ブレインパッド、アパレル業界の「在庫過剰・衣服ロス」を解決するダイナミックプライシングの実用化に向けた取り組みを発表
- 複数の予測モデルと数理最適化アルゴリズムを用いて、通販ブランド「セシール」を支援 -
株式会社ブレインパッドは、株式会社ディノス・セシール(所在地:東京都中野区、代表者:代表取締役社長 石川 順一)が運営する通販ブランド「セシール」のオンラインショップ(https://www.cecile.co.jp/)にて、ダイナミックプライシング(*1)の実用化に向けた取り組みを推進したことを発表いたします。
予測・最適化技術のビジネス活用実績を数多く有するブレインパッドは、アパレル業界のビジネス課題に注目し、その解決策となるダイナミックプライシングの研究開発に注力してきました。
そして「セシール」との取り組みにおいて、訪問者予測・購買確率予測の2つの予測モデルを構築するとともに、これらのモデルと在庫数を用いて最適な販売価格を算出する数理最適化(*2)アルゴリズムを開発いたしました。このアルゴリズムは、さまざまなECサイトに適用可能な拡張性・汎用性を考慮して構築している点が特徴です。
現在日本では、ホテル業界や航空業界などを中心に、需給に合わせて価格を変えるダイナミックプライシングの手法が広がりつつありますが、アパレル業界への適用事例はまだ少ない状況です。また、アパレル業界では、「衣服ロス」と呼ばれる衣料品の余剰在庫・大量廃棄が深刻な問題となっています。
ブレインパッドは、このたびのダイナミックプライシングの実用化に向けた本プロジェクトを通じて、自社のミッションかつこれからの時代に求められる「持続可能な未来をつくる活動」を推進したいと考えています。
■アパレル業界や「セシール」特有の要件を満たす独自のダイナミックプライシング
流行の移り変わりの早いアパレル業界では、シーズンごとに直近のトレンドを取り入れた商品を企画・販売し、そのシーズン内にできるだけ多くの商品を売り切りたいと考えるのが一般的です。
「セシール」は、これまで、熟練した担当者のノウハウに基づき価格変更(値引き)のタイミングや値引き率などを設定していましたが、場合によっては適切に需要を捉えきれずに在庫が残るという課題があり、その解決に向けてダイナミックプライシングの手法に着目しました。
世の中には自動的にダイナミックプライシングを実施できるツール類も存在していますが、ホテルの宿泊費や航空券などのチケット料金に特化したものが多いのが実情です。加えて、アパレル業界では、商品の独自性が強くトレンドも加味しなければならないため、SKU(*3)単位での需要予測が必要となるなど、既存のツールでは対応が難しいのが現状です。
そのため「セシール」は、自社サイトおよびアパレル業界特有の制約条件を加味したダイナミックプライシング実現のためには独自にモデルを構築するほうが良いと考え、ブレインパッドがその開発を担当いたしました。
ブレインパッドは、まず、ダイナミックプライシングの実現に向けて必要なデータを準備するところから着手しました。「セシール」として整備していなかったデータは、自社開発の「Rtoaster(アールトースター、*4)」や「 Google Analytics 」を用いて過去の購買履歴データ等を調査し、その結果を元にデータを補完・推計し独自のモデル構築に活かしました。
そして、商品ページへの訪問者数を予測するモデル、商品ページ訪問者の購買確率を予測するモデルの2つの予測モデルの構築と、この2つのモデルと在庫数を用いて最適な販売価格を求める数理最適化アルゴリズムの開発に成功し、一定の効果創出が見込めることを確認しております。(*5)。
今後、「セシール」とブレインパッドは、この2つのモデルと数理最適化アルゴリズムを元に実地検証を行い、モデルの改善・多機能化、システム化を進め、実用化に向けた取り組みを段階的に進めていきたいと考えています。
■ブレインパッドの最適化への取り組みに関する今後の展開
ブレインパッドは、ECサイトや実店舗での価格最適化に加えて在庫最適化の支援を検討するとともに、「Rtoaster」等の当社が取り扱う各種デジタルマーケティングツールとの連携も視野に、アパレル業界をはじめとする小売・流通業界のデジタル変革を推進するソリューションを強化してまいります。
■株式会社ディノス・セシール セシールマーケティング部 藤田 満様からのコメント
ブレインパッドには、アパレル業界や当社特有の要因・条件などを加味したダイナミックプライシングアルゴリズムを開発していただきました。ダイナミックプライシングに使用するデータは、「セシール」が蓄積してきたデータをできるだけ使用しながら補完・推定いただき、またアルゴリズムの精度向上のための新たなデータ収集に関するアドバイスをいただきました。
今回の取り組みは収益向上という観点だけでなく、お客様をはじめ仕入先・生産者といったさまざまなステークホルダーにとって望ましいものにしたいという想いがありました。そのため在庫低減だけを目標とするのではなく、より上流の原材料調達や生産量の最適化に繋げること、社会課題である衣服ロスへいかに貢献できるかが重要であると考えました。
マーケティングツール等の提供に留まらず、データ活用を通じた経営課題・社会課題解決に共に取り組めるブレインパッドは魅力的なパートナーだと感じています。
今後、アパレル業界での先進的な取り組みとしてダイナミックプライシングの実用化に向けた挑戦を進めるに際し、ブレインパッドのデータ活用に関する知見・ノウハウをふまえたサポートに期待しています。
(*1)ダイナミックプライシングとは、同一の商品やサービスの価格を需要と供給のバランスから、収益の最大化を動的価格設定や変動料金制により実現する技術のこと。
(*2)数理最適化とは、現実の問題を「ある与えられた条件下において、最適な解を数理的に求めること」に帰着させて、解決する技術や方法のこと。
(*3)SKU (Stock Keeping Unit)とは、受発注・在庫管理を行う際の最小の管理単位のこと。品目をデザインやサイズ、色などで細分化して分類する。
(*4)「Rtoaster」はブレインパッドが開発する国内トップクラスのレコメンドエンジン搭載プライベートDMP。https://www.rtoaster.com/
(*5)ブレインパッドは、2020年5月21日時点において、本アルゴリズムを使用することによる売上改善効果が約2%強~4%弱、利益改善効果が利益を6%弱~10%強であると試算しています。
■ご参考情報
●ビッグデータ活用サービスについて
「ビッグデータ」「IoT(Internet of Things)」「AI(人工知能)」「機械学習」「深層学習」「データサイエンティスト」「データ分析・データ活用」「予測・最適化」「フィンテック」など、さまざまなキーワードの根底にある、“データを価値に変えて企業活動に変化と改善をもたらすこと”を支援します。データ活用領域のリーディングカンパニーとして、アナリティクスとエンジニアリングを駆使し、企業のビジネス創造と経営改善をお手伝いします。
●株式会社ブレインパッドについて
(東京証券取引所 市場第一部:証券コード 3655)
本社所在地:東京都港区白金台3-2-10 白金台ビル
設立:2004年3月
代表者:代表取締役社長 草野 隆史
資本金:575百万円(2020年3月31日現在)
従業員数:326名(連結、2020年3月31日現在)
事業内容:企業の経営改善を支援するビッグデータ活用サービス、デジタルマーケティングサービス
*本ニュースリリースに記載されている会社名・商品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
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以上