データ活用でビジネス利益を生み出すには?活用する際のステップ・成功事例も紹介
2020年12月21日
ビッグデータとは、大量であるだけでなく、さまざまな形式(数値、テキスト、画像等)をもつ、多様なデータを意味します。ビックデータは、次の3つのVにより特徴付けられます。
・Volume(データの量)が多い
・Variety(データの種類)に富んでいる
・Velocity(データの発生頻度・更新頻度)が高い
そして、SNS(Social Networking Service)の普及、Iot(Internet of Things)から得られるセンサーデータやスマートフォーンの普及などを背景に、ますます増加を続けています。こうした中で、ビッグデータの活用し、新規ビジネスを開拓して収益を増加させたり、制御の最適化等によるコスト削減による収支改善に成功している企業も増えてきています。
この記事では、実際に活用できるデータの種類やデータ活用のメリットを詳しく説明します。そして、日本でデータの活用が進まない理由(障壁)を述べた後に、その障壁を乗り越えて、データ活用をビジネスに応用して成功した事例を紹介します。
目次
- ・ビジネスにおけるデータ活用とは?
- ・ビジネスにおける2つの活用の方向性
- ・日本でデータ活用が進まない原因
- ・ビジネスにおいてデータを活用するメリットとは?
- ・データを活用したビジネスの成功事例【5選】
- ・データをビジネスに活用する際の基本プロセス
- ・まとめ
ビジネスにおけるデータ活用とは?
ここでは、ビジネスにおけるデータ活用について解説します。
活用する「データ」とは?
企業で活用できるデータにはさまざまなものがあり、具体例としては次の通りです。
・業務データ(顧客データ、経理データ、業務日報データ)
・販売管理データ(POSデータ、E-コマース販売データ、注文実積データ)
・顧客とのコミュニケーション(電子メール、CTI音声データ、携帯電話)
・ライフログデータ(アクセスログ、動画・映像視聴ログ、BlogやSNS等の利用ログ)
・自動記録データ:M2Mデータ(GPSデータ、気象データ、RFIDデータ、センサーデータ、防犯用データ)
・センサーデータ(IoTなどから得られる位置情報、速度のデータ、等)
さらに、部門によってもデータの種類は異なります。例えば、営業部門なら顧客の属性データ、カスタマーサポート部門なら問い合わせ内容の種類や対応時間のデータ、製造部門であれば生産・出荷・在庫データ、流通部門であれば配車台数・位置情報データなどがあります。
センサーやPOS等のシステムからは、さまざまな(上記のVariety)データが高い頻度(同Velocity)で収集できます。収集したデータを分析すれば、これまで気付かなかった課題が明らかになったり、新たに効果的な戦略や付加価値等を創造できる可能性があります。
ビジネスにおける2つの活用の方向性
ビジネスにおけるデータ活用は、攻めと守りの2つの方向性があります。
攻めのデータ活用(エクスターナルフォーカス)
攻めのデータ活用は、顧客体験価値の向上や新規ビジネスモデルを創出するものです。行動データ等を用いて顧客を分析して顧客満足度をさらに高め、売上や利益を増やすことを目指します。あるいは、商品やサービスの質を高めたり、新たに開発することも可能となります。この方向性における活用シーンとしては他にも、需要等の予測を通じた意思決定の最適化等があります。
守りのデータ活用(インターナルフォーカス)
守りのデータ活用は、業務オペレーションを改善したり、業務効率を向上させるものです。オペレーションをデジタル化により効率化し、コストを削減して収益を改善します。この方向性での活用シーンとしては、リモート監視・操作、運用保守の自動化、故障予知等があります。
日本でデータ活用が進まない原因
日本は、欧米諸国やアジアの先進諸国と比較して、データ活用が進んでいないと言われています。
その主な原因として、次のことが考えられます。
・経営層の理解不足
・データ活用の価値や有効性が十分に理解されていないこと
・データが部門間で定義やフォーマットが異なること
・人材不足(ビジネス理解、データ分析理解、課題設定、使わせる力、ブリッジ人材)
それぞれについて、見ていきましょう。
1.経営層の理解不足
初めに、経営層の理解不足があげられます。経営層にデータ活用による企業の目指す姿や、そこに到達するまでの取組む姿勢に一体感がなくなっているケースです。その場合、思い切った人材・予算の配分、人事評価の見直しといった施策が実施出来ず、中途半端な状態にとどまってしまいます。特にデータ活用の促進に向けた企業文化の土壌がない段階では、経営層が変革の姿を描き強いイニシアティブを取って推進しない限り、成功の可能性が低くなってしまいます。
2.データ活用の価値や有効性が十分に理解されていないこと
データ活用の価値や有効性が、企業の中で充分に理解されていなければ、全社一体となってデータ活用を推進することができません。データ活用の価値と有効性について理解を深めるためには、経営層のみならず、現場の一般スタッフが、データ活用の成功事例や先端技術の応用事例、そしてデータ分析の基礎リテラシーを身に付けることも必要となります。
3.データが部門間で定義やフォーマットが異なること
同じ項目を表すデータであっても、それを表すカラム名が部門ごとに異なっていたり(例えば、「顧客名」と「クライアント」)、あるいは同じカラム名であってもデータの定義が異なっていることが原因で、データの統合や集計が困難となり、前処理の段階で作業が止まってしまうケースがあります。このような場合には、データ収集と蓄積の方法を再構築することが必要です。
4.人材不足
データ活用を推進するには、どのような人材が必要であるか(下記①~④)を示し、該当する人材が不足していることがデータ活用推進の足かせになっていることを説明します。
データ活用推進に必要な人材は、
①データ活用全体を統括する事業マネジャー
②データ活用のプランニングとビジネス実装するビジネスと分析のブリッジ人材
③特定課題に対して分析問題を解くデータサイエンティストや機械学習エンジニア
④実際のビジネス現場でデータを活用して業務遂行する一般スタッフ
と考えられます。
それぞれについて、具体的に必要な能力や役割について見てみましょう。
①データ活用全体を統括する事業マネジャー
データ分析に先立ちビジネス視点で仮説を立て分析結果が仮説にあっているか検証する能力が必要
②データ活用のプランニングとビジネス実装するビジネスと分析のブリッジ人材
データ分析をビジネス(事業活動)に結び付けるための戦略策定・設計ができる「ブリッジ人材」が必要です。「ブリッジ人材」とは、ⅰ.業務(ビジネス)側の要件をデータ分析者に正しく伝える力、ⅱ.データ分析の結果や制約条件等を正確に業務(ビジネス)側に伝えることができる力、といったⅰ.とⅱ.の両方を持ち、ビジネスとデータ分析とを結び付けることができる人材です。こうした人材がいない場合、ビジネスにインパクトを与える課題がデータ分析を行う課題に結び付かなくなり、「分析の為の分析」となってしまう可能性が高くなってしまいます。意思決定に役立ち、ビジネスインパクトを与える分析を実現するためには、ビジネスとデータ活用をブリッジできる人材の役割は非常に重要です。
③特定課題に対して分析問題を解くデータサイエンティストや機械学習エンジニア
実際に手を動かしてデータ分析をする人材は、単に目の前にあるデータに既知の分析の手法(アルゴリズム)をあてはめることができる力だけでなく、欲しいデータやデータの取り方を考える力や、データを解釈する力も合わせて持ち合わせていることが必要です。そして、業務知識を持ちビジネス課題が何であるかを理解することも必要となります。
④実際のビジネス現場でデータを活用して業務遂行する一般スタッフ
一般スタッフは、データ活用スキルを持ち、効率的に自身のタスク遂行ができることが求められます。データ分析の専門家だけでなく、現場で活躍する一般スタッフ含めて知識とリテラシーを高めることで、全社的なデータ活用の遂行が可能になります。
現状、多くの企業で、これらの能力を持つ人材が十分に育成されていないため、人的なボトルネックが発生し、データ活用が進まない大きな要因となっています。ビジネス上の課題をデータ分析で解決することが可能であることを理解し、データ活用により課題解決を図るという目的意識を持つ人材を育成する必要があります。
次では、データ活用の推進に必要となる力について、別の角度からも見てみましょう。
データを活用する際に必要な「3つの力」とは?
実際のビジネスで効果的なデータを促進するためには、「見つける力」「解く力」「使わせる力」が必要です。
「見つける力」とは、ビジネスを理解し、ビジネス上の課題を発見する力を意味します。「解く力」とは、発見した課題の解決方法を見出す力です。そして、「使わせる力」とは、分析によって得られた結果をビジネスの現場での意思決定に活用されるように落とし込む力です。
データ活用を促進するには、「解く力」だけあれば十分であるとは言えません。多くの企業でデータ活用が進まないのは、「見つける力」や「使わせる力」が足りないためであるとも言われています。
もう少し具体的に見ていきましょう。
図1は、データ分析の流れを左から時系列に示したものです。データ活用を推進する上での障壁は、図1の「分析作業」に入る前と、「施策実施」の前の2か所にあります(いずれも縦の波線で表示)。前者は「見つける力」、後者は「使わせる力」に該当します。この図1から、データ活用推進には「解く力」を持つ人材だけでなく、「見つける力」や「使わせる力」を持つ人材も必要ということが分かります。前者の「見つける力」が不足している場合には、ビジネス上での意思決定に役立たない、いわゆる「分析のための分析」となり、分析した時間と労力が無駄になってしまいます。また、後者の「使わせる力」が不足している場合には、分析結果がいくら有用であったとしても、これまでのやり方に固執する現場からの反発や、分析結果の有用性が理解されずに時間とともに風化してしまい、結局、使われないという結果になってしまいます。
こうした2つの障壁に対して、ビジネスのセンスとデータサイエンスのリテラシーを併せ持った人材(上記③「ブリッジ人材」)を配置することで、データ活用のメリットを享受できる推進体制を実現することができます。
図1 データ分析の流れと活用推進の障壁
※参考 大阪ガスにおけるデータ分析専門組織の運営法 ――「見つける力」「解く力」「使わせる力」を兼ね備えたフォワード型分析者集団を目指す | IBM ソリューション ブログ
ビジネスにおいてデータを活用するメリットとは?
ここでは、ビジネスにおいてデータを活用するメリットを説明します。
現状の把握が可能
データを集計、整理し、代表値を求めたり、可視化(グラフ等の作成)して、データの特性や因果関係を明らかにすることができます。データ分析では、可視化も重要です。その理由は、データの可視化によって、可視化により現状を把握し、さらに現状把握から要因探索へとすすみ、ビジネスアクションにつながるからです。
将来の予測が可能
過去のデータを用いて、予測モデルを作成し、今後起こりうる事象を予測することができます。
ビジネスでは様々な変化がつきものですが、例えば商品の需要変化や売上の増減、顧客の離反のように「将来が不確かであること(リスク)」に備えることは、企業経営における重要課題のひとつです。こうした課題に対して、予測分析は 不確かさ(リスク)を低減させるための基礎情報を提供し、適切な意思決定を促進させるメリットがあります。
このように現状の把握と将来の予測が可能になると、起こりうる事象に対して複数シナリオに基づいて意思決定ができるようになります。不確かな将来をデータから予測し、最適化の手法と組み合わせることによって、業務の効率化や高度化が可能になります。例えば、選択可能な方法が複数あったときに、それらを予測モデルを用いて比較評価すれば、最適な方法を見付けることができるようになります。では、具体的にそのメリットを意思決定の視点から見てみましょう。
意思決定への貢献
ビジネスの課題に対してデータから得られる相関関係や規則性、因果関係を把握できれば、より精度の高い解決施策の立案が可能になります。
さらに需要予測で生産量をコントロールし在庫過多や欠品を抑制することで売上とコストの両面でビジネスインパクトを得ることが可能になります。
今までの経験・勘・度胸だけに頼らずに、データドリブンな意思決定を行うことで効果的なビジネス施策の展開が可能になります。
データを活用したビジネスの成功事例【5選】
食品メーカー様
生産開始から完成までに時間を要する商品を提供しているため、急な需要に対しても欠品が発生しないように、受注が確定する前から見込みで生産を行っていました。商品の見込みに関する計算は、担当者個人の感覚に依存していたため、商品を過剰に生産してしまうことが多く発生していました。
そこで、過去の需要動向や生産に要する時間のデータを活用して需要を予測し、生産期間を考慮して生産量を最適化しました。その結果、需要に即した適切な商品数を生産できるようになり、過剰な生産を回避できるようになりました。
外食チェーン様
売上や来客数の予測に基づいて年間100近いプロモーションを行っていましたが、その予測はすべて担当者の手作業によるものでした。そのため、業務量が多いだけでなく、予測の精度にも課題がありました。
そこで、過去のデータだけではなく、曜日や連休などの情報、新商品やクーポンなどのプロモーションに関する情報も組み入れて予測を行うようにしました。その結果、予測の精度が向上し、担当者の業務量の削減と、効果的なプロモーションの両方を実現しています。
小売流通業様
販売にたどり着くまでのシナリオが複雑であるため、正確な販売量の予測ができない状況でした。また、潜在的な需要を推測することが難しい状況下で、過剰な在庫を回避するため、度々品切れによる機会損失が発生していることも課題となっていました。
そこで、過去の販売実績データを活用して需要予測を行い、在庫量を最適化するシステムを導入しました。これにより、品切れによる機会損失を防ぎつつ、在庫数が過剰にならないよう調節できるようになりました。この取り組みにより、品切れを大幅に改善したことで売上額は約7%も向上しました。
物流サービス事業者様
業務に従事する従業員の間で雇用契約や熟練度が異なるため、効率的な人員の配置が難しい状況にありました。それぞれの作業に求められる人員の要件が複雑なため、一般的な管理システムでは対応できませんでした。
そこで、どの時点でどのような作業が発生するかを細かく予測し、それに対して適正な人員配置を決定するシステムを導入しました。その結果、最適な人員配置がスムーズに行えるようになり、人員管理の手間やコストを削減できるようになりました。
製薬会社様
製薬会社の顧客である医師へのアプローチ方法には、営業活動、広告、セミナー等のさまざまな種類がありますが、どのアプローチを実行するかの決定は担当者の感覚に頼っていました。そのため、最も効果のあるアプローチ方法を的確に選ぶにはどうしたらよいかが課題になっていました。
そこで、営業活動の記録、プロモーション施策の実績や顧客(医師)が自社のメディアサイトに訪れた際のWeb上の行動情報などをデータ化し、現状の活動内容を定量的に分析しました。さらに、これらのデータに加えて医師の属性データ(年齢、施設のカテゴリ―、等)と販売実績を用いて、どのようなアプローチをすると、どれくらいの効果を得られるのかという予測結果を定量的に可視化するシステムを開発しました。そのシステムにより、アプローチの方法と効果が可視化されて、営業活動が効率化されました。
データをビジネスに活用する際の基本プロセス
データを活用する際には、次のPPDACサイクルを円滑に回すプロセスが基本的に用いられます。
Problem(課題の特定):問題解決の為の課題の設定。課題クリアの基準となる「指標」を
具体的な数値(KGI(業績目標指標)、等)として設定
Plan(プロジェクトの定義):「指標」を達成するための分析プロジェクトの計画
Data(データ収集):欠損データや異常値の有無をチェックし適切に処理・変数追加等
Analysis(分析):問題点や原因を究明。結果から、施策のためのヒントを探索
Conclusion(結果の導出):分析結果から改善点を見つけて施策を検討
Conclusion(結果の導出)が完了した段階で、当初の問題がどの程度改善したかを確認し、次の課題を設定し、新たなサイクルにつなげていきます。このサイクルを繰り返し行うことで、目標とする課題クリアの基準(KGI)に到達していきます。
分析する目的が明確になっていない、あるいは分析結果を基にした施策が立てられていない状態では、PPDACサイクルは回せないことに注意が必要です。また、上記のサイクルが、関係者の間で共有されていることも必要です。
まとめ
データ活用により、ビジネスにおいてさまざまな改善や新たな価値の創造につながる可能性が高まります。データをうまく活用するには、基本的なプロセスやノウハウをしっかりと理解しておくことが大切です。
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