサルタント的な能力が必要ですが。
高田 領域特化と業務推進を同じ人がやるというケースもあり得るのですか。
ぬるったん氏 それは正直なかなか難しいと思います。それぞれについても多くのことが求められるので、1人のデータサイエンティストがいろいろやるというよりも、チームでケイパビリティを獲得することが大事だと思います。個人に関して言えば、人材の育成だけをやるのでもいいと思いますし、業務の整理をするだけでもいいと思います。
高田 とはいえ、今後データサイエンティストに求められるスキルはかなり高いものになっていくということですか。
ぬるったん氏 これも私の発信の中で強調しているところですが、データサイエンティストと呼ばれる職種に対して求められることが今でも多すぎるのです。データサイエンティスト協会は、データサイエンティストに必要な3つのスキル領域として、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力を挙げていますが、すべてカバーしている人はいません。その中で自分のキャラクターを作って、育てていくことが、キャリア戦略としてはとても重要ではないかと思っています。
高田 そういうキャラクターを作っていく方向性として、1つは領域特化だし、1つは業務推進だということですね。分析官というだけではもはや不足で、「私は医療業界に関しては、コンサルタントに負けないぐらい詳しいデータサイエンティストなんだよ」とか、「人材育成に関する見識については業界有数のデータサイエンティストなんだよ」と言えるものを作っていきなさいということですよね。
ぬるったん氏 おっしゃる通りです。それをいかに経験値として積み上げていくかが重要です。もちろんビジネスもわかるし、分析もできるし、システムも作れるという方もおられると思います。しかし1人の人間が人生で経験できることは限られていますので、何についてどうやって経験値を上げるのかを考えることがキャリアを設計するということになるのではないでしょうか。
高田 ぬるったんさんは、分析会社の一員としてユーザー企業とお仕事をされています。その際にユーザー企業側が分析会社のデータサイエンティストを活かすうえで、こういうふうにすればより効果が出るといった提言はありますか。
ぬるったん氏 データ分析で何を解決したいのかという目的に向き合ってもらうことが重要と考えます。データ分析というのは人間の関心をどうしても刺激してしまうものらしく、興味本位で取りあえずデータ分析の結果を見たいという方も多くおられます。しかしそれでは価値が出ませんので、何のために分析をするのかをまずしっかり考えてもらうようにするのが重要なポイントかと思います。
高田 目的がはっきりしている会社とそうでない会社とでは、データサイエンティストの活かし方も違ってくるし、もちろん成果も違ってくるということですよね。
ぬるったん氏 そうですね。こういうのも見たい、ああいうのもの見たいとデータサイエンティストを振り回すことになると、データサイエンティストもかなり疲弊してしまいます。またクライアント側にとっても何の成果も出ないという、どちらも得をしない事態になりがちです。ですので、使う側のリテラシーも重要視されてきていると思いますね。
高田 目的ははっきりしていても、解くべき課題でないものと解こうとして無意味な時間を使うこともあります。そのあたりのリテラシーを上げる方法はあるのでしょうか。
ぬるったん氏 そこは経験を積むしかないと思います。ただ、この課題は本当に解くべき課題なのかという議論をしっかり行うのもデータサイエンティストのミッションだと思っています。それをやらないと分析の価値が生まれませんし、データ人材の市場価値の低下に結びついてしまうからです。そのような議論をクライアントとしっかりできる関係をまず築くことが重要です。
高田 最後に、普段の発信の中でも行っているとは思うのですが、データサイエンティストになりたいがどういうスキルを身につけたらいいかわからない方やデータサイエンティストとして行き詰まっている方へのメッセージをお願いします。
ぬるったん氏 「今までの経歴を生かせるかたちでデータサイエンティストとしてのキャリアを築きましょう」というのが一番言いたいことです。自分の専門性は自分では見えていないことが多いのですが、たとえばメーカーに5年いたというだけでも、製造業に関するドメイン知識をたくさん持っているのです。であれば製造業という領域に特化したデータサイエンティストに必ずなれるはずです。
データサイエンスの特殊性にあまり振り回されずに、自分の経験を最大化するための1つのアクセントとしてデータサイエンスに取り組むのがいいと考えます。
高田 現状に行き詰まっている方に対しては、方向性として領域特化と業務推進の2つがありました。そこに活路を見いだしていくということになるでしょうか。
ぬるったん氏 おっしゃる通りです。特に領域に対する専門性を持っていれば、そちらを目指すのが1番ではないでしょうか。ただ20代前半ぐらいの若い方であれば、今すぐに方向性を決めるよりも、さまざまなことにチャレンジして自分のキャラクターを見極めていくほうがよいと思います。
高田 データサイエンティストを目指す方にも、すでになられている方にも大いに参考になると思います。今日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
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