データサイエンスが求められる企業の現状|求められるスキルと人材育成方法を徹底解説
2020年10月29日
企業内に蓄積された膨大な量のデータを活用するために、データサイエンスが求められています。データサイエンスを経営に取り入れることは、企業の競争力強化、新たな戦略の立案等のために大変役立ちます。この記事では、データサイエンスで可能となること、企業の現状、データサイエンティストのスキル要件、人材育成を解説します。データサイエンスを取り入れた企業の成功例も紹介するので、参考にして下さい。
目次
- ・データサイエンスとは?
- ・データサイエンスで可能となること
- ・データサイエンスが求められる企業の現状
- ・企業で求められるデータサイエンティストのスキル
- ・企業におけるデータサイエンティスト育成方法
- ・データサイエンスを活用している企業
- ・まとめ
データサイエンスとは?
そもそも、データサイエンスとはいったい何なのでしょうか。いろいろな定義ができますが、本稿での定義は「データを起点に新しい価値を生む実学」とします。例えば、誰がどんな物を買っているのか、といったデータを軸にして現実の社会を分析することで、「この人はこんな商品も好きな可能性が高い」といった新しい視点が得られます。その視点に基づいて新しい販売戦略を立てれば売り上げが増える、つまり新しい価値が生まれると言えます。経験や勘に基づいて戦略を立てる場合に比べて、生産性も向上するかもしれません。体系だった理論を持つ「サイエンス」でありながら、ビジネスでも大いに役立つため、「実学」なのです。
データサイエンスを活用するためにはデータ分析で問題を「解く力」に加えて、ビジネス課題を「見つける力」、そして分析結果を意思決定に「使わせる力」の3つ力の総合力が必要とされます。
データサイエンティストとはどんな人?
データサイエンティストは、「データサイエンス力」「エンジニアリング力」「ビジネス力」といった幅広い分野の知識と経験を持ち、これらを有機的に結び付けてビジネス改善につなげることができる人材です。
しかし、一人の人間でこれら3つの広範囲にわたる知識や経験をカバーすることは不可能に近いです。企業においては、それぞれの役割を細分化し、それぞれのスキルの強みを持ったメンバーを集め、組織として運営されることが多くなっています。
データサイエンスで可能となること
データサイエンスで可能となることを解説します。
何が起こったかを把握できる(説明的分析)
説明的分析とは、データを集計、整理し、代表値(平均や分散等)を求めたり、可視化(グラフ等の作成)して、データの特性や因果関係を明らかにすることです。これによって、「何が起こったのか」を把握することができます。
今後何が起こるかを予測できる(予測的分析)
予測的分析とは、過去のデータを使って、予測モデル(回帰モデル・時系列モデル、等)を作り、
時系列を将来に伸ばして今後起こりうる事象を予測することです。
ビジネスには様々な課題がつきものですが、商品の需要や売り上げの推移、顧客離反のタイミングなどのように「将来が不確かであること」も大きな課題のひとつです。こうした課題に対して、モデルを使って予測することによって、対処することができます。
起こりうる事象に対してシナリオに基づく意思決定ができる(指示的分析)
指示的分析とは、起こりうる事象に対して複数シナリオに基づく意思決定ができることです。
不確かな将来をデータから予測し、最適化の手法と組み合わせることによって、業務の効率化や高度化が可能になります。例えば、選択可能な方法が複数あったときに、それらを予測モデルに入れて比較評価すれば、最適な方法を見付けることができるようになります。
データサイエンスが求められる企業の現状
データサイエンスが求められる企業の現状について解説します。
データの活用ができない企業が意識すべきポイント
データ活用の必要性が高まる昨今、活用がなかなかできていない企業は、次のことを一体となってすすめる必要があります。
・経営層をはじめとした広い階層にデータ活用の必要性と活用に向けた方針の策定や意識付けを行うこと
・事業マネージャー層が、ビジネスを深く洞察し、データ活用すべき課題の具現化とビジネス実装に向けたプランニングまで落とし込むこと
・分析課題をデータサイエンティストが正しい分析手法を選択して分析し、ビジネスで活用可能なアウトプットを創出すること
・ビジネス現場が分析結果を活用するメリットや改善効果を理解し、自らデータ活用を実践すること
これらを推進するためには、データ分析の選任であるデータサイエンティストだけでなく、マネジメント層や一般スタッフ含めたデータ活用人材が重要です。
データ活用人材の不足
日本では、データ活用人材の不足が課題となっています。データサイエンティストは、データを扱えるだけでなく、データとビジネスを関連付けて考えられる人材です。データ分析力やエンジニアリング力はあるがビジネススキルを持たない、もしくはその逆の人材が多いのが現状です。
2018年時点でデータ活用人材は約3.4万人不足しているといわれており、2020年には約4.5万人、そして2030年には約14.5万人も不足すると予測されています。人材確保の方法としては、優秀な中途入社社員や新卒社員を採用したり、ヘッドハンティングしたりするだけでなく、社員研修で育成することも考える必要があります。
データサイエンス教育の難しさ
データサイエンストには、統計学・プログラミングなどの知識・スキルのみならず、ビジネスに関する知識と経験が求められます。それらの知識や経験は高度で広範囲でありますが、さらにそれらの複数の分野知識をつないで活用する能力も求められます。例えば、ビジネスにおける業務知識から課題を抽出し、それを統計学で解決できる形で落とし込むことができる能力が求められます。もう一つ例を挙げれば、分析上のパラメータを推定する方法を知っているだけでなく、計算負荷を軽減してプログラミングする能力が求められます。このように、データサイエンティストには複数の知識・スキル・経験を組み合わせて対応できる能力が必要なのです。
データサイエンス教育の難しさは、単に必要となるビジネス・統計・プログラミングの知識・スキルが高度であり広範囲であるからというだけでなく、それらの知識を組み合わせて活用する能力も求められるためです。こうした内容のすべてをワンストップで学ぶ場を設けることは、難しいと言えます。
企業で求められるデータサイエンティストのスキル
企業で求められるデータサイエンティストのスキルについて、解説します。
上述の通り、これらのスキルを組み合わせて活用する能力も必要となります。
データを分析するスキル
データサイエンティストには、データを分析するためのスキルが求められます。データ分析には、統計学・数学・情報処理・人工知能等に関する知識と、それらの知識を実際に使いこなすスキルが必要です。
データ分析を実装できるスキル
データ分析を実装、運用できるようにするエンジニアリングスキルが必要となります。プログラミング・データハンドリングに関する知識などが求められます。
ビジネス問題を解決できるスキル
ビジネスドメインに関する知識はもちろんのこと、ビジネス課題を発見し、分析から得られた結果を実ビジネスへ展開する能力に加え、コミュニケーションやロジカルシンキングなどの能力などが求められます。
企業におけるデータサイエンティスト育成方法
企業でデータサイエンティストの育成方法を解説します。
研修などを行い自社で育成する
研修などを実施して自社で育成する方法があります。データサイエンス人材の獲得競争は激しいため、優秀な人材を採用することは難しいためです。自社の人材を育成することやスキルの底上げが進められています。ただし、研修で効果をあげるためには、研修の目的、受講対象者の選定、目標到達レベル、ならびに研修方法(講義形式、演習内容、等)について十分な検討が必要です。
外部に委託する
教育・研修の必要性は感じているが、自社にはそのノウハウがない場合には、研修などの人材育成をを外部に委託する方法があります。外部に委託する際には、研修の目的が達成できるかについて、委託先の体制、実績、自社のニーズへのカスタマイズ可否、対応可能な研修方法や受講者数などを確認する必要があります。
新規採用
近年、大学において、データサイエンス学部を立ち上げるなど、データサイエンス分野の人材育成が進んできています。将来的には、データサイエンティストとして活躍する人材が増えていくことが期待されますが、現状では、データサイエンティストとして即戦力となる人材はまだ少ないため、新規採用は難しくなっています。
データサイエンスを活用している企業
実際にデータサイエンスを活用し、成功している企業を紹介します。
テスト作業の効率化・自動化を実現したゲーム会社様
株式会社セガ様では、ゲームのバグなどを発見したり難易度を確認したりするテスト作業の負荷が大きいという課題がありました。それを解決するために、AIに自動でゲームをプレイさせ、プレイデータを分析することで、特定の組み合わせの場合は、敵を倒せないなどの情報を得ています。
ゲームバランスの調整が短時間で行えるようになりました。人がプレイして分析する必要がないため、テスト作業の大幅な効率化を実現できました。
※参考:開発ストーリー:AIが導く“ゲーム開発のイノベーション”
顧客ロイヤルティの向上を実現したタバコ会社様
JT様には「JTスモーカーズID」という成人喫煙者向けの無料の会員サービスがあります。多くのデータが得られているが、それを活用できず「経験と勘」に基づくマーケティングが続いているという課題がありました。これを解決するため、会員情報からターゲットの分析を行い、どの会員がどの銘柄に転移しやすいかを予測できるようになりました。
この予測技術を活用して、特定の銘柄を薦めるダイレクトメールの送付が行えるようになり、施策1回につき約20%の費用対効果が改善されています。
※参考:開発ストーリー:AIが導く“顧客ロイヤルティ”の向上
製造ラインの改良により安心・安全を実現した食品会社様
キユーピー株式会社様では、人力による目視検査の負担が大きいことが課題でした。そこで、AI技術を用いた検査システムを検討しました。不良品を弾くことを目的に、画像解析によって製造ラインの写真を学習させています。製造ラインに導入し日々改良を重ねて精度を上げています。
まとめ
IT技術の進歩に伴い、膨大なデータが企業内に存在するが、十分に活用できていない企業が多いことが課題となっています。データサイエンスを取り入れることで、データに基づく合理的な意思決定を行うことが可能となり、競争力の強化、業務効率化、そして新たな付加価値創出などに繋げることが可能となります。
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