企業研修 SOMPOホールディングス様
全社員を3種類のDX人材のいずれかに育てる
VUCAの時代、突発的な環境変化にも俊敏に対応していける力を獲得することが、企業の持続的成長に向けたミッションとなっている。そこで不可欠なのがDXだ。中でも「データ」の価値をいかにして引き出すかは、あらゆる取り組みの根幹を支えるものといっていいだろう。
この領域で先駆的な取り組みを進めるのがSOMPOグループである。国内損害保険事業、海外保険事業、国内生命保険事業や介護・シニア事業、そしてデジタル事業を柱にビジネスを展開する同グループでは、現行の中期経営計画の中で「リアルデータプラットフォーム(RDP)」という戦略を推進。既存事業で蓄積したリアルデータを生かし、グループ横断型のイノベーションや新たな顧客価値の創出を目指している。
この取り組みを牽引しているのが、持ち株会社のSOMPOホールディングスが社内に設置したデジタル・データ戦略部だ。
「我々は、DXを担うのは一人ひとりの社員だと考えています。そこで、まずは国内のSOMPOグループに在籍する約6万3000人の社員全員を対象として、DX人材化への戦略的な育成計画を立案。DXマインドの醸成や、データ活用スキルを身につけるための各種研修カリキュラムを整備しています」とSOMPOホールディングスの長谷川 智一氏は語る。
具体的には、グループのDXを担う人材を役割やスキルレベルに応じて「DX企画人材」「DX専門人材」「DX活用人材」の3つに分類。その上で「AI、ビッグデータ、CXアジャイル、デザイン思考」を社員全員が備えるべきデジタルの素養と位置付け、習得するための各種育成施策を展開している。
取り組み開始から約3年、既に研修修了生が多数出ており、組織が大きく変わりつつある。国内メガ損保の一角を占めるSOMPOグループは、どのようにしてDX人材育成に成功したのか。キーパーソンへの取材を基に明らかにする。
3つのDX人材、それぞれの役割と育成の狙いは?
SOMPOグループのDX人材の分類を改めて紹介しよう。まず、グループ各社で事業や現場業務の立案に携わるメンバーには、DX企画人材として、SOMPOグループのDX推進における中心的役割が期待されている。各ビジネス現場のドメイン知識に精通した社員が、デジタル技術を駆使する様々な企画や変革プランを立案すると共に、現場を牽引していくミッションを担う。
「DX企画人材が立案した企画を実現する上で、データサイエンティストやエンジニア、UI/UXデザイナーなど、高度なスキルを持つ人材の力が不可欠です。DX専門人材は、これらの専門スキルを保有する人材を指しており、基本的には外部から採用しています」とSOMPOホールディングスの大熊 美貴氏は説明する。
そしてDX活用人材は、DX企画人材のリードの元で、データやデジタル技術を活用して効率的に現場業務を実践する、あるいはDX企画人材の企画実現そのものをサポートすることが期待される人材であり、広く一般社員が該当する。
「最終的に、既存社員はDX企画人材もしくはDX活用人材のいずれかになることを目指しています。DXに向けた企画立案ができる人材と、変革していく会社の文化や仕事の仕方をDXマインドを持って柔軟に受容していける人材を、両輪で育て上げていくアプローチで取り組みを進めています」(大熊氏)
成果に直結する実践的スキルの獲得を目指して
全社DXのカギを握るDX企画人材の育成に向け、中核スキルの1つであるデータ活用の教育のために同社がパートナーに選んだのがブレインパッドだ。「基礎レベル」「ハイレベル」の2つの研修コースを設計し、これまで基礎レベルは650名程度、ハイレベルは100名程度の受講者を各グループ企業から受け入れている(図)。
図 SOMPOグループのDX企画人材育成プログラムとブレインパッドの支援範囲
基礎レベルとハイレベルの2つのコースを設定。いずれのコースも、業務での実践力を養うための演習に力を入れている
「基礎レベルの研修では、最初の導入となる企業におけるデータ利活用の重要性を啓蒙するセミナーの初回を当社が担当しました。また、併せて基礎的な統計知識の習得を目的としたeラーニング教材も提供することで、オンデマンドの学習に役立てていただいています」とブレインパッドの下村 麻由美氏は話す。
一方のハイレベル研修では、データ分析の応用スキルを身に着けることで、組織内のデータ分析プロジェクトをリードできるレベルの人材育成を目指す。SQLやPythonなどのコードを用いた実践的な演習も交えて、データサイエンティストの“卵”を育てる狙いだ。
「SOMPOグループの人材育成で重視しているのが『実践力』です。受講者が各現場に戻ったとき、学んだ成果を速やかに実務で生かせるようにする。それには単に座学で学ぶだけでなく、演習などで実際に体験することが肝心です。ブレインパッドの研修はこのニーズに応えるものでした」と長谷川氏は採用理由について述べる。
また、ブレインパッドの奥園 朋実氏は次のように続ける。「最初にご相談を受けた際、『データや統計学は、これからの社会人にとっての“読み・書き・そろばん”なので、ビジネス活動の中でしっかり使いたい』という強い思いを伝えられました。このような明確なビジョンを持つ企業は決して多くありません。強く感銘を受け、ぜひ実現に向けお手伝いをしたいと感じました」。
社員が講師となってDX人材育成を内製化する
SOMPOホールディングスは、DX企画人材の育成について、まずハイレベル研修を2020年秋にスタート。その半年後の2021年からは基礎レベル研修も開始している。ブレインパッドでは、複数年の実施を踏まえて研修コンテンツをブラッシュアップしている。研修参加者の満足度は非常に高い数字で推移しているという。
「例えば2022年度の基礎レベルの研修では、受講後のアンケートで90%以上が『満足した』と回答。『データ分析の面白さを知ることができた』『データ活用スキルをどんどん伸ばしていきたい』という声も数多く寄せられています」とSOMPOホールディングスの丸山 博史氏は紹介する。年度ごとの受講者数も、初年度は250名、2年目の2022年度は400名に増加しているという。
ハイレベル研修も受講者の評判は高い。3カ年を通じて満足度は年々向上し、2022年度のアンケートでは受講者全員から「満足」の評価を得た。研修を修了した人材が中核となって、実際のビジネス施策を形にする日も近いだろう。「『ビジネス課題解決のために行うデータ分析の具体的なプロセスを研修で一通り体験することで、実際の業務での活用も具体的にイメージできたので実務に生かしていきたい』など、実践的な研修内容に対する評価の声も聞こえてきています」と大熊氏は言う。
さらに、SOMPOホールディングスの取り組みの大きな特徴が、人材育成の内製化を推進していることである。基礎レベルは、初年度にブレインパッドからナレッジトランスファーを受けた後、社員自らが講師役を担い、研修実施を自走化している。データ分析の業務経験を持つ社員が研修を実施することで、受講者に寄り添った研修が実現でき、より一層DX人材育成をスピードアップしていくことが可能になるだろう。
「DX人材育成の内製化に挑むお客様は多くありますが、実現できている企業はほとんどありません。SOMPOホールディングス様は、先駆的な取り組みを進めている企業の1社といえるでしょう」と奥園氏は強調する。
求める人材を明確に定義・分類し、それぞれに向けて最適な育成方法を実践する。SOMPOホールディングスは、今後もDX人材育成を強力に推進すると共に、継続的に施策を改善していく予定だ。
「変化の激しい時代、ビジネスや技術動向の変化を踏まえて、人材育成プログラムも継続的に見直すことが不可欠です。専門家であるブレインバッドには、最新トレンドなどを踏まえた助言、提案を引き続き期待したいですね」と長谷川氏は最後に語った。
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