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【シリーズ】経営者の隣にデータサイエンスを。Vol.5 「DX疲れ」を解消し、前向きな変革を 共創型のデータサイエンスで顧客を支援する

公開日
2022.09.27
更新日
2024.06.12

※本記事は、「日経ビジネス」に掲載された同内容の記事を、媒体社の許可を得て転載したものです。

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ONB/21/brainpad1210/vol5/

新型コロナウイルスのパンデミック以降も、様々な環境変化が起こっている2020年代。緊迫する国際情勢や気候変動など、先行きが見えにくい状況で、企業経営の舵取りはかつてないほど難しくなっている。そんな中、意思決定の精度を上げるために不可欠なのがデータだ。本企画で紹介した3件のユーザー事例を振り返りつつ、日本のDXの現状と求められるデータ活用戦略、ESGをふまえた今後の展望について、ブレインパッドのキーパーソンに聞いた。

※所属部署・役職は取材当時のものです。

本記事の登場人物
  • 経営
    高橋 隆史(旧姓:草野)
    会社
    株式会社ブレインパッド
    役職
    取締役会長 Co-Founder
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。新卒として日本サン・マイクロシステムズ株式会社(現:日本オラクル株式会社)に入社。その後、フリービット・ドットコム株式会社(現:フリービット株式会社)の起業参画を経て、日本企業のデータ活用を支援するべく2004年3月に佐藤とともにブレインパッドを共同創業。代表取締役社長として、2011年9月に東証マザーズ、2013年には東証一部上場を成し遂げる。 現在、一般社団法人データサイエンティスト協会代表理事、一般社団法人日本ディープラーニング協会理事、東京大学エクステション株式会社社外取締役を務める他、官公庁による各種研究・委員会活動等に識者として参画する等、データ活用促進のためさまざまな対外活動にも従事。2023年7月より取締役会長に就任(現職)。
  • 経営
    関口 朋宏
    会社
    株式会社ブレインパッド
    役職
    代表取締役社長 CEO
    早稲田大学理工学部卒業。アクセンチュア株式会社に入社後、戦略コンサルタントとしてさまざまな業界の事業戦略、大規模な組織再編、人事戦略の立案・実行を支援。2017年4月にブレインパッドに参画し、ビジネス・コンサルティング組織の立ち上げを行い、収益拡大を牽引。2019年9月より取締役に就任し、大手企業との資本業務提携や大規模プロジェクトの実行責任者を務めると共に、2021年からはプロダクト事業を統括し、株式会社TimeTechnologiesの子会社化を推進。2023年7月、創業者2名より経営を承継し、代表取締役社長CEOに就任(現職)。

「未来をつくる前向きな取り組み」としてDXを捉える

DXという言葉を聞いたことがない企業経営者は少ないだろう。しかし、先進的な取り組みを展開する企業はまだ少数で、多くの企業が思うような成果につなげられていない。データサイエンスのプロ集団であるブレインパッドは、このような日本企業の現状をどう見ているのか。

「一口にDXといっても、やるべきことは企業ごとに異なります。自社のデジタル化の進捗や、ビジネスを取り巻く環境に合わせて、何をどう変化させていくか。これをしっかり考えなければ、単に他社事例を模倣しても成功できません。それが思うような成果につながらない一因ではないでしょうか」と同社の草野 隆史氏は言う。

草野 隆史氏
株式会社ブレインパッド 代表取締役社長
草野 隆史氏
※所属部署・役職は取材当時のものです。

このような状況で起こっているのが「DX疲れ」だ。意気込んでDXに取り組んだものの、PoC(概念実証)止まり、あるいは現場に実装しても大きなビジネス成果を生み出せずにいる。そのため現場の士気が上がらず、取り組みを持続できない。そうした悪循環の中、焦燥感や無力感に駆られる企業経営者が増えているという。

「そもそも日本では、DXレポートによって、『2025年』がDXの期限となった感があります。時間制限があり、さらに少子高齢化、マーケットの縮小などの課題がある中で、『どうすればこの危機を脱することができるか』という文脈でDXが語られる。このようなムードでは、なかなかポジティブなアイデアは生まれないでしょう」と同社の関口 朋宏氏は指摘する。本来は未来をつくる前向きな取り組みであるはずのDXが、取り組まなければならない課題になっている。これではDX疲れが起こるのも無理はないだろう。

関口 朋宏氏
株式会社ブレインパッド 取締役
ビジネス統括本部・プロダクトビジネス本部管掌
関口 朋宏氏
※所属部署・役職は取材当時のものです。

大事なのは、今一度DXの本質に立ち返ることである。いわば「危機感主導型」から、「動機主導型」への転換を図るのだ。自社のビジョン/ミッション/パーパスを軸に、未来に向かって何をすべきか考える。「DX=ポジティブに価値創造を考える」というマインドを醸成することが、今の日本企業に求められている。

「特に、大手企業がそのようなマインドを獲得することの意義は大きいと思います」と草野氏。例えば、日本の基幹産業である製造業では、大手を中心とした巨大なサプライチェーンが形成されている。ここに動機主導型DXの機運が生まれれば、取引先企業や顧客企業、そして関連するほかの市場へと影響が伝播し、日本全体のDXを加速できる可能性があるからだ。

既に本連載で紹介してきたトヨタ自動車、伊藤忠商事、りそなホールディングスは、まさにそのような形でポジティブな世界観を目指した取り組みを推進する企業の例といえる。例えば、トヨタ自動車のマテリアル・インフォマティクス事業は、製造業全体を視野に入れている。様々な産業に関わる総合商社の伊藤忠商事は、DXによってサプライチェーンを含む産業構造の変革を目指している。そしてりそなホールディングスは、地銀との連携強化による地方創生を重要テーマの1つに設定している。

「いずれの企業も、『トランスフォーム(変態)』という言葉の意味を深く考え、マーケットや社会をどう動かすかを含めてビジネス変革に挑んでいます。このような外向きの視点があるからこそ、強力な変革への推進力を生み出せるのではないでしょうか」(草野氏)


大変革だから「疲れる」、変化に慣れることの大切さ

それでは、ほかの企業が同様のブレークスルーを実現するにはどうすればよいのか。まず必要なのはマインドチェンジだ。

「日本の場合、DXは『失敗すれば後がない大変革』です。だからこそ、DX疲れが起こるのでしょう。一方、海外ではより地に足の付いた小さな変革に日常的に取り組まれている企業が多い印象です。仕事は常に変化していくものであり、社員もそのことに慣れている。企業経営者や社員が、このようなマインドセットを獲得することが大変革の成功以上に重要だと思います」(関口氏)

その上でデータを活用する。過去や現在を知り、未来をできるだけ正確に予測するには、データの力を役立てることが不可欠だからだ。ブレインパッドはこれをトータルに支援する企業である。コンサルティング企業でもシステムインテグレーターでもない「データを活用したDX支援企業」という立場から、戦略立案、必要なシステムの開発、運用・チューニングから人材育成まで、顧客の取り組みを共創型(Co-Create型)でサポートする。

「データの重要度が増す時代に、社会に欠けた要素を補える存在になりたい――。私は、そのような思いで2004年に当社を創業しました。『データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる』というミッションのもと、お客様と向き合ってきましたが、特に最近は、進むべき道を共に考えるパートナーを探しているお客様が多いと感じます」と草野氏は説明する。

単に課題を整理したり、仕様通りにシステムをつくるだけではなく、環境や顧客の変化が反映されたデータを基に、状況に沿ったアクションをタイムリーに提案・サポートできる伴走者になる。そこにブレインパッドの存在意義があるという。

同社が提供するサービスは大きく2つだ。

「プロフェッショナル・サービス」では、データサイエンスの専門家がアナリティクス(分析)とエンジニアリング(開発)のスキルを駆使し、顧客企業に最適なデータ活用の方法論を提案、実装する。人材育成支援も行い、データ活用の“自走化”を後押しする。「プロダクト・サービス」では、データに基づく意思決定を業務に落とし込むため、誰もが使いこなせる実用的なプロダクトを開発し提供。これにより多くの企業におけるデータ活用の日常化を支援する。

この両方を提供できるプレーヤーは、市場でも少ないという。「事業運営上は、どちらかに特化するほうが得策なのかもしれません。しかし、草野が話した当社のミッションを達成するには、企業規模に関係なく、日本中の企業にデータサイエンスを普及させる必要があります。そう考えると、私たちに1つに絞るという選択肢はありません」と関口氏は語る。


ESG経営の方針策定、推進にもデータサイエンスが不可欠

また、データサイエンスのニーズが高まる背景として、ここ数年、注目を集めているのがESG(環境・社会・ガバナンス)だ。環境負荷増大につながる製品・サービス、あるいはそのような事業活動を行う企業は、消費者に選ばれない時代が到来しつつある。経営へのインパクトは大きいため、あらゆる企業がESG経営を推進することが不可欠になっている。

「ESG経営は、現状を見える化することがスタートラインになります。CO2排出量や電力消費量など、様々なデータのトレーサビリティを高めて自社の状況を証明する。その上で、どこをどう改善するかを考える際に、データサイエンスが武器になります」と草野氏は話す。

この新しい前提のもとでの消費者ニーズは流動的なため、企業が目指すべき姿の正解も1つではない。そのため、データに基づくシミュレーションを高速で繰り返しながら、施策を実行・修正し続けることが肝心だ。「ESG経営のために収集・取得したデータが、これまで出来なかったデータ活用に将来的に役立つ可能性もあります。このように、データが“血液“のように循環する仕組みが実現できれば、企業のDXは一層加速できるはずです」(関口氏)。

最後に草野氏はこう述べた。「先が見えない時代といわれますが、少なくともこのESG経営の重要性は世界中の共通認識になったと感じます。その意味で、DXの目的を『持続可能性向上』に設定するというのは、1つの方向性になるのではないでしょうか。我々は、そのためのお客様の取り組みに伴走し、全力でサポートすることで、共に前向きに進んでいければと思います」。

記事一覧:【シリーズ】経営者の隣にデータサイエンスを。

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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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