企業研修 三菱UFJ銀行様
データ活用を加速するには一般社員のスキル底上げが必須
デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向け、重要度を増す「データ活用」。中核を担うのがデータサイエンティストだ。膨大なデータからビジネスに役立つ洞察を引き出すには、統計学やデータ分析の知識はもちろん、プログラミングなどのITスキルも求められる。これらを具備したデータサイエンティストは市場でも引く手あまたで、世界的な人材獲得競争が繰り広げられている。
ただ、データサイエンティストがいればデータの価値を引き出せるかというと、そうではない。同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、一般社員がデータを活用できる下地をつくり上げることにある。
ビジネスでデータを活用するには、そもそも業務上の課題が何かを探ったり、得た分析結果とビジネスをつなげたりする取り組み、さらにはその洞察を実行に移すための仕組みづくりなどが必要だ。これを実行するには、実際に業務を行う一般社員が、データ分析の基礎知識やノウハウを習得しておくことが不可欠なのである。
このことにいち早く気付いた企業が、一般社員のデータ活用教育に取り組み、成果を上げ始めている。その1社が三菱UFJ銀行だ。同社が人材育成サービスを提供するブレインパッドと取り組んだ「データ分析の民主化」とはどのようなものか。また、それによって同社はどんな成果を得ているのか。担当者へのインタビューからひも解いていく。
「データ活用の民主化」を実現した、人材育成の手法とは?
「銀行には通貨取引のレコメンドや、1日数兆円にのぼる資金取引の予測など、過去のデータが役立つ場面が多数存在します。ただ、従来は担当者の経験や勘に依存する部分が多く、データを十分役立てることはできていませんでした」と語るのは、三菱UFJ銀行の尾高 雄一郎氏である。例えば、米国では事業部ごとにデータサイエンティストを配置する銀行も増えているが、国内ではまだそうした体制は整っていない。そのため、データ活用への意識が高い部門が独自でシステムを導入し、部分的にデータ活用を推進するにとどまっていたという。
このままでは加速するFinTechの潮流をとらえることが困難なばかりか、人に依存したプロセスが業務効率化の足かせにもなってしまう。どうすればデータ活用を加速し、業務現場にイノベーションを起こすことができるのか――。この問いへの答えとして浮上したのが「データ活用の民主化」だった。「まずはデータを活用できる人材を、全社的に育成していくことが、第一歩になると考えたのです」と尾高氏は話す。
導入したのが、社員のデータ活用スキルを底上げするための人材教育サービスである。
「どんな人材が必要かを定めるため、まずは統計検定2級/3級の知識レベルをターゲットに、69項目のスキルを定義しました。その上で、それを学べる最適なサービスを提供するパートナーを探し始めたのです」と同社の宇野 理氏は話す。そうして採用したのが、ブレインパッドの「データ活用人材育成サービス」だった。
「ブレインパッドの社長がデータサイエンティスト協会の代表理事を務めていることもあり、サービスの質には信頼がおけました。実際、当行が定義したスキルをすべてカバーできる研修が行えるのは、ブレインパッドだけでした」と宇野氏は強調する。
既に1,500人がeラーニングを受講、集合研修の満足度は98.9%
同社は2018年9月にブレインパッドの採用を決定し、講座内容の検討を開始。2019年3月には、eラーニングによる社員教育をスタートさせている。初めに多くの社員を対象としてeラーニングを実施し、その結果を基に、集合研修の内容を決めるというステップである。
「eラーニングのコンテンツは、事前にヒアリングした受講予定者の部署や仕事内容の情報から逆引きするかたちで、必要なデータ活用スキルを考えて作成しました。重視したのは、極力数式を使わないことと、統計用語を多用しないこと、そして現場の行員がイメージしやすい事例を採用すること。なぜなら、育成したいのはデータ分析の専門家ではなく、データをビジネス現場で使いこなせる人材だからです」とブレインパッドの摂待 太崇氏は説明する。この方針のもと、最終的には5章から成る「データ分析基礎講座」と「理解度確認テスト」を組み合わせたコンテンツを作成・提供したという。
さらに集合研修では、より深堀りしたデータ分析手法の講義とケーススタディ、その手法を活用した総合演習を組み合わせた研修プログラムを提供。摂待氏自らが講師を務め、これまでに2回実施している。
「eラーニングは社内ポータルで広報しただけでしたが、すぐに多くの登録があり、関心の高さに驚きました」と宇野氏。難易度は高めに設定したが、2019年10月時点で既に1,500人が受講済みしているそうだ。また集合研修にも想定以上の応募があり、受講者を抽選で決めることになったと語る。
受講者の評価も高い。例えば集合研修の総合満足度を測ったところ、第1回では84.9%が「満足/やや満足」と回答。第2回ではその数値が98.9%に跳ね上がった。「第1回の回答を基に講義内容を微調整しました。具体的には、株価の分析など、銀行業務の現場で使える『時系列解析』を盛り込んだほか、難易度もさらに高めて受講者の高いモチベーションに応えるようにしま した」(摂待氏)。
研修によって、三菱UFJ銀行のデータ活用は活発化した。例えば同社では、研修の実施と並行して、全社員が使えるデータ活用の共通基盤も整備。パブリッククラウド上にBIツールなどを用意し、必要なデータ活用環境を各部門が立ち上げられるようにしたが、その上でデータ活用のPoC(Proof of Concept:概念実証)を開始した部門や、レポーティング業務の改善に取り組む部門などが出てきているという。
SI/独自開発サービス提供の経験を人材育成サービスに生かす
「今回の研修コンテンツは、問題文のシチュエーションが実際のビジネスに則した内容になっているなど、データの活用機会をイメージしやすい内容だったため「分かりやすい」との評価が多かったです。また、集合研修では、講師が銀行業務を絡めた質問にも的確に答えてくれるなど、スタッフのスキルの高さも感じました。実際の仕事に直結する内容を学べた点が、ほぼ100%という高い満足度につながったのだと思います」と尾高氏は評価する。
ブレインパッドの「データ活用人材育成サービス」は、これまで累計35,000人以上が利用し効果を得ている。質の高いコンテンツや集合研修を提供/実現できること、さらに実施結果に即したチューニングを素早く的確に行えるのは、それらの実績に基づくブレインパッドの強みといえるだろう。
「加えて当社は、2004年の創業以来、システム構築や独自開発サービスの提供を含めた、データ活用領域のソリューションベンダーでもあります。100人以上のデータサイエンティストが、これまで1000社以上の経営課題解決をお手伝いしてきました。その経験を注ぎ込むことで、金融業界はもちろん、あらゆる業界・業種のお客様に向けた最適な教育や研修サービスを作成し提供することが可能です」とブレインパッドの奥園 朋実氏は付け加える。
また今回、三菱UFJ銀行が採用したデータ活用人材育成サービスでは、一般社員向け以外のサービスラインアップも用意している(図)。これにより、データ活用人材の不足に悩む企業・組織の課題を根本から解決することが可能だという。
図 データ活用人材育成サービスのラインアップ
FinTechの波に直面する金融業界はもとより、今やあらゆる企業にとって「データ活用の民主化」は喫緊の課題となっている。どうしてもデータサイエンティストのような専門家の獲得・育成だけに目がいきがちだが、その効果を全社に波及・発展させる上で、ブレインパッドの人材育成サービスは有力な選択肢になるはずだ。
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