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データ分析プロジェクトの案件は、以前は一括委託型の統計的な解析とレポーティング業務が主でしたが、最近ではAIやDXの進化に伴い、プロジェクトへの参加型、共に課題を解決する伴走支援型が大きな割合を占めるようになってきました。
それに伴いブレインパッドのデータ分析プロジェクトのマネージャー(PM)も従来のQCD(Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期))管理はもちろんのこと、それ以上に「クライアントにとっての価値を導き出すためにプロジェクトを円滑に遂行する」ことに重点を置くようになっています。
【関連】【シリーズ】データ分析プロジェクトの「プロジェクトマネージャー(PM)」に求められる役割 CASE1:データサイエンティスト・田村潤
そのような業務を支援会社に依頼する際、クライアントにとって重要となる成功要因は、データ分析プロジェクトに参加するデータサイエンティスト・プロジェクトマネージャー(PM)といかにコミュニケーションをとり、上手に活用するかということです。
そこで今回は、それぞれ違うプロジェクト経験を持つブレインパッドの同期入社の若手PM2人に、お客様から見たPMとの上手な付き合い方について、話を聞きました。
※所属部署・役職は取材当時のものです。
DOORS編集部(以下、DOORS) まず井上さんから、ご経歴と現在の案件を簡単に紹介してください。
株式会社ブレインパッド・井上麻美(以下、井上) ブレインパッドには新卒でデータサイエンティストとして入社して現在6年目になります。まずはメンバーとして、人材業界の案件に配属され、アンケートデータの分析や広告業界で予測精度向上のロジック改善に携わりました。
次に代理PMのような形で物流業界の発注量予測のプロジェクトに参加し、先月まではPMとして金融業界でKPIツリーやダッシュボードの作成、その他分析をしておりました。今月から化粧品業界でマーケティング分析に着手します。
DOORS ブレインパッドのデータサイエンティストの中でも多岐にわたるご経験をお持ちだと思います。感想を教えてください。
井上 私は興味の範囲が広いので、多様な業界での経験は楽しく感じています。ただ裏にあるデータはすべてテーブルデータですので、扱うデータとしては一貫したキャリアを築いていると考えています。
DOORS 続いて丸山さんも自己紹介をお願いします。
株式会社ブレインパッド・丸山翔平(以下、丸山) 井上さんと同期入社で、職種も同じデータサイエンティストです。入社後、初めての仕事は金融業界の案件で、社内にデータ分析を根付かせる目的で分析組織立ち上げのサポートを行いました。
1年後、人事業界の案件を井上さんと交代で担当し、その後は小売業界と物流業界の案件を担当しました。小売業界の案件は現在も続いており、物流業界の案件では数理最適化の案件にメンバーとして入り、その後PMになりました。その案件が半年ほど前に完了しましたので、小売業界の案件のPMを引き継ぎ、現在はマーケティング領域の分析を伴走支援しています。
DOORS 学校では何を専攻されていましたか?
丸山 大学院で遺伝子研究をしていました。データサイエンスや機械学習は専攻していなかったのですが、実験結果の集計や膨大な量の遺伝子データの分析を通じて、データ分析を学ぶことができました。最終的に遺伝子そのものよりもデータ分析に興味が移り、それを仕事にしたいと思うようになり、今に至りました。
井上 私は、ブレインパッドのデータサイエンティスト職ではかなり珍しいのですが、学部卒です。理系と文系の間にあるような、経営も統計学も学ぶ学部にいました。研究と呼べるほどの研究はしていませんが、統計学を対象として卒論を書きました。
もともとデータサイエンティストになりたかったわけではなく、コンサルタント志望でした。しかし就職活動中、データサイエンティストという職種が注目され始めていた時期でしたのでその存在が耳に入り、コンサルに近しい存在でありながらも数字による裏付けを持った上でビジネスを推進するという面で、自分のキャリアの実現に近いと感じてブレインパッドに飛び込みました。
DOORS 2人ともメンバーとしてではなく、PMとしてプロジェクトに関わることが主になりつつある年代だと思います。仕事の視座や取り組み方が変わったのではないでしょうか。井上さんはいかがですか。
井上 クライアントに対しての取り組み姿勢は、基本的にメンバー時代と変わっていません。PMになる前から「プロフェッショナルサービス」に携わってきましたので、メンバーといえども一人前のデータサイエンティストとして責任を持ってタスクを実行し、アウトプットを作ってきました。
しかし、PMになって責任が格段に大きくなり、クライアント側の相手も1ランク上がったことは大きな変化です。対面の報告相手だけではなく、さらに上位の決裁権を持つ方と話をする機会も増えてきました。またブレインパッドの社内でも、売上に関する責任が出てくるので、営業担当とのコミュニケーションを取る機会も増えました。
アウトプットの質、クライアントとのコミュニケーション、自社の売上継続・拡大について責任が増えた分、色々なことをより深く考える必要が出てきました。例えば、クライアントとのコミュニケーションで、後々のために今の時点から何を聞いておくべきかをさらに意識するようになりました。
また、人材育成が予想以上に大変です。メンバーの成長を当人と一緒に考え、フィードバック方法も考えなければなりません。プロフェッショナルサービスに携わる我々は、クライアントに対して一人前のデータサイエンティストとして対応できるように、短期間で育てる必要があります。
DOORS 責任が格段に重くなったことを、どういうときに感じますか。
井上 クライアントとコミュニケーションする内容がビジネスやプロジェクトの方針、課題の発見といった、より上流の部分になっていることと、ブレインパッド側の視点として、クライアントとの関係継続と案件拡大を念頭に置いて話をするようになった時です。
DOORS 丸山さんはPMになって、仕事への取り組み方や視座が変わったと感じることはありますか。
丸山 「責任」は大きなキーワードで、PMは最終的な判断をするのがメンバーとの大きな違いだと思っています。例えばAかBか判断がつかないときでも、未来のリスクを考え、ひとまずAに決断する、ということが必要になります。
また、仕事の抽象性が増したと感じます。抽象的な状態から具体的な仕事を創り、それをメンバーやクライアントに分配する――つまり「仕事を創り出す」ことが自分の役割だと思うようになりました。
DOORS お二人の話で共通していたのは、仕事を創り、自分の責任で決断することが増えたということだと思います。これはメンバー時代から意識していたことですか、それともPMになってから考えるようになったのですか。
井上 広告業界の案件でのお仕事では、ブレインパッドのプロジェクトメンバーが計3人で、PMとメンバー2人だったのですが、各自が個人事業主のようにクライアントと直接やり取りしていました。次にどのような分析をしていけばよいかは基本的に自分で考えていたので、自分で仕事を創ることはその時から意識していました。たぶんブレインパッドの中でも独特のプロジェクトで、その中で経験を積んだからそうなったのかもしれません。
DOORS 井上さんが個人事業主的に働いていたというのは、各自が異なる範囲を担当していたということですね。それは何年目の仕事ですか?
井上 2年目から4年目ぐらいです。早くから自分で仕事を創ることを意識したというより、そうせざるを得なかったというのが正確です。
DOORS 丸山さんはどうでしたか。今のような仕事への姿勢はメンバー時代からですか。
丸山 私の場合は、物流業界の案件でPMが変わるタイミングで代理PMとして入り、その時に色々教わったことが大きいです。その時期としては4年目から5年目にかけてでした。
PMとしての実務はそのタイミングで教わったものの、ビジネス視点やクライアントへの伝え方などは新人の頃から意識すべきと教え込まれました。
井上 私も新人の時から「目的を把握し、相手の視点で考える」ことを教え込まれていました。そのため、ビジネス視点は初めのころから意識していました。
DOORS 次にデータサイエンティストとしてのプロジェクトの進め方についての考えを伺います。
プロジェクトの依頼内容は多岐に渡り、クライアントから具体的な要求がある場合もあれば、これから何をするべきかを一緒に考える場合もあります。システムの新規開発が目的であったり、既存システムの運用・保守をサポートする役割であったり、事業部門と連携したり、データ活用推進部門に参加したりする場合もあると思います。
また、依頼主も経営レイヤーからの要望だったり、現場部門からの要求だったりと様々です。それぞれのパターンでプロジェクトの構成や進行方針が変わり、PMの役割もそれに伴い変化すると思うのですが、いかがでしょうか。
井上 私が経験した人材業界のプロジェクトでは、今で言うDX部署でした。データは揃いつつある状況で改善を望んでいらっしゃるものの、具体的かつ効果的なアクションへの落とし込みが難しく、それらを考える期間が長かったです。
広告業界の案件では、対面はデータサイエンティストが所属する部署で、予測精度の改善が目的でした。役職的に対面部署のメンバーと同じような立場をいただけていたので、対等にコミュニケーションが取れ、「この特徴量を追加しましょう」とか、「全体のロジックに改善できそうな点があるので取り組みませんか」と提案し、一緒に分析やABテストの検証をしていました。
物流業界の案件では、商社が介在する少し複雑な体制でしたが、現場の方たちと直接会話しながら考えて進めることができました。具体的には、明確な目標である発注ロジックを考えるため、倉庫で発注量を考える方から直接ヒアリングを行い、業務設計のようなところから検討を進めていました。
金融業界の案件では、対面がデータ活用推進組織、挟んで金融事業の部署という関係でした。データドリブンな事業運営の促進が目的だったので、最終的なご支援は金融事業部署でしたが、直接的な関係ではなかったので、コミュニケーションの面で難しい場面もありました。
DOORS 丸山さんはいかがですか。
丸山 私は物流業界と小売業界の案件で対照的なプロジェクト運営を行いました。私の経験から言うと、課題が具体的かどうかでプロジェクト運営の方法が大きく変わると思います。
物流業界の最適化案件では、業務効率化のために従来の配送業務をアルゴリズムに置き換えるという明確な目標があったため、1~3カ月の計画を明確に立て、それに従って進めました。事業部の方から直接業務内容をヒアリングできたので、進行がしやすかったです。
一方で小売業界の案件では、分析組織を伴走支援する形で、半年ぐらいの長いスパンで目指すゴールやお題を決めて、都度計画を具体化して分析アウトプットを出してゆくサイクルを繰り返すという進め方でした。
DOORS 対面する相手によって仕事の進め方が大きく変わってくる印象を受けました。
DOORS 先ほど井上さんから、異なる業界での経験でも、分析は数値データを扱う点で一貫しているというお話がありました。その意味を改めて教えてください。
井上 私たちブレインパッドのデータサイエンティスト職は分析だけを提供するのではなく、分析を通じてクライアントにビジネス貢献することが価値であると思っています。その意識は今まで参画してきた案件で一貫してきました。
DOORS 丸山さんは井上さんの意見についてどう思いますか。
丸山 同意します。課題に対する答えを出すだけではなく、その解決までの筋道を示すことが我々の価値だと思います。そのために必要なことは分析作業でなくともデータサイエンティストの仕事であるというのが私のポリシーです。
DOORS 先日、関口新社長にインタビューした際、データを分析して課題を解く力についてはブレインパッドのデータサイエンティストは秀でていて、これまで通り力を発揮してほしいが、課題を見つける部分は強化の余地があるとの話がありました。そのためにコンサルタントとデータサイエンティストを融合する組織組成の施策を実施しているとのことでした。この点について、それぞれ意見はありますか。
丸山 関口さんの意見に私も同意です。解く力だけあっても駄目というのは実感しています。「この課題に対して答えを出したところで何も変わらない」といった悩みを抱えながら仕事をしたこともありましたし、より重要な課題を見つけて解決に取り組むことが必要だと感じることも年々増えています。
井上 私も同意です。問題を課題化する段階で、クライアントからの依頼内容を鵜呑みにして解くだけでは不十分な場面があることを感じています。既存のデータやドメイン知識を用いて課題を特定し、優先順位を付け、アクションに移すことが重要だと考えます。
DOORS 先ほど、クライアントのニーズや形態に合わせて伴走方法を変えているという話がありました。丸山さんが現在関わられているプロジェクトに照らして、その方法を具体的に教えていただけますか。
丸山 私が関わっている分析業務は大きく2つあります。1つ目は施策の効果検証のための定常分析、2つ目は顧客の購買行動の傾向分析です。期の始めにクライアントからのテーマ案に対して、半年間の具体的な計画を我々が一部リードして作成し、分析設計から報告までを一緒に進めています。
DOORS 具体的にはどのような部分をリードするのでしょうか。
丸山 分析の全体像や方向性といった大枠を考えるところですね。
DOORS あるフェーズや作業に関して、どちらがリーダーシップを取るかといった役割分担の基準はあるのですか。
丸山 それは作業を担当するデータサイエンティストのスキルセットや意向によりケースバイケースです。不確実性の高い分析では我々が主導することもありますが、大抵はクライアントが分析を行い、私たちは技術的なサポートを提供するアドバイザーの役割を果たします。
DOORS 伴走支援について、井上さんはいかがですか。
井上 前提として、クライアントから具体的な要望がある場合、その要望に応じて対応します。例えば、先ほど出てきたKPIツリーの作成やダッシュボード作成などは、先方のデータ活用推進組織から具体的に依頼されたことを実施した形です。
一方で直近では、ある事業部に対する1年間の支援テーマ選定について相談があり、その方針を理解してからプロアクティブに提案し、それに従って進めています。
クライアントのニーズや状況により、伴走の仕方は異なりますが、どのケースにおいてもクライアントが最大の価値を得られるような提案をすることを心がけています。
DOORS 次に、データサイエンティストとしての個人的な強みを教えてください。プロジェクトマネジメントの能力も含めて話していただけると幸いです。
丸山 「本当に必要なことを適切に行う」という姿勢です。これは、すべてのクライアントの要望に応じるという意味ではなく、真に重要な事項は何かを深く考えるということです。私は「データサイエンティストの仕事はこうである」といった固定概念を持たず、クライアントの要望や普段から考えられていることに対して、最大の価値を提供するにはどうすればよいかを考え続けるという思考自体が私の強みだと思っています。
DOORS 軸になるポリシーを持ちながらも柔軟にクライアントに対応できることが強みということですね。井上さんはいかがですか。
井上 丸山さんと似ていますが、私の強みは「自分ごと化」の能力だと思います。具体的には、ドメイン知識を深く理解し、データだけでなくその背景の課題について深く理解できることです。これにより、クライアントと同じ視線で会話ができます。また、アクションを起こすのは大変なこともありますが、立ちはだかる壁をどう乗り越えるかをクライアントと密に話しながら、実際に解決に向けて一緒に動けることが私の強みだと感じています。
丸山 我々2人の共通点は、これまで多くの経験を重ねてきたことです。得た知識を現在のプロジェクトに活用できているのも強みになっているのではないかと思います。
また伴走型支援では、私たちは外部の会社ですが、クライアントに深く入り込むことが求められます。客観的なノウハウをその場に合った形で提供し、支援を進めていきます。これが可能なことも、我々の強みであり価値だと考えています。
DOORS 続いて、お2人が仕事を進めていく上で重視されていることを、ブレインパッドのデータサイエンティストで、執行役員 ソリューションユニット副統括を務める紺谷幸弘が執筆した記事「【前編】データサイエンティストの強みをどのようにビジネス価値につなげていくか~キーワードは「2つの実コウ性」~」内で述べられている、以下図表「分析のステップ」を踏まえた上で伺いたいと思います。
ちなみに「実効性」とは分析にビジネス効果(インパクト)があるかどうか、「実行性」とは現場が実際に運用できるかどうかという意味です。
この表を踏まえた上で、それぞれが重視していることを教えてもらえますか。
井上 私が最も重視するのは、要件定義とビジネス適用の2つのステップです。まず、何が効果的か、課題を選定することが大切です。次に、ビジネス適用までの道筋が見えるか、あるいはその環境がすでに存在するかを把握することも必要です。これらがなければ、分析しても価値を生み出すことはできず、結局は意味がなくなってしまいます。これは、私がこれまで関わってきたすべてのプロジェクトで重視してきたことです。
DOORS そのフェーズで、データサイエンティストとして必ずやっていることはありますか。これをやっておかないと、クライアントに仕事を任せてもらえなくなることなどがあれば教えてください。
井上 答えになっているかわかりませんが、クライアントとの約束事をどこまで把握しあえているかが大切だと思っています。対面のクライアントだけでなく、プロジェクトによってはオペレーションを担う現場と、施策を計画する部門との間に距離があることもあります。その2つが連携しているか、現在行われていることは何か、現場がそれをどう受け止めているかを把握することも重要です。現場に抵抗感があれば、施策立案部門にその理由をしっかり聞いてもらうように後押しすることも行っています。
実行性については、リソースの有無も重要ですが、それ以上に人の感情が絡んでくる部分が大きいため、それを考慮して進めていくことが重要だと思っています。
DOORS 丸山さんはいかがでしょうか。
丸山 大まかには井上さんと同意見ですが、現場の人に「このデータサイエンティストと仕事がしたい」と思ってもらうにはどうすればいいのかを考えることが大切だと思っています。
勘と経験をデータに置き換えることは、現場の方々を否定するかのように受け取られることもあります。決してそういうわけではなく、進行中のプロジェクトのメリットをどう伝えるかが大切だと考えています。早い段階で分析結果を提示し、現場の人々とその使い方を共に考えることを重要なポイントだと思っています。
DOORS 最後のテーマになります。データサイエンティストの使命はクライアントのビジネスやプロジェクトの成功に寄与することであるという前提のもと、クライアントとデータサイエンティストの適切なコミュニケーションについて、丸山さんのご見解を伺いたいと思います。
丸山 データサイエンティストの仕事はデータを扱うことで、データ・根拠に基づいて主張することが得意です。しかし、クライアントのデータの活用についてはデータサイエンティストがすべてを理解しているわけではなく、クライアントのほうが詳しい部分もあります。そこで、それぞれの得意分野を明らかにし、お互いを尊重しながら助け合うコミュニケーションをとることが重要だと考えています。
井上 先ほどの丸山さんのお話の通り、現場の人に「このデータサイエンティストと仕事がしたい」と思ってもらえるようなコミュニケーションを心がけるべきだと思っています。
また、クライアントから私たちへのコミュニケーションについても、発注者と受注者という関係よりも、一緒に動くワンチームのような関係を築いて頂けると案件の進行がスムーズだった経験があります。ワンチームになれるとコミュニケーションの頻度が上がり質問や相談が密にでき、スピードも質も高くなりました。またより上流の段階の課題も汲み取りやすくなり、我々としてもその方針を踏まえて提案もできるようになります。ワンチームになることでこのように私たちをより効果的に活用いただくことができ、双方にとってメリットがあると考えています。
DOORS 共通の意見として、現場の人に「このデータサイエンティストと仕事がしたい」と思ってもらえることが大切だということですね。今までの経験でそれを実現できたという具体的なエピソードはありますか。
丸山 クライアントの業務を過度に変更しないことが大切だと思います。例えば、業務最適化のプロジェクトで計画作成部分をAIに置き換える場合、それまでExcelで計画を作っていたなら、計画作成画面の見た目をそのExcelの帳票に近づけることで、拒否感を和らげられます。見た目を大きく変えてしまうと、「何だかわけのわからないものが出てきた」と現場の方々に捉えられてしまう可能性がありますが、見た目をあまり変えないことで「使い勝手はそのままで、今までよりも良いアウトプットが得られる」と好意的に受け取られるようになります。本質的な変更ではないかもしれませんが、このような点は大切だと考えています。
井上 小さなエピソードですが、手動でデータを連携しKPIを算出する業務をほぼ全自動化した際、明らかに業務が楽になったと非常に喜んでいただけました。また、顧客に対しプロアクティブに提案を重ねていた案件では、その案件を離れる際に対面クライアントの方に「また一緒に仕事がしたい」という言葉を頂けたのが、個人的には嬉しかったです。
DOORS 最後に全体を通してメッセージがあればお願いします。
丸山 多くを語りましたが、自分自身まだまだ駆け出しという自覚があります。勉強すべきことは多く、自分ではこれが本質だと理解しながらも、実際の行動に移せていないことも少なくありません。その原因は主に、他人を巻き込んでプロジェクトを達成するためのコミュニケーションが足りないことだと反省しており、改善を目指しています。
井上 私自身もデータサイエンティストとしてはまだまだと思いながらここまで話してきたのですが、PMになった今、私たちがクライアントの視点を持つのはもちろん、クライアント側もできれば私たちに社内の課題を同じ目線で話していただけるとありがたいです。そのような関係性を構築することで、課題解決に向けて同じ方向を向くことができ、私たちもより貢献できると思います。
丸山 クライアントの野心を伝えてくださると嬉しいです。そういう本音のコミュニケーションができれば、私たちもさらに、どのようにサポートできるかを真剣に考え、達成へ向けて共に進もうという気運が生まれます。そのような情熱を共有できるコミュニケーションができたら最高だと思います。
DOORS 今回の対談は、ブレインパッドのデータサイエンティストをフル活用するヒントを提供することを目的としました。
その観点でまとめますと、ブレインパッドのデータサイエンティストはデータ活用の専門家ではありますが、一日中パソコンに向かって作業しているわけではなく、むしろクライアントのビジョンや事業成長の方法について深くコミュニケートすることが重要だと考えています。このことが伝わっていれば幸いです。
忙しい中、今日は貴重な話を聞かせてもらいました。お二人ともありがとうございました。
井上・丸山 ありがとうございました。
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