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こんにちは。データ活用によるDX推進を支援する「株式会社ブレインパッド」のDOORS編集部です。
デジタル技術の導入によってビジネスが大きく変われば、労働者に求められるスキル要件も変わってきます。
そこで、社内の人材が新たにデジタル技術を学び直し、DXに対応できるよう準備する取り組み、「リスキリング」が注目されています。
今回は、経済産業省が提言するリスキリングの意義や国内外の事例について紹介し、リスキリングに向けた仕組み作りのポイントを解説します。
まず、経済産業省の審議会で発表された資料では、リスキリング(reskilling)とは
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応して、必要なスキルを獲得する/させること」
リスキリングをめぐる 内外の状況について
と定義されています。
なぜ現代においてリスキリングが注目されるようになったのかというと、「DX」や「生成AI」の台頭による社会の劇的な変化が起きているからです。
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社会の変化はつまり、技術革新やビジネスモデルの急速な変化を意味します。このような状況下において、企業の従業員やビジネスマンは、時代の変化に適応したスキル習得が必須です。
企業がデジタル技術の力を取り入れ新たな価値を生み出し続けるには、従業員の能力・スキルを再開発するための組織的な仕組み作りが求められます。リスキリングがよく「DX人材育成」の文脈で用いられることが多いのは、このためです。
従業員も、自らの価値を生み出し続けるためにデジタル技術に関連した能力・スキル習得に積極的にならなければなりません。
ここまでを踏まえると、DX時代におけるリスキリングとは「成長産業や成長分野において仕事を進めるために必要なスキルを、改めて習得する(学びなおす)こと」と言えるでしょう
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また、リスキリングは「社会人の転職やキャリアアップの文脈」でも用いられる傾向にあります。2020年1月に開催された世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)の年次総会(ダボス会議)においても、WEFが「リスキリング革命」を推進すると表明したことで、欧米のみならず日本でも注目を集めるようになりました。
ここからは、リスキリングが国内全体で求められている理由を5つ解説します。
リスキリングが注目されている1つ目の理由は、労働者一人当たりの生産性向上が急務だからです。日本では現在、人口減少による労働力不足に拍車がかかっています。
総務省の令和4年版の情報通信白書を参照すると、2021年の労働者人口は7,450万人で、2050年の労働者人口は5,275万人まで減少すると解説されています。 つまり一人当たりの生産性が向上しない限り、国内の生産量は下降線を辿ることになります。
リスキリングによってITやデジタル技術に関連する新たなスキルを習得し、社会全体でのスキルアップ・生産性向上が求められるようになりました。
2つ目の理由は、DX人材の育成が課題としてよく挙げられているからです。
というのも、DXの推進には以下のような人材が必要です。
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しかし現在はこういったDX人材の不足が深刻化しており、戦略的に人材育成や確保を進められない企業は、DXを実現できないというリスクが高まっています。
外部からDX人材を確保することも可能ですが、DXはデジタルに対する理解力に加え「自社事業に関するドメイン知識や専門性」の掛け合わせによって初めて推進がなされます。つまり、自社事業に対する理解力のある内部人材のリスキリングの方が、外部リソースよりも好ましいとされる面もあるのです。
3つ目の理由は、成長と分配の好循環を目指す「新しい資本主義」によりリスキリングの重要性が高まってるからです。日本の賃上げを実現するための経済施策として、第101代内閣総理大臣・岸田文雄氏が「新しい資本主義」を掲げています。
【参考】内閣府の新しい資本主義ページ
この新しい資本主義による賃上げは「スキル」「成果」そして「転職」が必要であるために、労働者自らがスキルアップしやすい環境を構築する必要があると捉え、政府は「リスキリング支援」を見直す方針を立てているのです。
つまり、リスキリングを後押しする動きが社会全体でなされていることを意味し、リスキリングの重要性がより高まっていることがわかります。
4つ目の理由は、経済産業省もDXとリスキリングを推進する方針を掲げているからです。
2021年2月4日に第1回が開催された「デジタル時代の人材制作における検討会」は、2023年6月13日時点で第8回が開催されました。この検討会においては、デジタル活用が重要な現代において、どのようにデジタル人材を確保・育成・活用していくべきかの検討が重ねられています。
【参考】デジタル時代の人材政策に関する検討会 (METI/経済産業省)
また、人的資本経営を実現するための検討会について取りまとめた「人材版伊藤レポート2.0」の中でも、人的資本経営の実践に向けた人材戦略に必要な共通要素ひとつとして「リスキル・学び直し」が挙げられています。
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【参考】人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~ (案) 令和4年3月 経済産業省
上記の動きを見ても、政府の方針としてDX人材を育成する上でリスキリングが重要な位置づけであることがわかります。
5つ目は、「海外のリスキリングに対する注目度の高さ」です。
毎年1回行われている世界経済フォーラム年次会議(通称:ダボス会議)では、2018年1月から3年連続で「リスキル革命」といわれるセッションが開催されています。特に2020年1月のダボス会議では、第4次産業革命に対応するために「2030年までに全世界10億人をリスキリングすること」が宣言されました。
また、日本における動きとしては、2020年11月に経団連の提言する「。新成長戦略」の中でリスキリングの必要性について触れられています。
加えて、2022年10月には岸田首相の所信表明演説の中で「リスキリングの支援策の整備を2023年6月までに取りまとめる」「リスキリング支援に5年間で1兆円を投資する」ことが表明されました。
欧米諸国を中心とした海外企業と比較すると、日本企業のリスキリングへの取り組みは後れを取っていると言われています。今後、政府支援の拡充や重要性が認識されていけば、リスキリングに取り組む日本企業が少しずつ増えていくことが予想されています。
リスキリングと類似した概念として、「リカレント教育」や「生涯学習」などが挙げられます。どちらも、学校を卒業したあとに何かを新たに学ぶという意味は共通です。
ほかにもOJTやアンラーニング、アップスキリングなど、学習方法にはさまざまなものがあります。ここでは、5種類の学習方法とリスキリングの違いについて解説します。
リカレント教育とは、学校教育を終えた後も学習を続けて、必要が生じれば再び教育を受けるサイクルを繰り返す学習方法です。英語の「recurrent(循環する)」という言葉から生まれた手法であり、就労後でも再び学び直しの機会を得ることは重要であるという考え方です。
リカレント教育では「教育→就労→教育→……」のように、教育を受ける期間と就労する期間を繰り返すことが想定されているのに対し、リスキリングは基本的にある企業に属しながら新たなスキルの習得を目指すことが想定されている点に違いがあります。リスキリングは、職から離れて学びに専念するわけではありません。
企業内の教育プログラムとして、「OJT」(職場内で行われる教育訓練)が挙げられますが、OJTもリスキリングとは異なる概念になります。
OJTは既存の組織、既存の業務を前提としており、その中で既存の業務を行いながらスキルを身につけることを目指します。
一方、リスキリングは、既存の組織や業務を前提としておらず、社内には現存しないような仕事や、遂行するためのスキルを持つ人材が社内にいない仕事のスキル獲得を目指す取り組みです。
アンラーニングとは、すでに学習した知識やスキルの中で、現在は有効ではないものを捨て、代わりとなる新たな知識やスキルを習得する学習方法です。既存の手段や価値観に捉われることなく、新しいことを吸収したり、柔軟な思考ができたりする点がアンラーニングの強みです。
リスキリングは、新たな知識やスキルの取得に重点を置いています。一方のアンラーニングは、「学びほぐし」や「学習棄却」とも表現されるように、過去に得た知識やスキル、考え方を取捨選択することを重視しています。
アンラーニングとリスキリングをそれぞれ組み合わせることで、より効果的な学びを期待できます。
生涯学習とは、人が生涯にわたって学ぶことや生涯のさまざまな時期に行われる学習活動を指す言葉です。家庭や学校における教育だけではなく、ボランティアや文化活動、スポーツ活動なども全て生涯学習に含まれます。
リスキリングは、「仕事で役立つ知識やスキル」を習得することが目的で行われるのが一般的です。そのため、学習内容も業務に関連する内容に特化していることが多いといえます。
一方の生涯学習は、「豊かで充実した人生を送る」ことが学習目的です。この目的に照らし合わせると、生涯学習の学習内容は、仕事に関する内容だけでなく、より広範な内容が含まれます。
アップスキリングとは、IT技術に見られるような「変化の激しい知識やスキル」を身につけて、文字通り「スキルをアップ」する学習方法です。
IT技術の発展速度は目覚ましく、次々と新しいシステムやサービスが生まれています。そのため、業務に活用するためのIT知識やスキルも、よりスピーディーにレベルアップすることが求められています。
リスキリングは、現在の職種に限らず、「新しいことに挑戦する」学習方法です。そのため、さまざまな知識やスキルの獲得を目指します。
一方のアップスキリングは、現在の職種の中で新たな技術を学び、スキルを高めていくことを目指す「すでにもっている能力を向上させる」という学習方法となっています。
企業がリスキリングを導入するメリットとして、次の5点が挙げられます。
ここでは、5つのメリットについて詳しくみていきましょう。
社員のリスキリングによってDXが推進されると「作業の自動化」や「作業工数の削減」が実現可能です。作業を自動化することによって業務が効率化され、既存事業のさらなる拡大や新規事業開発にリソースを投資できるようになります。
また、作業工数を削減できれば、残業代の削減、社員のワークライフバランスの実現といった効果も期待できます。働き方改革が重視される中で、採用活動の魅力づけとしても有効なアピールになるでしょう。
リスキリングを通して新たな知識やスキルを習得することで、社員の視野が広がり、新規事業やイノベーションのような新しいアイデアが生まれる可能性が広がります。これまでになかったアイデアが生まれれば、新規事業の創出によって利益拡大や顧客満足度の向上につなげることも可能です。
新たに学んだ知識やスキルを業務に活かし、新規事業やイノベーションが社内から生まれる好循環を作り出すことができ、社内の活性化にもつながります。
DX人材のような専門性の高い人材は、他職種より採用が難しく、採用コストが高くなりやすい傾向にあります。したがって、リスキリングによってDX人材を社内で育成できれば「人材不足の解消」と「採用コストの削減」を同時に解決可能です。
DXの専門人材を社外から採用する場合、自社の業務を詳細に理解し、前職での経験を活かして希望通りの成果を出してもらえるかは、採用してみるまで不透明であることが多いものです。社内で人材を育成することができれば、このようなリスクを回避できます。
また、社内でDX人材を育成することによって、既存社員を育成するための企業文化の形成・維持にも役立てることが可能です。
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リスキリングが社内に浸透すると「将来を見据えて、新たな知識やスキルを獲得する」というモチベーションが社員の中で高まります。上司からの指示を待つのではなく、自ら考えて行動する人材が増えることによって、より主体的に業務に取り組む姿勢が社内全体に浸透します。
結果として「従業員満足度」や「従業員エンゲージメントの向上」にもつながり、意欲低下による退職率の低減や売上の向上など、さまざまなメリットを得ることが可能です。
既存社員をリスキリングの対象にすることによって、企業や業務内容への理解が深い人材を活用して、DX推進など新たな取り組みを進めることができるようになります。
社内の人材を活用すると、外部の人材を採用することで生じがちな、企業文化や社風とのミスマッチを起こりにくくすることが可能です。
社内の雰囲気を熟知している社員であれば、リスキリングによって新たに得た知識やスキルを、どのように業務に応用すれば良いのかを明確にイメージしやすいというメリットが得られるでしょう。同等のスキルを持つ外部人材を採用するよりも、スムーズに仕事を進められる可能性が高まります。
ではここからは、企業がリスキリングを進めるための「4つのステップ」を紹介します。
弊社ブレインパッドが実際に手掛けている人材育成やリスキリングに関連するプロジェクト事例を交えながら解説します。
リスキリングの仕組みが、自社に求められる人材要件を満たすものでなければ意味がありません。そのためにも、まずリスキリング対象が「どのような部署の、どのような従業員なのか」を定めることが重要です。
例として三菱UFJ銀行様の事例を紹介します。
三菱UFJ銀行様は「グループ行員によるデータ活用の文化が浸透していない」という課題に基づき、データ活用・分析に関わる部署・担当者の業務内容をヒアリングし、そこから逆引きする形で「データ分析や統計学の基礎を習得するためのコンテンツ」を開発しました。
現場のデータ活用ニーズをもとに、求められるスキル群と受講ターゲットとなる対象者を明確化することが、成否を分ける鍵のひとつです。
【関連記事】『ブレインパッドのデータ活用人材育成サービス』事例ダウンロード_三菱UFJ銀行様が取り組む、企業にとっての真のデータ活用とは?
求められるスキルと対象となる社員および組織を明確にした後は、リスキリングの具体的な教育プログラムを考える必要があります。教育プログラムを考えるにあたって、次の3つの要素が重要になります。
When、What、Howの3つの要素をよく検討しながら、効果的な教育プログラムを策定しましょう。
実施時期については、リスキリング実施の緊急度や、業務の忙しさなどを考慮して決定していくことが大切です。学習内容は、自社で必要としているスキルを習得するために、どのような知識が必要になるのかを逆算して考えると良いでしょう。
リスキリングにおいて知識を習得する過程で、「Aの内容を理解するためには、前提としてBという知識が必要になる場合もある」という状況に置かれる場合もあります。そのため、教育プログラムの構成や学習の順番についても、慎重に検討することが求められます。
デジタルスキルは、業界や職種などを問わず共通する部分も多く、全てのリスキリング用コンテンツを社内で開発するのは非効率であると考えられます。社外のコンテンツや専門家を活用した方が、費用と時間の節約につながりやすいケースもあるのです。
もちろん、社外から講師を招いたりコンテンツを調達したりする場合、それらの選定やコスト、企業文化や業務フローなどの認識合わせなど、利用者側の意図通りに研修が進まないリスクもあります。社外のリソースやサービスを利用するにしても、課題設定や施策への落とし込み、座学のみならず実践力を養うプログラム作りなど、さまざまな課題に柔軟かつ迅速に対応してくれる信頼できるパートナー企業選びも非常に重要です。
リスキリングは、1回きりではなく継続して行うことが大切です。リスキリングの必要性を社員に示してモチベーションをかき立てつつ、リスキリングプログラムへのフィードバックをしてもらいながら改善を図っていくことも企業としては必要です。
ブレインパッドのデータ活用人材育成サービスでも、受講後アンケートや人事部の研修担当者へのヒアリングを通じてサービス改善を常に行っています。三菱UFJ銀行様の事例でも、受講後アンケートの要望をもとに、学習理解度や利用ニーズに合わせて、より現場の業務に活かしやすいものに改善を行いました。
リスキリング導入時に注意したいポイントとして、リスキリングの重要性を浸透させることや、継続的に取り組みやすい仕組み作りなどが考えられます。また、必要に応じてアウトソーシングなどの社外のリソースも積極的に活用し、専門知識を取り入れることも大切です。
ここでは、リスキリング導入時に押さえておきたい3つのポイントについて解説します。
リスキリングを導入する際は、社員に対して「なぜリスキリングが重要なのか」を伝えることが重要です。
「自分の仕事には関係ない」「今の仕事で精一杯で勉強する時間なんてない」といったように、リスキリングに対して抵抗を感じる社員がいることも考えられるからです。
企業にとってリスキリングが重要な取り組みであっても、実際に取り組むのは社員自身のためであり、リスキリングを成功させるためには全社員の理解が欠かせません。
本格的に実施する前に、リスキリングのメリットや重要性を説明し、社員間でリスキリングの重要性を認識してもらうことが大切です。全社的にリスキリングを浸透させるためには、リスキリングに取り組む社員以外の協力体制の構築も必要です。
リスキリングを社内に根づかせるためには、単発の取り組みではなく、継続的な取り組みであることを考慮した仕組み作りも重要になります。
社員の学習モチベーションを維持するためには、下記のような仕組みの構築がおすすめです。
一方的に「リスキリングに取り組みなさい」と命じるだけでは、社員のモチベーションを維持することは難しくなります。上記のような施策も交えながら、モチベーション維持・向上に努めましょう。
リスキリングで使用するコンテンツやプログラムは、必ずしも自社で内製する必要はありません。必要に応じてアウトソーシングで社外のリソースも活用すると、より効果的な学習体制を構築できます。
社外のリソースを活用することには、社内で教育プログラムを開発する時間がかからず、完成品のクオリティも担保されるというメリットがあります。場合によっては、自社だけで取り組むよりも全体コストを抑えられる可能性もあるでしょう。
特にDXのようなデジタルスキルは、社内外で共通する部分が多いため、社外リソースを活用する方が費用と時間の節約になる可能性が高くなっています。
リスキリングの意味や取り組む意義・必要性について整理したところで、ここからは日本国内における企業・従業員のリスキリングの実施状況についてまとめます。
2023年のビズリーチの調査では、308社を対象に「リスキリングに取り組んでいるかどうか」を調査しました。結果として、取り組んでいると答えた企業は全体の26.3%となっています。
従業員5,000以上の企業では48.9%と高い数字になっているものの、50名未満の企業では12.2%となっており、企業規模が小さいほどリスキリングの実施に取り組めていないという結果になりました。
2023年のビズリーチの629人を対象とした調査結果によると、企業と個人で大きな意識の乖離があるといえます。たとえば、 個人でのアンケートでは、629人の個人のうち67.6%はすでにリスキリングに取り組んでいますが、308企業のうち企業としてリスキリングに取り組んでいるのは26.3%程度でした。
また、「新しいスキルを身につける必要があると感じている」人材の割合は全体で95%となっています。年代別に分けてみると以下のとおりです。
高齢であるほどリスキリングに対する意識が低下しているものの、全世代を通して「新しいスキルを身につけなければならない」という意識をもつ人材が多い状況にあります。
リスキリングにおいて、企業が自社の社員に身に付けてほしいスキルには以下が挙げられます。
プロジェクトマネジメントが48.7%となっており、データ解析・分析の46.1%を越えています。データ解析や分析の知識を踏まえたうえで、あらゆるプロジェクトを円滑に進めるための意思決定やコミュニケーション、進捗管理を行える人材を企業は求めているといえるでしょう。
人材に対して、DXにおける変化やデジタル化による業務の変化も含めて、意思決定に関わるような提案や行動力を身につけてほしいという希望もあるといえます。
ここからは、リスキリングを全社展開した具体的な事例をご紹介します。弊社ブレインパッドが伴走させていただいた事例もいくつかありますので、よりリアルで解像度の高い情報をお届けできるかと思います。
アサヒグループジャパン株式会社様は、「DXとはBX(ビジネストランスフォーメーション)である」という考え方のもとに「クリエイティブ・ビジネス企画」コースと「ビジネス・アナリスト」コースの2種類の人材育成プログラムを立ち上げました。
データサイエンティストなどのデータ活用を担える人材も重要ですが、同社ではデジタルとビジネスを結ぶための「コーディネーター」の役割を担える人材が不足しているためです。
受講希望者を募集したところ、想定の2.5倍以上となる536人が申し込み、全員に対してプログラムの受講を促すこととなりました。
【関連記事】熱意を持った社員を育成し、新たな価値を創出:アサヒグループの挑戦
株式会社ゆうちょ銀行様は「データ分析組織の醸成が重要である」と考えており、2021年からデータ分析を行う人材の育成を行っています。対象は営業部門であり、営業部門の全部署から育成対象を選んで、専門のプロジェクトチームを発足し、育成にあたっている状況です。
データサイエンティストのを育成する上で、初級・中級・上級の3つのレベルに分けて育成目標を設定しており、2021年度は初級7名、中級3名の人材育成に成功しています。今後はさらにデータ活用を進め、データドリブンな企業文化の醸成を目指しています。
【関連記事】【前編】ゆうちょ銀行と語る「データドリブンな企業文化の醸成」の今と未来 DX
【関連記事】【DX事例】ゆうちょ銀行が考える、データドリブン文化醸成に必要な「インフルエンサー」~DOORS -BrainPad DX Conference- 2023 テーマ別 企業DX対談~
株式会社日立製作所様は、2019年からデジタル教育に力を入れており、グループ内の3つの研修機関を統合してデジタル人材を育成する「日立アカデミー」を同年4月に設立しました。
2022年10月には人工知能(AI)を活用し、リスキリングを促すための学習体験プラットフォーム(LXP)をグループ全体で導入しています。
参考:自分のキャリアを自分でつくる。 学びをもっと身近に、LXPによる新しい学習体験。
LXPでは、リンクトインが提供する1万6,000種類もの講座や、英語を含む10言語の学習プログラムを受講可能です。
株式会社富士通では「IT企業からDX企業」というスローガンを提唱し、2020年から5年間で5,000億円ものDX投資を行っています。その中でも重要な施策のひとつとして「リスキリング」を打ち出しています。
同社では、2020年4月にグループ会社が提供する学習システムの「FLX(Fujitsu Learning Experience)」を大幅リニューアルし、社員の自律的な学びを促す仕組みを構築しました。
2023年3月にはシステムインテグレーター(Sler)を中心に、IT技術者への戦略的なリスキリング支援と人材育成の仕組み作りを強化するための業務提携を発表するなど、積極的なリスキリング施策を展開しています。
AT&Tは、業界の先駆けとして、2013年からリスキリングプログラムを開始しています。2020年までにリスキリング施策に10億ドルを投じており、延べ10万人のリスキリングを実施しました。
同社では、企業側から社員に対して今後必要となるスキルを提示し、社員が自身の現在のスキルと比較した上で、不足しているスキルを認識してリスキリングに取り組む流れを構築しました。結果として、社内で不足していた技術職の80%を社内の異動で充足させることに成功しています。
リスキリングに参加した従業員は、参加していない社員と比べて平均1.1倍ほど高い評価を受け、1.7倍昇進し、離職率は1.6倍低いという結果が出ています。
Amazonでは、2025年までに米Amazonの従業員10万人を対象として、リスキリングを実施すると発表しています。この施策における、1人あたりの投資額は日本円に換算して約75万円と非常に高額です。
非技術系の人材を技術職へ移行させるための「アマゾン・テクニカル・アカデミー」や、IT系エンジニアがAIなどの高度スキルを獲得するための「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」など、デジタル技術のリスキリングに注力しています。
ウォルマートでは、VR(仮想現実)を活用して、ブラックフライデーなどのイベントや災害対応などを擬似的に体験し、経験を積む研修施策を実施しています。
VRで用意したバーチャル空間の中で接客を行い、販売に必要な機械操作をバーチャルに学んだり、DXに対応できるスキルを持った店舗従業員を育成したりすることに役立てたいと考えています。
この研修のために用意された一体型VRヘッドセットOculus Goは約17,000台で、100万人ものスタッフにVRトレーニングを行うことが可能となっています。
ここまでは企業単位におけるリスキリング事例をご紹介いたしました。しかし、リスキリングは企業活動だけの取り組みではありません。ビジネスパーソン個々人からも自発的に取り組んでいかなければならないのがリスキリングです。
そこでここからは、個人におけるリスキリング事例に触れます。弊社ブレインパッドの社員から、
をそれぞれインタビューしましたので、その概要をご紹介します。個人におけるリスキリングの具体例を知ることで、リスキリングを見据えたキャリアステップのイメージを膨らませることができるでしょう。
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【社員が解説】データサイエンティストとは?仕事内容やAI・DX時代に必要なスキル
ブレインパッドでデータサイエンティストとして働く中山さんの前職は、公認会計士でした。リスキリングを実施したきっかけは次のような理由です。
・個人として、新しい分野へのチャレンジがしたくなった
・世の中として、ディープラーニングやデータサイエンティストという言葉を聞くようになった
・会社として、不正取引をデータで分析するという取組みをしていた(部署移動)
中山さんは「ビジネスにおいてより多くの経済的価値を生み出せるようなデータサイエンティストを目指して日々努力したい」という目標を掲げ、業務に取り組んでいます。
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【シリーズ】リスキリング×データサイエンティスト CASE1:中山英樹
ブレインパッドでデータサイエンティストとして働く中道さんの前職は、SIerのITエンジニアでした。データサイエンティストになるためのリスキリングを実施したきっかけは次のような理由です。
・システム開発ではなくデータ分析による価値提供に興味があった
・専門知識を有し、実務経験を積める環境を探していた
・データ分析の結果をビジネス価値創出や社会貢献につなげたかった
中道さんは「自分自身の技術を磨くよりも、自分の持つ技術・能力で社会に貢献すること」を目的として、業務に取り組んでいる状況です。
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【シリーズ】リスキリング×データサイエンティスト CASE2:中道亮介
経済産業省では、「リスキリングと労働移動の円滑化を一体的に進める観点」から、「キャリア相談対応」「リスキリング提供」「転職支援」までの実施体制を整備した、「キャリアアップ支援事業」を推し進めています。
実際に転職を検討する個人が、キャリアコンサルタント等の民間の専門家にキャリア相談を無料でできるなど、リスキリングに取り組むビジネスパーソンを後押しする取り組みが進められています。
2023年10月31日、日本リスキリングコンソーシアムが主催したイベント、「Reskilling for Japan 2023」の開催にあたり、ビデオメッセージ内で「人の底力を高めるリスキリングは、日本にとって更なる経済成長の鍵であると確信」していると述べ、「今後3年間を変革期間として、リスキリングによる能力向上支援を含めた三位一体の労働市場改革に集中的に取り組」むと宣言しました。
2023年10月31日、日本経済新聞社が主催したイベント、「日経リスキリングサミット2023」の開催にあたり、ビデオメッセージ内で「世界が大きく変わりつつある中で、これは政府のやること、これは企業のやることという従来型の二分法では対応しきれなくなってきた」との認識を示しました。また、「5年1兆円の人への投資の政策パッケージを活用した、新たな時代に合わせた学び直しを行うリスキリング、日本型の職務給の導入、成長分野への円滑な労働移動、この3つを三位一体の労働市場改革として進めていく」ことを、再度強調しました。
DXの重要性がより注目されるようになった今、人材育成に対する課題意識を持つ企業が増えています。リスキリングが単なるOJTや学び直しとは異なる概念であることを理解しつつ、自社の社員に求められるスキル要件を洗い出し、外部リソースをうまく使ってリスキリングのための仕組み作りを、企業は迅速に進める必要があります。特に これから本格的にDXに取り組む企業にとって、このリスキリングの実行精度が、DX実現および継続的な変革の成否を分けると言っても過言ではないのです。
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