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【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第5回 データ基盤構築とデータガバナンス(後編)

公開日
2022.10.21
更新日
2024.06.04

※前編はこちら

 

本記事の登場人物
  • コンサルタント
    櫻井 洸平
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    フィナンシャルインダストリーユニット
    役職
    副統括
    独立系SIerにて、オンプレ、プライベート、パブリッククラウドのインフラ全般の技術知識から、お客様へクラウドシフト、クラウド活用、クラウド推進のコンサルティングを経験。ブレインパッドに参画後 企業におけるデータ活用のためのシステム企画から、活用を推進する組織醸成や人材育成のコンサルティングをプロジェクトマネージャとして対応。
  • データエンジニア
    秦 健浩
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    データエンジニアリングユニット
    役職
    ディレクター
    SIer、事業会社を経てブレインパッド入社後は、某エンターテインメント施設における「データドリブンマーケティング」システム構築案件などを担当。2020年7月からは、データ基盤の構築標準化を目的に新設された、エンジニアリング推進部の部長を務める。
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ボトムアップ型アプローチのソリューション・「SSP」

ブレインパッド・櫻井洸平(以下、櫻井) ボトムアップ型アプローチを求める企業に共通する悩みとはどんなものでしょうか。

ブレインパッド・阿南哲也(以下、阿南) そのような企業では、データガバナンスの推進母体がIT部門であることが多いと述べましたが、大きく2つの悩みがあります。

1つは、リソースが足りないということです。データ基盤構築と言っても、経営層や他の部門は「データベースを作ればいいのだからすぐできるでしょう」と思っています。実際には、拡張性やセキュリティなど検討事項は山ほどあるのです。IT部門は既に他の業務システムの運用や開発を進めており、かけもちでデータ基盤構築やデータガバナンス策定に取り組むわけですから、質・量ともにリソース確保が難しいのが現実です。

もう1つは、IT部門では具体的な課題や事業戦略がわからないということです。ボトムアップ型アプローチといえども、「会社全体のデータ利活用戦略」に基づかないといけないのは先ほど述べた通りです。しかしそれはIT部門が策定するものではありません。たとえば「自社の強みやITサービスを活かした地域貢献」といったキーワードだけでもいいので、そこは経営層から出してほしいところです。

さて、どちらの悩みであっても、解決策としてスモールスタートは有効だと言えます。しかしスモールスタートと本来はトップダウン型アプローチであるデータガバナンスは相性が悪いのです。

そこでボトムアップ型アプローチで進めるデータガバナンスはどうすれば実現できるのかについて考えてきました。今のところ、データ基盤の中にデータガバナンスを組み込む方法がベストではないかと考えています。

ブレインパッド・秦健浩(以下、秦) それを実現できるのが、私たちデータエンジニアリング本部が提供しているデータ活用プラットフォーム「SSP(Smart Strategic Platform)」なのです。

【関連】ブレインパッド、データ活用の民主化と内製化の高速化を支えるソリューションを発表、第一弾としてデータ活用基盤「Smart Strategic Platform」(SSP)を提供開始

これは、データファイル連携、手持ちデータのアップロード、これらのデータを簡単にデータベースにロードする仕組み、データを取り扱う上で必要なセキュリティといった、データ活用する上で必須且つ最低限必要な要素が実装されたデータ基盤で、標準仕様であれば数日でお客様の環境に構築することが可能です。また、SaaSなどのサービスではないためお客様のご要望に応じて柔軟にカスタマイズすることもできます。

SSPの中にはオプション機能としてデータガバナンス実現のために必要なツール類を搭載できるよう開発中で、これによりデータ基盤ができると同時にデータガバナンスも実現されることになります。具体的にはどこにどんなデータが存在するかというデータカタログを見る機能があり、データサイエンティストも一般ユーザーもデータのありかを探して迷子になるようなことはありません。

阿南 SSPが提供しているものについてはコンサルタント側も理解しており、ガバナンスを全社展開していく場合にも、SSPをベースとしたガバナンスを推進していくことを提案できます。いずれにしてもボトムアップ型のアプローチにおいては、SSPは非常に有効なプラットフォームですね。

 実を言うと、データ基盤構築と聞いて、データガバナンスも整備しないといけないと考えるIT部門はそれほど多くはありません。それでは今後、いずれさまざまな課題に直面すると指摘させていただくと同時に、そのためのルールと仕組みを備えたものを提案する必要があります。クイックにデータ基盤を構築し、データ活用の現場目線で実効性のあるガバナンスを実現できるという点で、SSPを導入する効果は大きいと思います。

また、SSPではCIS Controls(米国の非営利団体であるCenter for Internet Securityにより「最低限行うべきこと」に着目してまとめられたフレームワーク)というセキュリティフレームワークを採用していますが、最新のv8になりデータ管理についての対応も求められています。

これに対してSSPはボトムアップ型アプローチによる対策を標準として開発を行っている点も、お勧めできる理由の一つですね。

株式会社ブレインパッド
データエンジニアリング本部 エンジニアリング推進部長
秦健浩

櫻井 スタート時点の悩みに応えるためにSSP導入が有効な選択肢であることはわかりました。では、最終的には何が大切でしょうか。

阿南 ユーザー、この場合は特にIT部門になりますが、彼らが自走できることです。そこでまず構築したデータ基盤の利用目的を把握することが重要になります。一部のユーザーが使うのか、それとも全社展開のハブ的役割として使うのかということですね。

いずれにしても、情報が形骸化してはいけないので、常にメンテナンスしておくことが必須です。自動的にメンテナンスする機能も必要ですし、手動でもできるようにしておくことが肝心です。

 構築したガバナンスが実際に機能することを定期的・継続的に確認するプロセスがあることも重要ですね。


「データの民主化」に不可欠なデータガバナンス

櫻井 データ基盤構築の目的・テーマの1つが、いわゆる「データの民主化」であることは疑いないと思います。データ基盤構築ではメタデータ情報の整備の一環でデータカタログを提供したりしますが、これはデータサイエンティスト以上に現場ユーザーが分析する際に便利になるものだからです。 このこととデータガバナンスとの関係はどうでしょうか。

株式会社ブレインパッド 
ビジネス統括本部 データビジネス開発部
シニアマネジャー 櫻井洸平

阿南 データの民主化が進むことにより、データサイエンティストはデータレイクから生データを持ってきて様々な分析をするでしょうし、現場ユーザーであればデータマートにアクセスしてBIツールを活用し、ビジネスに有効な知見を得ようとするでしょう。全社のあらゆる部門の社員が様々なソースにあるデータを利用することになり、求められるセキュリティのレベルが跳ね上がります。その結果、データガバナンスが不可欠となります。逆に言えば、特定用途のシステムにおけるデータガバナンス導入の意義は薄いのかもしれません。

 そのシステムから作られるデータがデータドリブンな意思決定に関与するかどうかで変わってくると思います。関与するのであれば、そのシステムもデータガバナンスの対象に含める必要があるはずです。

阿南 言われてみたら当然のことですが、データ基盤の構築側の視点だけだと意外と忘れがちです。このように、いろいろなシステムや業務に飛び火していくのがガバナンスの難しいところです。

株式会社ブレインパッド 
ビジネス統括本部 データビジネス開発部
阿南哲也

櫻井 データの民主化と言うのは簡単ですが、どこまでの範囲を目指すかが重要ということですね。システムやデータを標準化していくことは、それを推し進めていけばいいだけのことですが、データを誰が使うのか、民主化することで何を成し遂げたいのかといったことを明らかにしておかないと、「データはあるけど使いこなせていない」という話になりがちです。

私たちブレインパッドがボトムアップ型アプローチのデータガバナンスに関わっていくのであれば、データを提供する側であるIT部門の目線だけでなく、IT部門側がデータを活用する側の目線をもって、データガバナンスを検討できるように支援することも重要だと考えます。


データ基盤構築とデータガバナンス

阿南 トップダウン型アプローチでも同様だと思いますが、ボトムアップ型アプローチではデータ基盤構築とデータガバナンス推進を同時並行に進めていく必要性がより強いと言えます 。SSPを導入してこれらを進める場合でも、どのタイミングでビジネス課題を解消していくかといったスケジュール調整が基盤構築側とコンサルタント側との間で重要となってきます。

そこで私たちビジネス統括本部(BZ)と秦さんのいるデータエンジニアリング本部(DE)の連携をさらに強化して、相互理解していくことが非常に重要ではないかと考えています。もちろんデータサイエンティストが所属するアナリティクス本部やプロダクトを扱うプロダクトビジネス本部も巻き込んで、「One BrainPad」として連携することも必要ですが、まず手始めにということで。

たとえばSSPに関して、顧客の課題解決にはこのような機能が必要だという提言をBZからDEにする、短期/中期/長期の機能実現ロードマップを一緒に考えることでスムーズに進めていく、業務ごとのガバナンス浸透度合いのKPIをBZが考案しそれをレポートする機能をSSPに盛り込む――といったことを進めていきたいと願っています。

 いいですね!ぜひやっていきましょう。

IT部門がデータガバナンス推進の担い手になるには

櫻井 ブレインパッドの内部的な結束が高まったところで(笑)、私からは最後に対外的なメッセージを発信して、本日の対談を締めくくりたいと思います。

データガバナンスの策定・推進は本来トップダウン型アプローチのものですが、スモールスタートによるボトムアップ型のアプローチのニーズも高いという現実があります。その際にシステム側、提供する側(IT部門等)の目線だけではうまくいきません。ビジネスサイドと手を取り合って、何を目的としてデータガバナンスを効かせるかを考えていく必要があります。システムだけでは完結しないのは言うまでもなく、社内啓蒙や文化醸成といった人的/組織的な取り組みが重要になってきます。 

正直なところ一般的なIT部門では、上記のようなことを得意としていません。ですから、私たちブレインパッドは、IT部門に対してどうすれば全社にガバナンスを広げていけるかを伝え、実際に一丸となって取り組んでいかなければなりません。私たちの言葉で言えば「IT部門に伴走する」ことを、もっともっとしっかりやっていこうということです。

阿南 IT部門が中心となってガバナンスを推進していく場合、どのようなケースでうまくいっているのでしょうか。

櫻井 IT部門は攻めと守りで言えば、守りの部門であることが多いため、攻めの部門の反応をどうしても気にしてしまいます。そのためIT部門だけでは決めきれないことが多いわけです。しかし、IT部門が腹を括ってイニシアチブを取ることを決意すると、ガバナンスの推進がうまく動き始めることが多いのです。とはいえ独断専行するとやはり失敗しますから、事業部門との会話が重要なのは言うまでもありません。その会話にブレインパッドも参加することで、IT部門を支援することができると考えておりますし、部門の役割を変えたり、推進組織を新設することも提言していくことで、浸透させていくことができるのではないでしょうか。

阿南 IT部門をどのように支援していくかということについて改めて腹落ちしました。またボトムアップ型のアプローチでも、やはりデータを活用する目的や戦略が大切であること、またスモールスタートとはいえ、その後の拡張も視野に入れてガバナンスを考えないといけないことも再認識できました。

櫻井 私自身も、改めての気づきがあったり、実り多い対談だったと思います。ありがとうございました。

【データガバナンスに関連する記事】
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【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第6回 データ活用のあり方と攻めのデータガバナンス(前編)


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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