データ分析組織はどうあるべきか~組織の独立化についてメリットなどわかりやすく解説~
2020年10月20日
データ分析組織とは、データを活用してビジネス課題を解決に導く道筋を立て、解決策が実行された暁には、その活動をブラッシュアップするための改善策を講ずることを目的としたチームや部署のことを指します。データ分析の活用を推し進めている企業は増加しています。この記事では、データ分析組織を行ないたい企業担当者向けに、データ分析組織について詳しく解説しています。効果的なマーケティングを実践し、今後の売上拡大に役立ててください。
目次
組織内でデータ分析推進時に発生する課題
組織内でデータ分析を推進する際には、発生しやすい課題が2つあります。それぞれの課題について解説します。
採用や配置、人材育成に関する課題点
採用や配置、人材育成に関する課題としては、データ分析を行う人材の育成方法がわからないことが挙げられます。
データ活用文脈で人材育成を語る際、しばしば機械学習モデルや統計、プログラミング言語といった所謂現場のハードスキルに目が行きがちですが、そもそも何のビジネス課題に着手するのか、はたまたそこから見出したアウトプットをどのようにビジネス実装するかという観点も、目線を向上させるために配慮すべき重要な要素です。勿論現場スキルの向上が必要なことは言わずもがなですが、データ活用プロジェクトを成功に導くためのリソース調達や、分析から得られた結果を組織に還元する役割はマネジメント層の役割であり、この層の人材が不足しています。
この層はデータを自ら扱う必要性はありませんが、企画の要点が分かり、分析プロジェクト全体の方向性コントロールや、分析作業実施者に対してマネジメントをできるだけの力量を持つことが求められます。
データ収集や整備・環境整備に関する課題点
データ分析には、何のために分析するのかといった目的意識が必要ですが、それを考える人材が足りていません。データの分析方法や分析結果の活用方法がわからない、データ分析から成果を導き出せないなど、データを上手く扱えないことも課題の1つです。また、データが社内の各部門に散財しており、データ環境をどのように整備すればよいのかわからないことも問題です。
データ分析組織の分類
データ分析組織はどうあるべきかは、これまで培ってきた組織文化や業態によって変わってくるので唯一解は存在しません。主に考えるべきは、分析組織と各事業/機能部署との関係性をどう位置づけるかになります。一般的に分析組織は1つに集約して業務を遂行した方がメリットが多いと考えられますが、データや部署文化の強い制約がある場合は、各事業/機能部署配下に「常駐」という形を取ることが望ましいと考えられます。
■ 1チームに集約
▼ メリット
・ 人材がプールされているので 適切な案件に適切な人材を アサインしやすい
・ 分析・活用ノウハウを共有しやすく、分析スピード・クオリティの底上げを行いやすい
・ 分析に集中しやすい環境を整えることができる
▼ デメリット
・ 特定部署でのみ触れるデータがある場合などは、分析機会を失うことになる
・ 特定部署内で専門的な文化や知識を必要とする場合、かえって非効率なケースがある
・ 分析結果のビジネス活用にまで時間を要する場合がある
部署毎にチームを配置
▼ メリット
・ 特定部署でのみ触れるデータが ある場合などに、分析機会を得ることができる
・ 特定部署内で専門的な 文化や知識を必要とする場合、長い時間その文化に触れること で効率的に仕事が進められる
▼ デメリット
・ 人材の替えが効きづらく、突発 的な事象に対応しにくい
・ 同じ仕事を長く続けやすいことに よるモチベーション低下リスク
・ 分析に関するノウハウが蓄積・ 共有されにくい
分析組織を作っても、社内に浸透せず活用できなければ意味はありません。少しずつ小さな成功事例を積み重ねるような課題設定をしていくことが、コツと言えます。
データ分析組織に必要な環境
データ分析組織を上手く活用するためにはハード/ソフト両面におけるサポートが必要です。
ハード面
■ ビッグデータの3V(Volume(分量),Variety(多様性),Velocity(リアルタイム性))の確保
・ ある程度のデータがないとそもそも分析は成立しないので、課題に対してデータが不十分な場合は、データを収集するフェーズを先行させることをお勧めします
■ 分析(ETL/モデリング)環境
・ rawデータをそのまま使って分析を実施することはほとんどありません。良い分析を実施するためには、適切にデータを加工・集計を実施し、正しい現状認識を醸成した上で、機械学習を行うのであれば検証のためのデータ分割、および適切な特徴量を作り出すことが必要となります
・ モデリングをオープンソースで実現させる場合は、その実現に必要なプラットフォームやパッケージの準備も必要となります
・ これを分析作業者自らが実施できることが重要です
■ コンピューティングリソース
・ ビッグデータを扱うのであれば、それに見合うだけのリソース確保は必須です。機械学習によるデータ活用を考えるのであれば、モデリングを回すリソースも必要となります。
ソフト面
■ 知識のアップデート
・ データ活用分野における事例や技術論は日進月歩です。常に新しい知見が取り入れられるよう育成面のサポートを考慮しましょう
■ 組織上の位置づけ
・ 分析組織はデータ活用を推進する組織です。一部の人間の研究事としてはなりません。よって周辺部署との依頼される/しやすい関係性構築は重要です
データ分析組織を成功させるための条件とは?
データ分析組織を成功させるためには、どのような条件が必要なのでしょうか。詳しく解説します。
目的設定を行う
データ分析組織を活用するためには、目的設定を行うことが重要です。また、目的によって分析するべきデータは異なりますし、アプローチ方法についても変わってきます。
例えばユーザーの反応率を予測して、DM施策の効率化を図るということでしたら、あたるべきデータは顧客アクションのログ情報で、分析手法としては回帰分析などの教師あり学習の機械学習モデリングとなりますが、ユーザーのペルソナを知りたいとなった場合は、データは一緒になる可能性は高いですが、分析手法はクラスタリングなどの教師なしモデリングとなります。また機械類の故障予兆を知りたいとなった場合は、当たるべきデータも機器類が発生させるログデータと変わっていきます。
データ分析を定着化させる
データ分析を行っても、社内で活用できないのでは意味がありません。そのため、社内にデータ分析を定着化させることも大切です。その具体的な方策をみていきましょう。
他部門との協業
事業部とデータ分析組織が両輪となって活動することが重要です。データ分析組織だけではなく、双方のデータ対応能力を高めていくことが求められます。また、データ分析は分析することが目的ではありません。分析結果を使ってもらい、課題解決や目的を達成するために、意思決定を行う部署との協業が必要になります。
事業部の多様な課題ニーズに応えられるように、事業ドメイン/技術両面の知識と、自社が保有するデータへの理解を深めておくことを心がけてください。
人事制度への活用
データ活用文化を組織に定着させるには、人事制度も重要な要素です。データ活用を人事評価時の加点項目に加えたり、新しい組織・機能(役職)・働き方を打ち出し、社員にデータ活用方面でのキャリアパスの提示することも、組織全体のデータ活用に対するモチベーションアップに繋げることができます。採用選考基準の中ににデータ活用マインドなどを入れていくことも良いでしょう。
成功体験づくり
データを分析し活用するには、小さな規模で試してみること、それを継続していくことが重要です。検証フェーズを集積し、活用イメージや社内理解、ノウハウなどを深めていきます。その上で、成功体験づくりを行いましょう。小さな成功体験を積み重ねることで、さらにデータ分析を推進したい、活用したいという考えが広まります。
新規事業構想~スタートアップ
新規事業に参入する場合には、事業を成功まで導くための道筋を検討する必要があります。そのために、データ分析で市場調査や競合調査などを行いましょう。アンケートやインタビューなどのリサーチデータ、さまざまなオープンデータなどを集めて分析し、事業の可能性や骨格などを検討していきます。
成長期
成長期とは事業が軌道に乗り、利益などが増えている段階です。このフェーズでは、さらなる集客や売上アップのために、オペレーション改善などが必要です。そのため、顧客情報や購買情報などを基にして分析を行い、より効率的で効果のある施策を提案します。
成熟/再成熟段階
成熟段階は企業が大きくなり一度立ち止まるフェーズである再成熟段階は、企業の見直しを図りさらなる成長を遂げるフェーズです。この段階では、企業全体の見直しが求められます。これまでに蓄積してきたデータを分析して改善点を発掘し、組織体系や業務全体の見直しを行いましょう。
データ分析に向いている人材を集める
データ分析に向いている人材を集めることも大切です。データ分析に向いている人材の特徴としては、「課題解決に目を向け、自発的に行動できる」ことが挙げられます。データ分析は、多くの仮説を立てて分析する仕事のため、課題に目を向けて自分自身で考えられることが重要です。また、データ分析に必要なスキルがあることも大切です。
データ分析に必要なスキル
データ分析には以下に関する知識や能力が必要です。
・データサイエンス
・ビジネス
・データエンジニアリング
データサイエンスに関するスキルとは、人工知能や情報処理、統計学などの知識や技術のことです。データを分析する上で、データサイエンスは欠かせません。
ビジネスに関するスキルは、その名の通りビジネスを理解する力です。データ分析で課題を発見し解決方法を提案するためには、自社のビジネスへの理解が欠かせません。
データエンジニアリングに関するスキルは、データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力となります。
チームリーダーに向く人材とは?
第一にはデータ分析で何が改善可能かプランニングなど、プロジェクト推進能力が高い人材です。プロジェクト上で発生するイベントやリスクを予見して、その際に必要となるリソース調達や、分析から得られた結果をビジネス実装できることが求められます。
第二に目を向けるべきはコミュニケーション能力の高い人材です。データ分析組織は、事業部と協業したり現場に業務改善をお願いしたりします。そのため、コミュニケーションを図りつつ、円滑な人間関係を築けることが重要となります。
第三にはメンバーのモチベーションコントロールができるコーチング能力が高い人材です。それぞれのスキルアップを図り、能力が最大限に発揮できる環境を整えることができる人材が求められます。
データ分析組織化に向けた3要素
データ分析組織化には、3つの要素があります。ここでは、それぞれの要素の詳細について解説します。
PoCを積み上げる
データ分析組織化のために、PoCを積み上げていきます。ビジネスの目的・目標を設定し、PoCを実施していきましょう。初めは、大規模に行うのではなく小さな規模でデータ分析を行っていくこともポイントです。小規模でのPoCサイクルが上手くいったら、その段階で他部門などへ展開していきましょう。
他部門でもスモールスケールでPoCサイクルを回し小さな成功体験を積み上げて、企業に浸透させていくことが重要です。
PoCとは?
PoCとは、「Proof of Concept」の略称です。日本語では概念実証と訳されており、実証実験と同じような意味で使われています。新しいプロジェクトを実際に実施し、費用対効果や実現性、具体性などを検証するプロセスです。PoCは試作・実装・検証の3ステップで行われ、投資判断の材料として重視されています。
組織化の準備を行う
PoCサイクルを回し、ある程度目途が立ったら組織化するための準備を行いましょう。全社的な取り組みとしては、データ分析組織への理解やリテラシーの向上、人事制度への適用などが挙げられます。
データ分析基盤の整備を行う
組織化の準備が終わったら、データ分析基盤の整備を行っていきます。より高度なビジネス目標を達成するためには、データ分析基盤の整備が欠かせません。データ分析基盤の整備は以下のプロセスで行います。
1)高度なビジネス目標設定
2)分析アプローチ設計
3)分析基盤の拡張
4)分析データの拡充
5)分析の高度化・分析評価
6)ビジネス活用
これらのプロセスで基盤を整備して、データ分析を本格化させていきましょう。
まとめ
データ分析組織は、独立化させることで業務の推進力が高まり、ノウハウなども共有しやすくなるため、より高い効果を発揮します。データ分析組織を活用しようと思っても、データ分析できる人材が足りない、人材育成のノウハウがない企業も多いでしょう。
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