マーケティングオートメーションでのシナリオ設計:第3回
「何を」伝えるのが最適か?コンテンツは大別して3種で整理
前回記事のタイミング設定(「いつ」コミュニケーションするのか)に引き続き、今回は「何を」顧客に提示するのが良いのか?についてです。
第1回の記事でコミュニケーションする相手を想定しましたが、顧客プロフィールが見えていれば、自ずとコミュニケーションする内容(=コンテンツ)も決まってきます。前回も人と人との関係で説明しましたが、相手と初対面であれば自己紹介、相手のことを知れば知るほど相手の興味のありそうな話題をすることで盛り上がったり出来るイメージです。
顧客と企業の関係が友人関係などと違うのは、それが企業側の営業活動であることですが、だからと言って”売らんかな” や ”買って買って!”一辺倒では関係を絶たれてしまって(オプトアウト)おしまいです。相手にメリットのあること、興味があることをマンネリにならないようにうまく伝えていく必要があります。
また、相手のことをよりよく知ることで愛着が湧いたり(ファン化)、周囲の人に紹介してくれたり(エバンジェリスト化)、好意的な関係になったり(ロイヤルユーザー化)するのは通常の人間関係でも顧客と企業の関係でも同様です。その意味で、ストアブランドやプロダクトブランドをうまく伝えることは長期的な意味で良い効果があります。
そのような前提から顧客とのコミュニケーションコンテンツを決定しますが、コンテンツは大きく3分類で整理します。そして「誰に」「いつ」接触するコンテンツなのか?をもとに複数回の接触でのストーリーを組み立てます。
顧客のフェーズにあわせて3つのコンテンツを組み合わせ
1. ストアブランド・サービスコンテンツ
自己紹介などに相当し、よく知れば知るほど愛着が湧きファン化する
2. 興味カテゴリ・商品コンテンツ
企業から顧客に提供出来る価値そのもの、顧客から見た時には企業と関係を続ける理由
3. インセンティブ系コンテンツ
顧客に(差別的に)ベネフィットのある情報「あなただけ(会員だけ)」の割引(他者との差別化)や「今だけお得」な情報(時間的な差別化)など
マーケティングオートメーションのシナリオでは上記の3種のコンテンツの中から、顧客との関係性をもとに大きな配分を決定していきます。
第1回「誰に」の回でお話したように、顧客をセグメントする基本は顧客のライフサイクル軸です。コミュニケーション相手が「見込み客」「新規顧客」など、まだストアブランドやプロダクトブランドの認知・理解が進んでいないグループの顧客が対象なのであれば、ストアブランド紹介等を中心にトライアル的な利用促進をするため、インセンティブ系のコンテンツを組み合わせます。
「一般顧客」や「優良顧客」にはストアの活動更新ベースのコンテンツ
ブランドや商品を気に入って購入を続けていただいているので「新商品情報」や「セール案内」などストアの活動更新ベースでのコンテンツとなります。(このセグメントはこれまでのメールマーケティングなどと似たものです)
ECサイトへの接触や購入経験も多く発生することから、Webサイトの閲覧に対するフォローやカゴ落ちフォロー(直前閲覧商品のプッシュ)、購入後の関連購買(クロスセル商品/カテゴリ情報)のお知らせなどが効果的です。
「休眠顧客」にはインセンティブ系コンテンツ
休眠顧客への対処は販促効率の悪さから優先度合いが低くなりがちですが、新規顧客獲得コストが上がっている現在においては重要なターゲットであり、休眠段階できちんとコミュニケーションして離反させないことが大切です。過去の購買から興味カテゴリ・領域を推定したコンテンツとストア全体の売れ筋などのバランスで商品情報を構成しつつ、高めの割引クーポンなどのインセンティブを設定します。
インセンティブは、過度なバラマキにより顧客が“割引き慣れ”してしまい収益性への影響が懸念されます。その際は、顧客需要の継続性からインセンティブ額面やプロモーション対象者をコントロールします。「顧客需要の継続性」とは、基本的に顧客はアクティブであった時の購買欲求を保ち続けているという考え方で、それはつまり過去の売上や利益となります。売上や利益の大きかった顧客は休眠状態から復活後も大きな売上貢献をするということです。なので、過去に売上や利益が大きかった顧客には大きなオファーをしてでも戻ってきてもらう価値があり、その逆もしかりです。
MA活用のポイントは、大きくシンプルなターゲットから段階的に絞り込むこと
マーケティングオートメーションでのパーソナライズマーケティング施策は「大きくシンプルなターゲットから徐々に絞り込む」ように高度化することで、一定の効果を得ながらプロモーション効率を上げていくことをおすすめします。
パーソナライズコミュニケーションにおいて重要な4要素(誰に、いつ、何を、どのように)のひとつめ「誰に(ターゲット設定)」を検討する段階で、注力すべき顧客を設定し、まずはそのターゲットへのシナリオ設計を行うのが良いでしょう。ただし、注力する対象顧客群が全体の売上構成に対して一定の比率を占めていないと効果が見えにくいので注意が必要です。
第4回ではこれまでにお話した「誰に」「いつ」「何を」を組み合わせたシナリオ例についてお話したいと思います。
第1回:パーソナライズマーケティングに重要な4要素。1つめの「誰に」の考え方
第2回:「いつ」コンタクトするのが最適か
第4回:「誰に・いつ・何を」の組み合わせ方
第5回:「どのように」リーチするのか