DOORS DX

ベストなDXへの入り口が
見つかるメディア

【シリーズ】マーケティングDXの現在地 Vol.1 そもそも、マーケティングDXとは

公開日
2022.11.16
更新日
2024.06.04

近年「マーケティングDX」という言葉がトレンドになっています。実際に、マーケティング施策を検討する場合、顧客体験の向上面であらゆるデータを参照するといった動きがより重要性を増しています。

そこで、現場で最前線を走っているマーケターの方々をお招きし、抱えている課題や悩みの解決法など、マーケティングDXを進めていくためのTIPS(ヒント)をお話ししていくシリーズ「マーケティングDXの現在地」を企画しました。

連載記事

本記事では、株式会社ブレインパッド 執行役員CMO(Chief Marketing Officer) マーケティング本部長 近藤嘉恒と、楽天グループ株式会社に在籍し、その後、旅行代理店のゆこゆこホールディングス株式会社にジョインし、マーケティング責任者として、同社のマーケティングDXをリードした株式会社ブレインパッド マーケティング本部 小堺秀真による対談形式で、本シリーズの主題となる「マーケティングDX」とはそもそも何かについてディスカッションし、本シリーズの今後の展望についてお話します。

※対談全文は動画でもご覧いただけます。

■登壇者

  • 近藤嘉恒
    株式会社ブレインパッド 執行役員CMO マーケティング本部長

法政大学経営学部卒業。株式会社オービックに入社し、ERPシステムの営業職を経てマーケティング組織の新設に携わる。その後、エイケアシステムズ株式会社(現:チーターデジタル株式会社 | エンバーポイント株式会社)にて営業・マーケティングを統括。2016年7月にブレインパッドに参画し、主力プロダクト「Rtoaster」の責任者として事業統括、市場シェア拡大を牽引。2019年7月よりマーケティング部門を統括し、全社のブランディング・プロモーション活動を指揮する。2022年10月より現職。

  • 小堺秀真
    株式会社ブレインパッド マーケティング本部

TV番組制作会社に新卒入社。放送作家、取材作家として複数の番組を担当後、IT業界に可能性を感じ、転身。株式会社サイバードでモバイルコンテンツ事業を、楽天グループ株式会社で楽天市場事業、編成部、コンテンツ事業にて デジタルマーケ、コンテンツ開発、CRM、経営企画を約8年間担当。その後、JCOM株式会社にて事業企画、新規事業開発、ゆこゆこホールディングス株式会社ではマーケティング責任者として、800万会員向けマーケティング戦略実行を担当。2022年7月よりブレインパッドにジョイン。

関連する資料ダウンロードはこちら

全4社の事例とDXリーダーの「格言」を収録。保存・配布に便利なリーフレット!

本記事の登場人物
  • 経営
    近藤 嘉恒
    YOSHITSUNE KONDO
    会社
    株式会社ブレインパッド
    役職
    執行役員 CMO(Chief Marketing Officer)|DXメディア「DOORS」編集長
    2016年7月に、データ分析企業のブレインパッドに参画し、主プロダクト「Rtoaster」の事業統括を牽引。2019年7月に、分析・基盤構築・SaaS全ケイパビリティを束ねたマーケティング部門を立上げ、全社ブランディング・プロモーション戦略活動を指揮。 2023年7月より現職。外交活動を中心に国内大手企業のCxOたちと議論を重ね、「データ活用の日常化」を目指し、啓蒙活動を行う。 当メディアの編集長として、DXに纏わるニュース、トレンド記事やお役立ち資料の編集を担当。
  • マーケター
    小堺 秀真
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    XaaSユニット
    役職
    マネジャー
    TV番組制作会社に新卒入社。放送作家、取材作家として複数の番組を担当後、IT業界に可能性を感じ、転身。株式会社サイバードでモバイルコンテンツ事業を、楽天グループ株式会社で楽天市場事業、編成部、コンテンツ事業にて デジタルマーケ、コンテンツ開発、CRM、経営企画を約8年間担当。その後、JCOM株式会社にて事業企画、新規事業開発、ゆこゆこホールディングス株式会社ではマーケティング責任者として、800万会員向けマーケティング戦略実行を担当。2022年7月よりブレインパッドにジョイン。

マーケティングDXとは

写真左から、近藤嘉恒・小堺秀真

株式会社ブレインパッド・近藤嘉恒(以下、近藤) 「マーケティングDXの現在地」をテーマとした本シリーズでは、現場で最前線を走っているマーケターの方をお招きし、抱えている課題や悩みの解決法など、マーケティングDXを進めていくためのTIPS(ヒント)をお話ししていく予定です。

今回はその第一弾として、今秋ブレインパッドに入社された小堺さんと彼のキャリアを振り返りながら「そもそも、マーケティングDXとは何か」についてお話ししていけたらと思います。

小堺さんは、楽天グループ株式会社(以下、楽天)で長年Eコマースの最前線を走り続け、その後、旅行代理店のゆこゆこホールディングス株式会社(以下、ゆこゆこ)ではブレインパッドが提供するレコメンドエンジン「Rtoaster」の運用やデータ分析を共に行い、データドリブンマーケティングを推進してこられました。

では、小堺さんよろしくお願いいたします。

株式会社ブレインパッド・小堺秀真(以下、小堺) この度、ご縁をいただきブレインパッドに入社した小堺です。どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社ブレインパッド マーケティング本部
小堺秀真

今まではマーケティングコマースでBtoCの業務を行ってきました。そのうえで、BtoBの業界に飛び込んだので、事業会社側の目線、エンドユーザーの目線を持ちながら、マーケティングやDXやデータ活用に関するテーマについて取り組んでいきたいと思います。

近藤 小堺さんはこれまではマーケターとして、マーケティングツールを使用・推進されてきました。ある意味マーケティングDXの肌感を身近な所で経験してきた人ですよね。

そうしたキャリアもふまえ、今日は、小堺さんの過去と現在を通してマーケティングDXについてお話ししていきたいと思います。では、小堺さんが考えるマーケティングDXとはどういったものでしょうか?

小堺 マーケティングDXは、アナログで行ってきたマーケティングをシステム化・構造化したうえで、再現性のあるマーケティングプロセスを作ることだと考えています。顧客に対するアウトプットの合理化・効率化だけでなく、運用面も検討する必要があります。

近藤 構造化と再現性は私も大切だと思います。そのうえで、マーケティングプロセスも含めたデジタル活用は、顧客に対してはCX(Customer Experience:顧客体験)を高め追求していく動き、社内に対しては持続可能な仕組みを作っていくためのEX(Employee Experience:従業員体験)を高めていく動きがポイントだと感じていますね。

これは、顧客体験だけでなく、従業員体験を向上させるきっかけを作るのがマーケティングDXの推進に大切な要素であるということを示したものです。

株式会社ブレインパッド 執行役員CMO
マーケティング本部長
近藤嘉恒

DXを推進する際はCXを改善することに目が行きがちです。しかし、実際は社内プロセス改革や人材育成など、EXにも目を向けなければなりません。様々な属人的行為をデジタルやデータの力で代替えし、業務負荷の低減を実現する必要があるためです。

そして、生み出した時間を「施策アイディア」の検討に充てることが事業会社と支援会社で目指していくべきマーケティングDXの形だと思いますね。小堺さんはどのように感じられますか?

小堺 マーケティング責任者としての最優先事項はCXの向上ですね。しかし、仕組み化・構造化が進んだとしても施策を実行するのは人間です。そのため、施策を実行する側のモチベーションや体験も追及していく必要があります。

ですから、CXと従業員が働いて得るすべての経験・体験を表すEXがマーケティングDX推進に大切なポイントだと私も感じますね。 

「売上・客数予測による販促計画策定」など5つの成功事例を収録

トランスフォーメーションのこれまで

近藤 マーケティングDXは最近のトレンドです。しかし、楽天でも2011年には前例のないガラケーへのデジタル対応を行い、「デジタルの限界をどのように越えていくのか」という意味でトランスフォーメーションしていたと感じています。

小堺 2011年は、「メールマーケティングのリッチ化」を掲げたプロジェクトのもと、ガラケーが進化してお客さんに伝えられる情報量がハード的に増えていく中で、より良い顧客体験を「楽天」という企業で一気に実現させるというミッションを与えられていましたね。

2013年にはiPhoneが日本で販売開始され、一気に全社対応を行う必要がありました。業務の組み込み方を変え、CXという面で言えばスマホ対応によって顧客への接し方も変わったことを覚えています。

iPhoneが発売されるというトレンドの中で、楽天には「とにかく最先端のことを最初にやらないとダメ」といった、ベンチャー精神を持って行動するファーストペンギンの文化がありました。常にスピードを求められており、「世の中にあれば使う。なければ自社で作る」という会社だったため、とにかく事象を調べ追いつき、把握・再現する必要がありましたね。

このときは、「顧客満足の最大化」と「スピード」という観点から、お客様のニーズに対して「とにかくすぐに・満足度高く・アウトプットしていく」、ということに条件反射的に対応していました。いま振り返ると、この考え方がプロジェクトに関わっていた人たちのEXを満たしていたということですね。

「顧客に対する最適な施策が何か」を考えるうえで、マーケティング自体をシステム的に考えるようになっていきました。結果として、「対人」と「対デバイス」をパーソナライズしていくということを、その後10年取り組んできました。

また、スピードを優先するだけでなく、顧客満足も同様に向上させ合理化する必要があります。そうして、CXのトランスフォーメーションとマインドのトランスフォーメーションが出来上がっていったと感じています。

最先端の技術に対応し、世の中の通例となったときに結果をみて、改善するといった、マーケターが行うプロセスを自ずと体感してきたといえます。

近藤 私も楽天に対しては、当時から顧客にとって最適なものを届けるというマインドと「変わる」「変える」ことに対してポジティブな印象がありました。また、マインドが醸成されているため、リソースやコストを確保して取り組んでいるように感じました。

小堺 楽天として新しい取り組みをすることは、コストではなく資産形成につながっていると感じています。ファーストペンギンとなる価値を大切にしている印象でしたね。企業はアーリーアダプターやイノベーターとなる人たちに対して、「トレンド」を上回る価値を提供する必要があると思っています。


リソースの限界とツールによる最適化

近藤 企業が迅速にキャッチアップして、どれだけ早く行動できるかは大切ですよね。楽天はマーケティングDXを体現しており、CXを実現するために、社員が努力してEXを作ってきたという文化があると感じました。

積極的にチャレンジしてきた経験に加え、楽天には資本とリソースだけでなく、実現する社員の能力がありました。では、楽天で構造化と再現性、マインドとしてチャレンジすることの日常化を学んだうえで、ゆこゆこではどのような感覚をもたれましたか?

小堺 構造化と再現性という点にどうしても壁がありました。例えば、費用対効果、専門人材の採用の面、リソース面などですね。そのため、デジタル文脈で取組みを推進する為に私がジョインしたという流れです。

ただ、組織として変えるために必要な取り組みを検討する部分には苦労しました。「限られたリソースの中でどのように効果を最大化するか」を考えなければならず、そういった課題をクリアするために、近藤さんにお声掛けしました。

近藤 マーケティングDXのポイントとしても、「有限なリソースの中でどのように変化させていくのか」、「段階的に変えたあとの仕組み・取り組み」はやりがいがあふれる部分ですね。

小堺 最終的には、運用面で仕組み化する必要があります。また、元々あったものと同じでは意味がないため、DXによって今できる選択肢を増やし、再現性を担保しつつ、仕組み化することがポイントになると思います。

近藤 そのために「Rtoaster」を2017年8月に採用したという流れですね。当時は、どのように構造化・再現性を担保していくのかが課題だったかと思います。「Rtoaster」を用いて、限られたリソースの中で実現できることを共に考えたことが記憶に残っていますね。結果として、ブレインパッドのケイパビリティを駆使し、マーケティングDXにつながったと感じました。

小堺 顧客に対して最適なものを提案する点に苦心していました。しかし、「Rtoaster」を活用すれば、可視化されたパーソナライズを運用できます。その点が「Rtoaster」を採用した大きな理由ですね。

CXの部分では、ゆこゆこらしいパーソナライズを考え抜き、実装していくことを目標に「温泉地レコメンド」を作りました。単純な人に対する出し分けのみでなく、商品マスタと購入データを掛け合わせて「エモさ」をテーマに顧客体験を提供できた点は良い経験だったと感じています。

近藤 EXの部分では、「自動化」が最初の課題だったことを覚えています。従業員のリソースが有限であるだけでなく、念頭に置くものとしても「エモさ」や「人が考えるクリエイティブ性」を優先したいというニーズでした。

そして、代替手段として、「Rtoaster」を使いこなすことにクリエイティブが求められるという結論になりましたね。

小堺 楽天との大きな違いは、人的リソースです。しかし、限られたリソースの中で効率を上げ、効果を最適にしていく必要がありました。そのうえで、EXを向上させるためのツールによる自動化、「顧客への最善の体験をどのように提供するか」にリソースを割くための仕組みづくりを「Rtoaster」で解決できました。

この体験は私の中でキーポイントになりましたね。楽天の時とは違った目線でオンライン・オフラインの組み合わせを実現し、データ活用を紙媒体に活かすなどの発信もできました。

仕組み化と再現性

近藤 お話を聞いて、「マーケティングDXとは」というテーマが小堺さんのマーケティング組織の考え方にもつながると感じました。マーケターはクリエイティブやCXにリソースを使い、組織の構造的なシステムとIT的なツールを組み合わせ、「マーケティングをシステム化」していく点がポイントになりますね。

CXとEXを向上させてマーケティングDXを推進する行動が、再現性のあるマーケティングプロセスを構造化して作っていくことにつながっていますね。

小堺 事業会社は運用を止められない中で効果を最大化していかなければなりません。マーケティングを横と縦の比率を守りつつ、面積を拡大していく作業だと仮定した場合、マーケティングDXによってどのように面積を効率的に拡大できるかに力を注いできた10年だったと感じました。

そのなかで、近藤さんのお話にもあったように、正しくデータを使い、テクノロジーをフル活用して、再現性のあるマーケティングを実現するという点に共感しています。

実際に、私がやってきたことをまとめると、「顧客とデバイスの壁を改善するために分解し、システムと連携しながら新しいイノベーションを考え、より良い形にしていく」というものでした。

それは顧客とデバイスのパーソナライズであり、人を巻き込むことでマーケ人材を増やせたことから、EXの観点でもマーケティングDXを進められたと思っています。

今後の本シリーズ

近藤 マーケティングという言葉は非常に広い意味がありますよね。戦略・戦術・施策まで多種多様なテーマがあるため、第2弾、第3弾と続いていく予定ですが、今小堺さんが想像するTIPSはどのようなものがありますか?

小堺 どのようにして人を育てていくのかというところですね。マーケティングDXを体感したうえでどのようにして再現性を持たせるのかといった、マーケティング組織や人材育成は気になるTIPSです。

また、機械学習・深層学習などについてより詳しくお話を聞いてみたいと感じています。テーマとしては、マーケティング×データ分析、マーケティング×AIなどがいいと思います。

ECではリプレイスが発生し、その度にソリューションも含めマーケターが試行錯誤します。そのポイントや運用をスムーズにするTIPSも聞いていきたいですね。

近藤 EC業界では、現在リプレイスの嵐といっても過言ではない状況です。しかし、実は複数回経験している方は少ないといえます。そのため、私もそういった経験がある方に実状をお聞きしたいですね。

視点を変えて、マーケティング部門の方をお呼びするだけでなく、場合によっては情報システム部門の方をお呼びして「マーケティング部門との付き合い方」などもお聞きしたいと思っています。

また、今後のTIPSのイメージは、

・OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの統合)
・ツール選定の基準・システム部門との折衝
・ECサイトリニューアルを成功に導くプロセス
・デジタル人材の育成方法
・マーケ部門におけるデータ分析
・機械学習

などのテーマを考えております。実践しているマーケターの方々と共に読み解き、マーケティングを今から実施する際に参考になる方法などを探していきたいと思います。

また、次回からは小堺さんがモデレーターとしてフル回転されるので、よろしくお願いします!(笑)

小堺 頑張ります!

【シリーズ】マーケティングのDXの現在地

関連記事

【前編】DX実現ツールとしてのMA❝らしい❞使い方
【後編】DX実現ツールとしてのMA❝らしい❞使い方
嗜好性レコメンドの裏側 ~❝感性❞をデータ化し、マーケティングに活かすために必要なこと~

この記事の続きはこちら
【シリーズ】マーケティングDXの現在地Vol.2「マーケティング×データ分析」の実践方法



このページをシェアする

株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

メールマガジン

Mail Magazine